昨日までの風景(5)
☆ジュンへ
ジュン、この前電話に出たくれた時、すっかり低音の厚みのあるいい声になっていたね。声がステキなのは、お父さんに似たのかな?
お父さんの声もお父さんのお父さんに似て、ステキな男声だったのは知ってるかなあ。きっと歌をうたったらわかると思うよ。
ねえねえ(娘)の声もばあちゃんのお腹から出てきた時の声を聞いて
「世界一きれいなかわいい声だ!」と、ばあちゃんが思ったくらい…。
この箱の中の本は、ねえねえが小さい頃から 大切にしていた本の中から
今のジュンが喜びそうなのを選びました。次はちょっとお兄さんになった時のを選んで送るね。
次のページは ばあちゃんの好きな詩です。 読んでね。 ではまたね。
令和3年11月30日
ばあちゃんより
「日記」
詩・工藤直子
ゆうがたの海は 太陽の日記帳です
雲や風と 出会ったことや
カニやカモメと 遊んだことを
光の文字で 海に書きます
海に浮かぶ 小さな島々は
あれは 句読点です
書き落としはないかと
太陽は もういちど海を照らし
ぱたり と 「今日」のページを閉じます
P.S. 夕陽が海に沈む時、一瞬太陽の光が明るくなって沈むのをジュンは
見たことがあるかい? 一度 海の夕陽を!