狭き門より入れ~かすみ嬢の居場所(40)
いっぱいいっぱい頑張った先に、その頑張りが折れた時に、君は病気だからって、望んでもいない「治療」を受けさせられて、それまでの頑張りを全否定されるのって、虚しい。
せめて、頑張りだけでも認めて、間違った方向と否定しないで。
私の生きてきた証のようなものなのに。
じつはこの呟きをしてから、人文の授業で「人間は無駄な装飾等のないピュアな身体を目指すようになったのだ」という話を聞いて、納得。
痩せ姫をそういうピュアな身体と捉えると、痩せ姫を目指す動機もごく自然なものだったのかもしれないなって。
「そんな痩せを目指すなんて、そんなに死にたいの」
って最近聞かれるけど、死にたいわけじゃなくって。無意識下なら分からないけど、少なくとも私の直接の動機は綺麗になりたいこと、余分なものを削ぎたいこと。
むしろ痩せ姫を目標に定めてから、私は生きることに興味があるよ。
予習してきたつもりだったのに、誤解していたこと。先生の発言の意図を理解しきれなかったこと。
授業中にも関わらず涙が溢れた。
大学生にもなって、なぁ。恥ずかしい。悔しい。どうしたらよかったのかなって頭をぐるぐるまわってる。
もともと、身体のこと、通わなきゃいけないこと、課題が次々に出ていること、試験が迫っていることで頭がぐるぐるしていたので、糸が切れてしまったみたい。
なんでこんなに、きちんとこなせないんだろう。
私は完璧を目指しているわけじゃないのに、先生に見放されたくないだけなのに。
12月になった。
冬は寒くて、毎週保健室もどきに通っては叱られ、課題は出しても出しても積もり、試験では成績を求められ、なんで生きてるのかなってふっと思うけども、今は耐えて耐えて、その先に痩せ姫になる未来があれば、それで救われる気がします。
正直な話、ね。
「これ以上痩せてはだめ、もう少しは増やさないと」なんて言われるたびに、むくむくっと反抗心が頭をもたげて、痩せたい痩せたいって強く想うのです。「これ以上落としてはいけない」って言われ続けてるから、それが条件だから、耐えてるけど。
いつまで保つかな。
そんなとき、ソーニャさんがリプしてくれた。
「わかる!!!わかりすぎる!!! わたしは無視してゆるゆる軽くなってくよ~ ふふふ」
「ですよね?…って、本物の痩せ姫様と同等なのは畏れ多いですかね…。私は、学校から条件付きで認めてもらう勉強もあったりするので、おいそれと減らしたら留年するのです…。ゆるゆる軽くなるソーニャさんを眺めては励みにしますね…!」
「そっかぁ、そういう事情があるとは…苦しいねぇ。うん、こんなゆるゆる~なわたしで励みになるなら(笑)」
ソーニャさんはあと1キロでBMIがひとケタになるらしい。私もゆるゆる頑張っていけば、いつかはひとケタまでいけるかしら。
「狭き門」を久しぶりに読んだ。
読めば読むほど深くなる、コンソメのような本だと何処かで書いてあったけど、本当にそう。すごく好きな本。無宗教だけど、狭き門より入れって聖書の言葉は好き。
狭き門を通る人間となりたい。
たぶんそれは、痩せ姫と通ずるものがある気がします。地上での欲を捨て、ただ神の道へと邁進するところが。その先に救いがあるところが。周りの人にどう思われようと、しっかり信念を貫くあたりも。
私は頑張りきれるのかしらって思うたびに、狭き門より入れって言い聞かせてる。
もっともっと頑張れる。
ここで倒れちゃいけない。