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2084年

7
小説。 舞台は60年後の日本。
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記事一覧

2084年(1)

2084年、東京。 人類の痩せ願望はとどまるところを知らず、日本はその先頭をひた走っている。 …

エフ=宝泉薫
10か月前
11

2084年(2)ツイッギーを超えた女

このあたりが特殊な一画と化したのには、ひとりの女性の存在も大きかった。 中林美緒。 2036年…

エフ=宝泉薫
10か月前
6

2084年(3)クレイジーSを着るために①

「スキニータウン」には数々のブランドショップがある。 どこも小さなサイズ中心だが、なかで…

エフ=宝泉薫
7か月前
6

2084年(4)クレイジーSを着るために②

ソファーに座りながら、少女は自分が呼ばれるのを待った。 すると、9時57分が過ぎたころ、玄…

エフ=宝泉薫
6か月前
13

2084年(5)クレイジーSを着るために③

「あのー、この組み合わせに決めました。 どのお洋服も素敵で、いろいろ目移りしちゃいました…

エフ=宝泉薫
2か月前
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2084年(6)クレイジーSを着るために④

「先生、11時枠のお客様、到着が40分くらい遅れるそうです。お電話によると、電車が止まってし…

エフ=宝泉薫
3週間前
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2084年(7)クレイジーSを着るために⑤

一方、女主人もまた、自分の発した言葉に驚いていた。 自分語りはしないようにしているし、実際、ほとんどしたことがない。 過去を語り出したらキリがなく、また、明るい内容でもなく、ましてや相手は自分の娘でもおかしくないような高校生だ。 ただ、あんな言葉を発してしまった以上、何も語らないのは不自然だし、不誠実なことでもある。 じつは女主人もかつて、細いことに憧れ、痩せることを極めようとする少女だった。 が、当時は今よりも痩せすぎがよしとされかったため、問答無用に病気と見なされ、病