100日目の観音経
娘の一周忌を前に静岡にいる息子に電話をした時のこと。
息子は2回目のワクチン接種を一周忌当日の3日前に打つことがわかった。 これは困った! 2回目の接種は大事にしないといけない。 そこで、私は息子に言った。 「ばあちゃん一人で法事を行うから…、帰ってこんでええよ!」
そのとき、いつもあまり聞かないことを聞いていた。 「最近##(嫁)ちゃんの夢を見る?」
(息子の妻すなわち嫁は娘の亡くなる一年前に癌でなくなっている)
すると、意外な返事が返ってきた。 「あ~、2日前やったかなあ。いつも起きたら忘れてるんやけど、久しぶりにはっきり覚えてる夢やったな~」私は前のめりで「どんな夢やった?」「それがな、##がこの家で首を吊ってる夢やったんや」 思わぬ息子の夢の内容に、内心ドキっとして思わず聞き返した。 「え~、首つってるん?」 息子は夢を辿るようにゆっくりと話し始める 「そうや、最初ダラ~ンとしてて死んでるようやったけど、そのうち もがき始めて首の紐をほどきたがっているんで、僕が手伝ってほどいて下におろしたんや。そしたら、##が『あ~、くるしかった!』って、ほっこりした顔をして、そこで目が覚めたんや」 思いもしなかった夢の内容に、私はすぐに言葉が出なかった。
そういえば、気付いたことがある。 娘の初盆の折のこと、棚経をあげてもらうのに雲水様に拙宅してもらう予定がコロナ患者が増えて息子も静岡から帰省できなくなった。そこで、雲水様も電車に乗って京都から来ていただくのも気の毒なので、お寺に電話をして事情を話し「その代わりといっては何ですが、お時間のある時で結構ですのでお墓にお経を挙げていただけないでしょうか?」とお願いし、いつも棚経の時お渡ししている「お墓の管理料」と心ばかりの「お布施」を送ることにした。 すると、拙宅頂く日にお寺から「先程 お経を挙げさせていただきました」と電話が入り、申し訳なさそうに「あの~、お墓の花たてから水が漏れて…」と、知らせてくださった。私は「お花まで入れてくださたんですか?」と驚いて恐縮した。「いえ、ほんのススキだけ…」と、遠慮がちにおっしゃったので「ありがとうございます。すぐに、石材屋さんに連絡いたします。年月が経っているのでねえ」と言ったところでちょっと聞いてみたいことがあったので「私 最近【般若心経】をあげているのですが、朝忙しい時に夕方になるときがあるんですが、やはり朝の方がいいですか?」とおたずねした。すると、「あ~、私たちは朝ですねえ。【般若心経】だけでなく【観音経】も…」と耳にした時お経の本が浮かび「あります、あります。【観音経】は長いですよねえ~」というと「あ、お時間のある時に…」と雲水様は遠慮がちに【観音経】も勧められた。 8月の半ばのことだった。あれ以来、【般若心経】と【観音経】を毎朝挙げはじめてそろそろ100日になろうか? と、言う時に… そんな夢を見るなんて…
私の家の仏壇には真新しい位牌が娘の写真を挟んで左右に1つづつ並べてある。左に娘の位牌 右に##ちゃんの位牌。どうしても話しかける時、やはり身近な娘に話しかけることが多い。その上息子と孫の無事を二人にお願いしている。だからなのか?
亡くなっても まだ苦しみから解放されなかったようで、お経【般若心経】と【観音経】を挙げることで##ちゃんが救われたのだろうか?それなら お経の力ってすごい!と思った。 【般若心経】と【観音経】を読み上げることによって亡くなった人が救われる。これが本当なら、こんなうれしいことはない!
桜井識子さんの本【死んだらどうなる】に亡くなった人の安らぎはお経と花を供えることだと書いてあった。お線香はその香りをいただかれるるのだと。
私は息子に言った。「忙しいやろけど、お茶だけでなくてお花一輪コップでいいからあげたげてね。こちらは花いっぱいにしてるけど、どうしても娘のことばっかりになるから…」と。息子は「わかりました」と神妙に言った。
今までこのような体験をしたことがなかった。こじつけかも知れないけれど昔からお寺でお経を挙げてもらう意味がようやく実感として、わかることになった。
私はつくづく思う「年齢は重ねるもんやなあ。まだまだ知らないことが一杯あって、それを体験できる!」そう思うと、なんだか最近ワクワクしている自分がいるのに気付いた。