密封
伊勢丹の正面で待ち合わせ、の予定が気づいたら迷い込んでしまったらしい。
新宿のど真ん中、そこは伊勢丹の裏の通りのようだ。
あらゆるものが従業員通用口から早足で出たり入ったり。スーツ、厨房服、自転車、奇抜な洋服、作業着、台車、警護服、雨合羽、軽トラ、ダンボールの混在。奇妙にもその場は無臭だった。
立ち止まると、時折どこからごま油のかおりが漂う。狭い道路は古びたビルに挟まれて実際よりせまく感じるよう。私、密封されてしまった。万年曇りみたいな灰色の場所。
たった数センチ先をオープンタイプのベンツがゆっくりと通る。
白いブラウスを召した上品な婦人が慎重に運転する。
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