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Story Cubesで物語を作る

Story Cubes [actions]

以前、僕のnoteで取り上げたStory Cubesを使って物語を作る自己練習のようなものをしてみようと思います。

Story Cubesは、9個のダイスに書かれた異なるイメージを繋いで物語を紡ぐという知育玩具です。
そのダイスに書かれたイメージはどう受け止めてもよく、連想して物語を形にしていくことが目的となっています。

今回はStory Cubesの[actions]を使います。
主にキャラクターが行動的な場面がダイスにかかれているものです。

今回、適当に振ったときに出たダイスの目が以下のとおりです。

画像1


これをわかりやすくするために、振ったダイスを並べて番号を振ってみました。

画像2

1は「フラスコのようなものが倒れていく」
2は「高いところのものを取る」
3は「手をあげてなにかを提案している」
4は「踊っている」
5は「コインを数えている」
6は「バットでボールを打った」
7は「重量挙げ」
8は「壁のボタンを押してみた」
9は「指をケガしてい泣いている」

といった9種類のイメージが揃いました。

イメージから連想していく

上で出したダイスのイメージを繋いで物語を連想していきます。

僕の場合はこうした思考作業をするときにはマインドマップを用います。
そこで今回出したマインドマップが以下のとおりです。

ストーリーキューブ2020-09-09

小さくて見にくいかもしれませんが、説明をしていきます。

まず1~9のダイスのブランチを伸ばしていきます。
そしてそれぞれのダイスの意味から連想されることをメモしていきますが、
ただ番号の順番に考えても連想の妨げになるので直感的にわかりやすいイメージから発想を広げるようにしていきます。

今回の中では、
6「バットでボールを打つ」
9「指をケガして泣く」
のふたつが最もわかりやすいイメージでした。

この中で、9「指をケガして泣く」は物語のオチとして使えそうな気がしたのでこれを終点として物語を考えるようにします。

結末はわかりやすいものが最適です。
オチとなる部分で「そうかな?」となってしまうとそこまでの流れがよくても理不尽な感情が芽生えてきてしまいます。
見ている側に作り手が用意したドラマを経てどんな気持ちになってもらいたいのかが物語作りの肝だと思います。

結末は9「指をケガして泣く」ですから、やっちゃったな~とか、だから言わないこっちゃない的な主人公の行動に問題があったものと連想しました。

わかりやすいイメージとして6「バットでボールを打つ」がありますから、これを先頭に持ってきて主人公は「野球選手である」と設定します。

どんな野球選手なのか。

それを演出するために7「重量挙げ」などを使って、トレーニングをして強くなりたいと思っている――と設定します。6「バットでボールを打つ」もそんなスカッとしたバッティングしていないイメージなので、努力はしているけど才能が開花していない感じの選手なのだと設定を更新します。

主人公は野球選手。だがイマイチな感じ。だから強くなりたいと思っている。
そしてお金を儲けて楽しく踊って暮らしていきたい!
5「コインを数える」
4「踊る」
から連想して、主人公の目的としました。

主人公というものには「動機」がありそれから生まれる「目的」が存在してはじめて物語の主人公となります。

今回の主人公は、わかりやすい感じにできました。

ではここから彼が「目的」を叶えるための「手段」を用意します。

残るイメージは4つ。

1「フラスコのようなものが倒れていく」
2「高いところのものを取る」
3「手をあげてなにかを提案している」
8「壁のボタンを押してみた」

です。

この中で3「手をあげてなにかを提案している」は物語のスタートとかに使えないかなとここで考えが浮かびました。
野球選手でイマイチな彼はレギュラー争いの当落の瀬戸際にいた。
なので自分からコーチなどにアピールして「次は必ずホームラン打てるようになります!」とか言ったみたいなことで物語が動き出すのもいいなと。

では残る3つのダイスのイメージは、その目的を叶える過程の条件として設定しここに面白さを出せないだろうかと考えます。

1「フラスコのようなものが倒れていく」は安易ですがフラスコですから薬が入っていると仮定し、そこに彼の目的を叶えさせる「超野球うまくなるじゃん薬」が入っているとしました。けれどフラスコは倒れそうです。
なので彼はフラスコを割ってしまう。
割った結果、指をケガしてしまってバットを握れなくなる。
9「指をケガする」が繋がります。9は結末なのでこれで最後のオチに繋がる流れは見えました。

8「壁のボタンを押してみた」は、アクションとしてなにかが始まる切っ掛けでもありますから、これを押せば秘密の小部屋の扉が開く――と考えます。

2「高いところのものを取る」はこのフラスコが高いところにあると設定して、それを取ろうとして、1「フラスコのようなものが倒れていく」そして割れて9「指をケガする」に繋がるという連想が作れました。

