赤い月
夜深き 西の空に
低く傾き悲しげに
月はにぶく光っていた
寝静まった世界に抱え込む
すべての醜い諍いや争いごとに
この世界の悲しみと憎しみを
そらからそっと見つめている
地上のあらゆるものが深い眠りにつく頃
誰にも知られることなく
月は悲しみの色となる
そして流した涙は星となり
宇宙の闇に零(こぼ)れ落ちていゆく
ひっそりと月は泣いていた
この世界の全ての悲しみに
涙を流していた
月は赤い目をして にぶく光り
何も言わず 私をじっと見つめていた
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?