【クレーム対応】立ち位置に応じた対応
はじめに
世の中には様々なクレームがあります。しかし、クレームを言われる側については、大きく分けると2種類しかありません。自分が引き起こしたクレームなのか、ほかの誰かが起こしたクレームかの2つです。この違いにより、そのあとの行動と自分の心情をどの立ち位置で対応するかが分かれます。細かい手法ではなく、まずは大筋の自分がとるべきスタンスを理解できるようにしましょう。
自分が引き起こしたクレームの場合
納期に遅れてしまったとか、相手を怒らせたとか、自分自身が直接引き起こしてしまったクレームの対処方法についてです。すなわち、自分がクレームの当事者であることをしっかり認識してください。この場合、ことの大きさによって対応は変わってきますが、初期の段階では火事で言えば、まだ「ボヤ騒ぎ」。炎が大きくならないうちの初期消火が重要になります。
まず最初にすることかつ最も効果的なことは『謝罪する』こと。自分のミスを認め、心から謝ります。これが成功すれば初期消火は完了です。細かくは謝り方についても工夫が必要ですが、自身が本当に反省し謝罪の気持ちがある謝罪であれば、そのふさわしい態度になるので難しくはないでしょう。
あとはくすぶっている火種を消す作業に入ります。つまり、その後の対応です。相手の気持ちを害してしまう等、具体的な損害が生じていない場合(厳密には「精神的慰謝料」が発生しますが、実際のクレームでそこまで出てくるのは訴訟レベルでしょう)には、基本はそのあとは特に何もする必要はありません。ただ、同じ現場にしばらく一緒にいなくてはならない状況や、また間もなく会う必要が出てくる場合もあるので、謝罪の気持ちはしばらく持ち続けて態度に表していく方がよいでしょう。クレーム当日の別れ際には、『本日は誠に申し訳ありませんでした』、次会った時には『先日は大変失礼いたしました』等をこちらからすぐ言うことができれば、相手は逆にあなたにしっかりした人だと信頼を上げることにもなります。
相手に具体的な損失(相手の服を汚した、商品が届かなかったなど)が発生している場合には、謝罪の後に『解決方法を提案』する必要があります。クリーニング代の弁償や、代替品の送付等です。自分の裁量で決められない場合は、決裁権者に承認をとる必要がありますが、それを待ってから相手に伝えるのでは遅すぎます。承認を得られていないことも含め、相手にその状況を説明しましょう。クレームを言う側の立場は、放っておかれるのが一番嫌がります。承認を得られたら、その旨も相手に伝えて、その後の行動予定を確認し了承を得ます。
自分が引き起こしたクレームの場合は、前提として「自分が当事者」との認識を強く持って、相手に心からの謝罪の気持ちを持った行動をとることが重要となります。
ほかの誰かが起こしたクレーム
あなたがクレーム担当者であったり、上司であったりして、ほかの誰かのクレームを対応しなければならない場合があります。この時は、自分が引き起こした場合と異なり、『相手と会社の仲介者』という立ち位置に徹することです。間違っても当事者として対応してはいけません。そうすると自分よりさらに上役にでてきてもらうことになりかねません。
なぜなら、ほかの誰かが起こしたクレームを対応している時点で、当事者による「初期消火」は失敗しているのです。相手は当事者の対応に不満を感じたから、あなたが対応しているということを自覚する必要があります。そのため、当事者をかばうとか、会社の損害を防ぐとか、偏ったスタンスで対応すると、さらにクレームの炎は拡大します。あなたは、あくまで相手と会社の間に立つスタンスで介入する必要があります。
その基本スタンスを守りつつ、この状況での解決の糸口は、あなたが相手の心情を理解していることを相手に伝えることです。相手の心境は、ただでさえクレームでイラついているところ、当事者の対応が不満足で怒りが最大限になっています。逆に言えば、この怒りをどう納めたらいいのかと助けを求めてるとも言えます。あなたはそこに現れた救世主と言えます。
相手の心情を理解していると分かってもらうために、クレーム当事者の場合と同じく『謝罪』から始める必要があります。何に対する謝罪かと言えば、ミスに対する謝罪ではなく、こんな不愉快な気分にさせてしまったことへの謝罪なのです。ここで勘違いしている人が結構多いのです。上役や責任者がこの場面に出てきて謝罪するのは会社の非を認めたことになると思って、明確な謝罪を躊躇してしまう人もいます。だけど、ここは日本でまだまだ人情が残るお国柄。まして、怒りが最高潮に達している相手に対して、まずは聞く耳を持ってもらうために、心からの『謝罪』は必須です。
この謝罪が相手の怒りを少しでも溶かすことができれば、相手も『やっと話が分かる人が現れた』と思ってくれます。この時点で80%くらいの仕事は終わったようなものです。
あとは『仲介者』としての役割として、相手の事情を察しつつ、一方で会社ができる範囲内のことを相手にも理解してもらい(←このためにも最初の謝罪で相手に聞く耳を持ってもらう態勢を作るのが重要)、落としどころを決めていきます。謝罪以降は仕事の中身はあなたがする必要もない作業です。何より重要なのは、当事者以外の誰か(当事者より上役、もしくは責任者)が謝罪をして相手の怒りを鎮めるのが最大の目的なのです。
まとめ
このようにクレーム対応でも、当事者か否かでとるべきスタンスは大きく違ってきます。クレームにはルールがないようで実は暗黙のルールがあります。今回は自分の立ち位置によって役割分担が異なることをしっかり意識して、その役割に合わせた対応、言葉選び、態度をとるようにしましょう。