ここまで来てようやく全てのダイスの役割が決まりました。

順番に並べる

1は「フラスコのようなものが倒れていく」
2は「高いところのものを取る」
3は「手をあげてなにかを提案している」
4は「踊っている」
5は「コインを数えている」
6は「バットでボールを打った」
7は「重量挙げ」
8は「壁のボタンを押してみた」
9は「指をケガしてい泣いている」

これを物語の順番に並べ替えます。

3は「手をあげてなにかを提案している」……導入部
6は「バットでボールを打った」……現状
7は「重量挙げ」……現状
5は「コインを数えている」……動機と目的
4は「踊っている」……動機と目的
8は「壁のボタンを押してみた」……手段
2は「高いところのものを取る」……手段
1は「フラスコのようなものが倒れていく」……手段
9は「指をケガしてい泣いている」……オチ

という順番で物語を作ることにします。

○野球場
  ガキッ!
  鈍い音がグラウンドに響いて。
  ボテボテの内野ゴロが転がっていく。
  悔しそうに一塁へと全力疾走する主人公。
  しかし結果は見えている。
累進「アウト! ゲームセット!」
  一塁の前で天を仰ぐ主人公。
  主人公に降り注ぐ野次。「やめちまえ!」「引退しろ!」とか。

○監督室
  ノックの音が響いて。
監督「どうぞ」
主人公「失礼します」
監督「……主人公か。ちょうどよかった。君に伝えたいことがあったんだ。
 今の君の成績では次の結果次第では二軍に行ってもらうことになる」
主人公「わかっています。ですから次の試合で必ず結果を出しますので、
 僕を使ってください!」

○帰り道
  
暗い夜道を歩いている主人公。
主人公(M)「プロになったばかりの頃は、いつかは金持ちになって、
 踊って楽しく暮らせる毎日が待ってる――なんて思ったもんだけどな。
 きついトレーニングをしてきても、ケガしたり結果がでなかったり……。
 やっぱ俺ってツキがないのかなぁ」
  主人公、ポケットの中から一枚のあやしげなメモを取り出して。
  そこにはこう書かれている。
  ――ツキが来る薬の在処――
主人公(M)「眉唾もんだけどこんなものにすら頼りたくなるとはな」
  足を止める主人公。
  怪しげな雑居ビルの前。
主人公「ここか」
  主人公が雑居ビルの呼び鈴を押す。

○雑居ビルの一室
  ところせましと物が置かれた倉庫のような場所。
  そこにひとり怪しげな男がいて。
男「……なんの用だい?」
主人公「ツキがほしい」
男「……だったらその棚の上だよ」
主人公「棚?」
  主人公が棚のひとつを見上げると怪しげなフラスコがあった。
主人公「あれか?」
  主人公が背を伸ばし、フラスコを手に取ろうとする。
  だがもう少しのところで届かない。
主人公「もう……少しで俺にもツキが手にはいる……!」
  ぐっと手をのばす主人公。
  しかしフラスコを掴みそこねて、フラスコが落ちそうになる。
主人公「俺のツキ!」
  フラスコを受け止めた主人公。
  だがその瞬間、急に叫ぶ。
主人公「痛ぇー!!」

○グラウンド
  ベンチに座っている主人公。
  指に包帯を巻いていて。
監督「お前もほんとにツキのないやつだな。大事な試合を前にツキユビして
 出場もできないとは……。二軍から出直してこい」
主人公「……はぁ。ツキは来たけどこんなんじゃないんだよなぁ」
 ため息をつく主人公で――。

――おわり

こんな感じになりました。

途中で才能が開花する薬というものを手にいれようとして、
そのフラスコが割れてケガをすると考えたのですが、
物語の流れの中で言葉遊びが面白くないので
ツキを手にいれられる>ツキユビで終わり――といった流れを思いついたので修正しました。

また物語の導入で、監督に宣言するところから入るよりも野球をしている主人公を見せたほうがわかりやすいので順番を入れ替えました。

そこまで面白い物語というわけではありませんが、
与えられた条件を使って物語の中で主人公の動機と目的、オチまでを繋いで作るトレーニングになるのでStory Cubesのようなもので物語を紡ぐことをしています。

実はこのダイスとダイスの間をつなぐロジックのようなものを無理なく展開できるようになることが物語を作る上で大切なことだと僕は思っています。
(時には強引に勢いで押し流すことも必要ですけれど)

時間にして1時間もかからないのでちょっとした気分転換にもなります。

ひとりでやるよりも、チームで物語を考えるようにすると自分以外のアイデアも出てくるのでまた違った物語になると思います。

そのうちこうした想像力とそこから物語を形にしていくワークショップ的なこともできたら面白いかなと思っています。

今日はちょっとした自己練習の一部をお見せしました。
ではまた次回の余談をお楽しみに――!

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藤咲淳一
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