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若草山から春日原始林の石仏へ
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中学高校の修学旅行で奈良をおとずれた際、なにより印象にのこっているのが、鹿の糞と丸坊主の若草山だった。以来何度もながめている若草山にのぼってみようと思いたった。
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猛暑の9月上旬、近鉄奈良駅から春日大社近くの登山口へ。林道のような道をたどり駅から1時間20分ほどで若草山の頂上(342メートル)にでた。麓からみあげるとひとつの山だが、実は一重目、二重目、三重目(山頂)と三つの笠を重ねたようになっており、昔は「三笠山」ともよばれた。
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当然のように奈良盆地は一望できる。左手には、畝傍などの大和三山が瀬戸内の小島のようにうかぶ。正面には、金剛から葛城、二上山、生駒とつづく奈良盆地の西側の「壁」がたちあがっている。
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頂上の一番高い場所に古墳がある。鴬塚古墳という全長103メートルの前方後円墳で4世紀末から5世紀初頭ごろに築造された。清少納言が「枕草子」で、「みささぎは うぐひすのみささぎ。かしはぎのみささぎ。あめのみささぎ」としるす「うぐいすのみささぎ」がここだといわれている。
若草山から裏側の林道をたどり、春日山原始林にわけいる。842年以来、春日大社の神域として、狩猟伐採が禁じられてできた。世界遺産「古都奈良の文化財」の構成要素の一つとされている。
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1時間ほどたどると、「花山地蔵の背」。風情のある石仏だ。
鶯の滝を見学したあと「春日山石窟仏」へ。
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東大寺大仏殿をつくったとき石材を切りだした左右2つの洞窟に、計18体の磨崖仏が彫られている。別名「穴仏」。平安末期の1155年ごろの作らしい。飛鳥時代の二上山の石窟ほど古くはないが、みごたえがある。
この近辺は古代の風葬の地だったという。
滝坂道は、奈良と柳生をつなぐ街道で柳生街道とよばれていた。江戸中期に奈良奉行がつくらせたという石畳の道は、昭和初期まで、物資運搬の道としてつかわれていた。
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「首切り地蔵」は荒木又右衛門が試し切りをしたとつたえられ、首には刃物で切ったような跡がある。
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ちょっとくだった「朝日観音」は、木の下の巨岩に弥勒仏と地蔵2体がほられている。
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さらに、夕日観音や寝仏といった磨崖仏をへて奈良の街にもどった。