![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71757674/rectangle_large_type_2_99df6aed601ddddc711e149471e26452.jpeg?width=1200)
Photo by
mikiamind
何処へ
ある日 バスに乗る
前の席に母親に抱っこされた
赤ん坊がこっちを見ている
じっとにらめっこして
カンロ飴のような丸い瞳に微笑むと
小さな生えたての白い歯を見せて
無邪気に笑う
あれは遠い昔のワタシの姿
ランドセルを背負った小学生
道端に咲いている花に足を止め
こころを奪われたように眺めている彼女
小さな野の花の美しさにみとれていたのか
そっと花に指を触れた
その小さな指先にテントウムシが辿り着き
飛んで行った大空は青い空
あれはかつてのワタシの姿
アイスキャンディー片手に
夏の光の中を二人乗りして
大きなけやきの木の下を駆け抜ける
少年と少女
夏を惜しむように蝉が鳴き
プール帰りのけだるい体を冷やすように
アイスキャンディーのソーダ味が心地よい
カフェの窓際の席で秋の陽だまりの中
老夫婦が穏やかに笑って話をしている
枯れ葉の絨毯が道を埋め尽くし
恋人たちがテラスで肩を並べ未来を語らう
あの時 待ち合わせをしたはずのワタシたちは
ちょっとした神様のいたずらで
すれ違ったまま もう逢えなくなってしまった
手の届くはずだった未来
街の風景に
遠いむかしのワタシを見つける
街の風景に
遠いワタシの未来を想う
街の風景に
別々に歩きだしたアナタとワタシの現在(いま)…
星の数ほどいる人々の現在 過去 未来を
いっしょくたに抱え込み
街は夜も眠らず
人々の人生を作る上げてゆく
溢れかえる人波の中
まだ見ぬ誰かと出会うため
わたしは街という小さな宇宙の中を泳いでいく