芍薬の、

ボトっ

薄紅色の芍薬の花弁が、
ごっそりと落ちてしまった。

なんて奇妙な落ち方。

薔薇のようにはらり、はらりと散っていくのとはちがう。

ボトっ。
まさにこの音だった。

午後4時、
陽のあたるベッドの上で読書してた私はビクっとした。

散らばった厚さ0.1mmくらいのか弱い花びらは折り重なって花嫁のベッドみたい。

重なり合った花びらの真ん中に、
幾層にもなる花弁に包まれた何かが転がっていた。

慎重に中を開くと無数の雄しべだった。
軽やかな、真っ黄色の花粉を身につけていた。

花粉のところまで開かずに落ちてしまったのね。

なんだかすごく切なかった。

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