シェルターに駆け込むみたいに~かすみ嬢の居場所(9)


 摂食のことをたぶん知っている友人たちと、お泊まり会をしました。

 私のことを仲間外れにしないようにって気を遣ってくれたんだと思います。「大丈夫?」って聞かれて、迷った末に了承しました。きちんと会いたかったから、話したかったから。

 でもね、迷ったのはやっぱり、泊まりがけはきついな…と。

 じつは進路が決まってから、久方ぶりの親戚まわりをしたんです。親戚のお宅にお邪魔するときは、粗相のないようにないように…って気を遣ってへとへとになるんだけど、お世辞でも自慢の孫だとか姪だとか言っていただけると、とても嬉しくて。ほら、私って自慢の娘には逆立ちしてもなれやしないでしょ…。
 ただ、我儘を言うと、泊まりがけは食事がきつい。「かすみちゃん、これ、食べ」って、回してくださるけど、その前にもう、葛藤を重ねてようやっとすでによそってあるご飯に箸を伸ばしているの。なのに、それ以上のものを食べるとなると、泣きたいしパニックになりそうだし。とは言え、残すのはもちろん何度も重ねて断るのも失礼だし。
 当然、体重だって増えてしまう。頑張って減らした努力もすぐに消えてしまう。でも、これくらい増えるのは仕方ないんだよね。親戚関係は可能な限り円満にしなきゃいけなくって、出来る限りのことはしたの。また減らせばいい。一度に増えた体重ならすぐに減らせる。そう思い込むしかないの。

 そんな経験をしたばかりだから、迷ってしまった。

 そして、友達には夕飯をファミレスにするかコンビニにするか、こっそり聞かれました。どちらも自分で食べるものを選べるという点で、これまた気を遣ってもらったのかなと思います。有難い話だけど、食べる様子を真正面から見られたくなかったから、コンビニで各自選ぶほうを選択しました。

 だけど、コンビニに入ったとき、愕然としました。最近、あまり寄ってなかったからかもしれない。ドアを開けてすぐ、油の匂いが鼻につきました。率直に言って気持ち悪かった。匂いに、もうどうしたらいいか分からなくなって、パニックになった。油の匂いにパニクる自分にも驚いて、慌ててた。
 その直後、笑顔を作って、周りの友人にならっておにぎり1個引っ掴んで、こんなときでもカロリー確認してる自分。お会計して、シェルターに駆け込むみたいにドアを開けて、外に出ました。その後しばらく、パニクった状態を引きずって自己嫌悪してました。お泊まりを楽しむどころではなかったな。

 今もじつはまだ引きずっていて、胸がばくばくします。いつからこんなのになっちゃったんだろう。何からいけなかったんだろう。友達と何を楽しめることもできないじゃないか。こんな私にまだ付き合ってくれてる人に、こんなに迷惑かけて。

 自慢の娘だけじゃなくって、いい友達にもなれないんだね、私。


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