「あした、またね!」
旅支度をしている娘がおりました。 何日に旅立つのか、友も誰もわかりません。本人もわからないのです。 只、「神様のみぞ知る」でした。 娘がまだ元気な頃、友とふたりで旅行に出かけました。 お正月明けだったせいか列車はガラガラで、二人だけの列車に「銀河鉄道みたいね!」と娘が言いました。
ある朝、友は夢を見ました。 夜のプラットホームに 今、丁度出発しようとして蒸気をたてている列車が目の前にありました。列車の窓の四角いオレンジ色の明かりの中に、たった一人で座っている女性がいるのを見つけた時、もしや…? アッ、彼女だ!と 気づいて声を上げそうになったとたん、 ガタン!っと 列車が大きく揺れ、動き出したのです。友は追っかけました。でも、ゆっくりながらも だんだん速度を上げていく列車についていけません。列車の中の彼女が友に気づいたのかこちらの方を振りかえりました。とてもおだやかな顔で! それを見た途端、確信しました。旅支度をしていた彼女だということを。 神様に召されて出発したのだということを! でも、「さよなら」は言いたくありません。大きく手を振り、ついて出てきた言葉は「あした、またね!」でした。