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【定期購読版】結帯動作制限の評価方法 8選

こんにちは、肩関節機能研究会の郷間です。

今回は結帯動作制限の評価方法についてまとめました。
“まとめた”といってもその評価の数はなんと8種類。

もしかしたらより簡便に2~3種類でも事足りるのかも知れませんし、より専門的に結帯動作を研究されている専門家からすれば8種類でも足りないのかもしれません。

ですが、今回ご紹介する8種類結帯動作制限に対する評価を行ったうえで、私が自作した結帯動作制限フローチャートを用いていただければほとんどの結帯動作制限に対応可能と考えております。

結帯動作の評価と治療が苦手!』という方はぜひ本記事を読んで、結帯動作に対する苦手意識を払しょくしたいただけると幸いです。



肩関節疾患と結帯動作

結帯動作は肩関節周囲炎、凍結肩、変形性肩関節症、腱板断裂性関節症、腱板断裂など様々な疾患でみられる制限の一つです。
結帯動作の制限は、肩関節の可動域制限や疼痛は、仕事やスポーツ、日常生活にも悪影響を及ぼすことが報告されています。
では、そもそもADL(日常生活動作)における結帯動作にはどのようなものがあるのでしょうか?
ADLにおける結帯動作
 ・後ろのポケットから物を取り出す
 ・服を着る
 ・ブラジャーの留め金の付け外し
 ・背中を掻く
 ・背中を洗う 
なかでもブラジャーの留め金の付け外しは母指尖端がTh7~8以上まで到達しないと余裕をもってその動作が行うことができません。
(ごめんなさい、ここは私の憶測です。そのような報告がないのと、私自身にブラジャーの着脱習慣がないため言い切れません申し訳ない)
このように、ADLで無視できない結帯動作は実際どのように評価・介入すればよいのでしょうか?


結帯動作の評価

まず、最も簡便な結帯可動域の評価方法は
『ランドマーク法』というものです。
こちらは非常にシンプルで、母指の尖端が脊椎棘突起のどの高さまで達するのかをみることで定量評価を行うことができます。
非常に簡便な評価ですのでおすすめです。

私も臨床で最も重宝している評価方法です。


続いてC7-Thumb Distanceです。
C7-Thumb Distanceは文字通り、C7(第7頸椎棘突起)と母指の尖端(Thumb)の距離(Distance)をメジャーで計測したものです。
私も研究で結帯可動域を評価する際は、こちらのC7-Thumb Distanceを重宝しています。
こちらのスライドは先日の臨床スポーツ医学会各術大会でも使用したスライドです。


結帯動作制限の評価8選

ということで、基本的な結帯動作の評価方法をご紹介したところで、ここからは結帯動作“制限”の評価を8つご紹介したいと思います。


結帯動作評価➀

まずはGH(肩甲上腕関節)による制限か、ST(肩甲胸郭関節)による制限かを評価していきたいと思います。


まず皆さんに知っていただきたいのは、
肩甲上腕関節の動きの基本は“肩伸展内旋”であることです。
なかでも内旋は非常に重要です。
では、結帯動作を4つの段階に分けてみたいと思います。
下垂位➔(母指尖端が)尾骨レベル➔第12胸椎レベル➔第7胸椎レベル
このなかでも、下垂位から尾骨レベルまでにどの程度内旋動作が行われるのかというと、およそ41.4度です。
そして、尾骨レベルから第12胸椎棘突起レベルまでの間には僅か6.6度の内旋運動しか生じません。
つまり40度以上必要な内旋動作のほとんどが尾骨レベルまでに完結しているということです。
ココが非常に重要で、私はこちらの第1の評価のGHとSTのどちらが問題点なのかを評価する時にまず最初に行うのが次のスライドの評価方法になります。


上記スライドの下垂位、尾骨レベルの写真にあるように、肩甲骨固定下で母指尖端が尾骨に達さないならGHの問題を疑います。
一方、肩甲骨固定下で問題なく母指尖端が尾骨に達するのであれば、GHの問題だけでなく、むしろSTの問題を疑います。
このように肩甲骨を固定することによって、
GHの問題か、STの問題かをみることによって、より詳細な介入に移行していくことが可能です。

結帯動作評価②

2つ目の評価は結帯動作時の下方回旋可動域とShrug signの有無をみます。
つまり、第1の評価でSTに問題があった場合はこちらの評価に移行してより詳細な評価をすることをおすすめします。


前提として、STは結帯動作において前傾・下方回旋が生じます。
(もちろん、一時的に上方回旋や挙上も生じます)


この、前傾、下方回旋の中でも肩甲骨の下方回旋の程度をみる方法として、Spino Trunk Angle:STA(脊椎-肩甲棘角度)という評価があります。
結帯動作時にSTAの角度を評価して下方回旋が小さい場合はSTの運動が小さいことがわかります。

また、結帯動作時に肩をすくめる徴候(Shoulder Shrug Sign)が顕著な場合は僧帽筋上部の過活動を予測することができます。


基本的に、結帯動作時の第12胸椎レベル以降で僧帽筋上部が過活動する必要はなく、僧帽筋中部や下部、前鋸筋の筋活動増加が理想的な筋活動と言えます。

結帯動作評価③

3つ目の評価は鳥口下インピンジメントテストです。


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