見出し画像

乳酸菌の抗炎症・抗肥満効果を検証 脂肪面積が減少して炎症の数値も改善

Lactobacillus plantarum OLL2712(以下、「OLL2712」)は、抗炎症作用を持つ乳酸菌です。肥満の人を対象とする臨床試験では、12週間のOLL2712の摂取によって腹部脂肪面積、空腹時血糖値、炎症に関わるサイトカインの数値が大幅に減少することが確認されました。体重の増加やBMIの上昇を抑制するという結果も得られています。

100人を対象とした試験で効果を検証

学術顧問の望月です。前回に続いて、今回もOLL2712の研究情報をご紹介します。OLL2712は、発芽そば発酵エキスに含まれているLactobacillus plantarumの仲間です。2021年、『Current Developments in Nutrition』という学術誌に「Ingesting Yogurt Containing Lactobacillus plantarum OLL2712 Reduces Abdominal Fat Accumulation and Chronic Inflammation in Overweight Adults in a Randomized Placebo-Controlled Trial」と題する論文が掲載されました。

前回の記事でご紹介したとおり、OLL2712には慢性炎症とインスリン抵抗性を改善させる働きがあることが動物実験とヒト試験で報告されています。今回ピックアップした論文では、肥満に対するOLL2712の効果が報告されています。

慢性炎症とインスリン抵抗性は、肥満とも関わりのある症状です。過去のいくつかの臨床試験では、乳酸菌が肥満の人の体脂肪の蓄積を抑制するという結果が報告されています。人間を対象とする今回の試験は、慢性炎症とインスリン抵抗性に対する効果が確認されたOLL2712が体脂肪の蓄積や糖・脂質代謝にどのような影響を与えるか検証することを目的として実施されました。

試験には、医師によって肥満傾向と判断された20〜64歳の100人が参加。熱処理したOLL2712入りヨーグルト摂取群50人とプラセボヨーグルト摂取群50人の2群に分け、それぞれの食品を12週間取ってもらいました。評価項目は、体脂肪をはじめ、糖代謝や脂質代謝、慢性炎症に関わる数値です。各項目は、ベースライン、4週間後、8週間後、12週間後に測定されています。

試験期間を終えて、分析対象となったのはOLL2712群(男性30人、女性16人)、プラセボ群(男性33人、女性13人)ともに46人でした。ポイントのみとなりますが、早速、結果をご紹介していきましょう。プラセボ群の腹部総脂肪面積と皮下脂肪面積は12週間後に有意に増えていたのに対し、OLL2712群においてこれらの増加は認められませんでした。体重とBMIについても同様の結果となっています。

著者らが主要アウトカムと位置づけていた12 週間後の腹部総脂肪面積は、プラセボ群と比べてOLL2712群は有意に少ないという結果が得られています。具体的には、2群には8.5㎠の差が確認されています。腹部皮下脂肪面積についてもOLL2712群が少ないという結果が出ていますが、有意差はありませんでした。

炎症の指標であるCRPの上昇もなし

心血管疾患の危険因子となる糖代謝や脂質代謝には、どのような変化があったのでしょうか。プラセボ群の空腹時血糖値は、12週間後に有意に高くなっていました。一方で、OLL2712群における空腹時血糖値の上昇は認められませんでした。両群を比較したところ、OLL2712群の空腹時血糖値はプラセボ群よりも有意に低くなっています。

心拍数はプラセボ群で12週間後に有意な増加が確認されたのに対し、OLL2712群において変化は見られませんでした。また、OLL2712群のHDLコレステロールは12 週間で有意に増加していましたが、プラセボ群に変化はありませんでした。しかし、これらの項目についてはグループ間の有意差は認められていません。

炎症関連の項目では、いくつかのサイトカインが測定されています。IL-6を見ると、OLL2712群では4週間後と12週間後に有意な減少が見られました。プラセボ群における減少は確認されず、両群の数値には有意差もついています。一方、IL-8はプラセボ群において12週後に有意な増加が確認されたのに対し、OLL2712群での増加はありませんでした。さらに、炎症の指標であるCRPはプラセボ群でのみ有意に増加していました。OLL2712群では、アディポネクチンの増加も確認されています。

これらの結果は、抗炎症作用のあるOLL2712が肥満の改善に有効である可能性を示唆しています。しかし試験では、両群の内臓脂肪面積に有意差は認められませんでした。ベースラインがより高い肥満に該当する人を試験の対象としていたら、明確な違いが出ていたかもしれません。また、プラセボとして使用されたヨーグルトに抗肥満作用がある可能性も排除できていません。OLL2712の効果やメカニズムなど、今後のさらなる研究に注目していきたいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!