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つゆ子ばあちゃんの ルビー色ジュース

梅雨の晴れ間の買い物は なんだか、とても急ぎます。けれど 雨粒なんか降らなくて、並木の緑がやさしくて、あちらこちらの花たちが 一番きれいな洋服で「ねえ、見てみて!」と言ってるよう。そんなゆるい坂道をのぼったところのお店屋さん。ドッカと赤シソ葉っぱを 積み上げて【今が 旬】とありました。「ほら、そこのお姉さん、これ体にいいんだよ。買ってて!」 え!?お姉さん?うふふ。体にいい?そうだ。赤しそジュースをつくりましょ! つゆ子ばあちゃんは決めました。「赤シソの大きな束とレモンをくださいな」

家に着くと猫のジェジェ、おかえり!と言うように「にゃ~」と一声なきました。つゆ子ばあちゃんは そのままキッチンへまっしぐら。「あ~、そうそう、ハチミツもいるのよね」戸棚を開けてハチミツの大きな瓶を見つけると、ホッと安心にっこり顔。

今日はホントにいい天気。梅雨に入ったなんてウソのよう。つゆ子ばあちゃんは花柄の大きなエプロン身につけて、赤シソ葉っぱの束をほどきます。 窓の外ではスズメさん お話上手をきそってる。蛇口をひねると、冷たい水が飛び跳ねて 花のエプロンぬらします。「お~、元気のいいこと!」つゆ子ばあちゃんは スズメのおしゃべり聞きながら、赤シソ葉っぱを摘んでは大きなボールに入れました。赤い葉っぱは次々と大きなボールに飛び込んで泳いでいるように見えました。それをザルに入れて3回目。山盛りになったシソの葉は しばらく日光浴をするのです。

キッチンに戻ったつゆ子ばあちゃんは 大きな鍋に水を入れ、カチンとガスに火をつけて グラグラお湯を沸かします。けれど、なかなかお湯がわきません。洗っておいたガラス瓶 しっかり拭いて「どれどれ、お湯はどうかしら?」フタをあけると、次々と小さな泡がたってます。「もう少し、お湯が沸くまでまちましょう」つゆ子ばあちゃんはキッチンの窓辺の椅子に腰をかけ「やれやれ、最近どうも腰がヘン!」腰をとんとんたたきます。    遠くの梢でウグイスが 楽しそうに歌います。まだヒンヤリ寒さが残る頃、この小さな雑木林に」やって来て、ホーホケホケと鳴きました。歌い始めたばかりなの?がんばれって応援してたけど、最近とっても上手になったわねえ。窓辺のジェジェは いつものようにウットリさん。雑木林の向こうから元気な子供とボールのはねる音。そうそう、子供の声を聴きたくて、この家に引っ越して来たのを思いだし、もう一度元気になりました。

お鍋の中は もうすっかりグラグラお湯が沸いてます。つゆ子ばあちゃんは大急ぎ、ベランダからシソの葉っぱを取り込んで、お湯の中に入れました。グツグツ煮込むと、赤い葉っぱが緑の葉っぱに変わります。そうなんです。「赤い葉っぱが緑の葉っぱにかわるまで!」そこで、緑の葉っぱを引き上げて、レモン汁を混ぜ合わせ、ルビー色のジュースができました。その色は なんてステキな色なんでしょう。なんだかワクワクしてきます。そこで、たっぷりハチミツの登場です。つゆ子ばあちゃんのおまじない「ハチミツさんよ!ハチミツさん、このルビー色ジュースを とびっきりの元気ジュースにしておくれ!」大きな瓶のハチミツはとろ~り、とろ~りルビー色ジュースに流れ込み、しっかり元気ジュースになりました。なんだか、幸せを注ぎ込む魔法使いになったよう。つゆ子ばあちゃんは 大満足。 そこで、また、一休みすることになりました。

キッチンの窓辺の椅子に もう一度「おっこらしょ!」と座ります。それまで窓辺で長々と昼寝をしてた猫のジェジェ、床にトンと飛び降りて、かわいい声で「にゃ~」となき、つゆ子ばあちゃんの足元に頬づりしていきました。「お~!いい子だねえ」ジェジェの背中をひと撫でし、つゆ子ばあちゃんは言いました。「ルビー色ジュースはね。ガラスのコップに炭酸水と混ぜるとね、とってもステキなピンクのお飲み物。窓辺の光に透かせて見て! 小さな泡が プクプクと水玉模様に浮いて来て、一口飲むとハチミツレモンとシソの香りが シュワシュワと、お口の中ではじけるの。ルビー色ジュースはステキでしょ。

ウグイスは 今も上手に鳴いてます。突然、ケッチョ、ケッチョ、キッチョケ!「え?最近 早口言葉をはじめたの?」思わず クスリと笑います。 それでも最後にウグイスは 胸を大きくふくらませ、胸をふるわせ高らかに、ホーホケキョと歌います。うっとり安心聞き惚れて、つゆ子ばあちゃんは ウトウト眠りの世界へ入ります。

お陽さまが、西の方へ傾いて「今日の仕事は おしまいだよ~」と告げるように木の葉の風が ちょっと涼しくなりました。つゆ子ばあちゃんは、急いでキッチンに行き、お鍋に手を当てて「お~、これは丁度いい」いいあんばいに冷めてます。さあ~、これからが総仕上げ、ステキな魔法が始まるよ。猫のジェジェに声をかけ「ルビー色ジュースが元気ジュースに なりますように!」と、おまじないのように 言いながら、瓶の中に流し込むのです。すると、どうでしょう。瓶に注がれたジュースは透き通り、まるで宝石のようになりました。これこそ、つゆ子ばあちゃんの望んだルビー色ジュース。「こんな、魔法を孫に見せたいなあ」でも、つゆ子ばあちゃんの孫の純也はここにいないのです。純也のお母さんの体の都合で、遠くに住むことになったのです。そこで、純也と純也のお母さんに、この元気ジュースを贈ることにしたのです。純也のうれしそうな顔が浮かびます。ピンク色が大好きな純也のお母さん、とっておきのルビー色ジュースは きっと喜んで飲んでくれることでしょう。「ハチミツ入りのルビー色ジュース、とっても体にいいですよ。早く元気になってくださね」手紙を 添えて、ピンクのリボンで飾り付け、とってもかわいくなりました。そして、その瓶のラベルには「つゆ子ばあちゃんのルビー色ジュース」と書きました。

                    おしまい




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