幸せって　どんな形？

水辺に座って　ポチャン　ポチャンと足を遊ばせながら

「ねえ、幸せって　どんなこと？」と、ムーミンが聞いて来た

釣り糸を垂れながら　ウキを見つめていたスナフキンが

くわえパイプを持ちかえ　フーっと息を吐く

「そうさなあ、どんなって…！」　

「ぼく、どんな時でも　幸せっていえば幸せなんだけど　スナフキンは一人でしあわせなの？」

「そうさなあ、幸せって　特に感じたことはないけど・・・幸せなんじゃないのかなあ」

また　静かな一時が　水面に流れる

ムーミンは　やさしい草の上に　足を置いて

「ねえ、幸せって　どんな形してるの？」

と、スナフキンの顔を覗いた

「そうさなあ、どんなって…！」

と言った時、ウキが水に引っ込んだ。

スナフキンが　すぐに糸を引きあげた、が

「逃げられた！」

魚を期待していたムーミンは　

「釣りって、案外むつかしいんだね」と　つぶやいた

スナフキンは　パイプをくわえ直し

「がっかりさせたかな？」と　言いながら

釣り針に　餌をつけかえ、

竿を大きく振り投げ　釣り糸を水に沈めると

何事もなかったように

パイプを　一吹き吸い込んだ

そして、また長い沈黙の世界

しばらく　

水面の静寂に　鳥のさえずりが　ひときわ大きく聞こえた

しばらくすると

スナフキンがゆったりした声で　

「幸せって　どこにもない！と思えば　どこにもない

どんな　形をしているのか？　と言えば、それも誰にもわからない

幸せってのは　形なんか、ないんじゃないかなあ…？

ムーミンが　幸せだなあ！と思うところに　

幸せはあるんじゃないか、っと思うよ」

ムーミンは　目をくりくりさせながら

「ふ～ん！」

と言ったが、わかったような　わからないような気分だった

「幸せは　きっと探すんじゃなくて　求めるものでもなくて

与えられるもんでもなくて　感じるもんだと　思うんだけど…」と

スナフキンは付け加えた。そして、考え深い声で

「△は△の幸せがあり、◇は◇の幸せがある

△が◇になりたくても、なれるかい？」

スナフキンはジッと釣り糸を見つめている。

ムーミンが「△が◇になんか　なれないよね！」って、答えると

「そうさなぁ、なれたとしても　どこかおかしい◇になるかも知れない

それは　△にとって　とても窮屈だろう？

形なんて　あってないようなもの、なんじゃないかなあ

それよりか、形にとらわれないで、自分を知ることさ！

自分はどんな時幸せって感じるか？を　知ることさ！

【幸せ】は飛び込んでくるものでもなく、幸せの形にはめ込むことでもない

それを知ったら　努力をする、

努力というのは　積極的にしつづけることだと　思うよ　
　
それなりの満足を見つけりゃあ、それでいいのさ！」