お福分け
「お母さん、野菜取らなあかんでえ、皿うどん好きかあ?」と、聞いて
「好きやったら、今度送ったげるわ」と、言って帰って行った息子。
数日後に「##ハットの皿うどんとちゃんぽん送りました。一週間くらいで配達されます」と、メールが来て、一週間もしない間に 各5食組の箱が2箱クール便で届いた。
「ラッキー😊 ありがとう!」とのお礼の電話に「一年持つから心配せんと、人にあげるんやったら又送ったげるし!」と やさしい返事に「いや、誰にもあげへん!」と 欲張った返事を返したばあちゃんだったが…
新年入ってすぐ、3軒向こうの仲良しさんが
「ねえ、あんた、どうしたもんかねえ」と、来られた。話を聞くと
「うちの車庫 空いてるから、お向かいのKさんが『自転車を 置かせてもらえないか?』て 聞いて来たんで『どうぞ、どうぞ!』って置かせてあげたんよ。お正月の間だけやったんかなあ? お向かいの車庫には 屋根がないやろ、雨なんか降ったら 電動自転車やし大変やんか!しゃあし、ずーっと置かしてあげるつもりやったんやけど、昨日『ありがとうございました』って、これ、持って来たんよォ」と、お菓子の入った箱を 持ち上げた。「『私 こんなん貰ろたら、困ります、車庫貸しただけですのに…』というたら『お友だちに あげてください』って、言うんよォ そんで 中見たら丁度3個入ってるやん、ああ いつもの友達のことやな!と 思うて…
あんた 一個 取ってくれへん?」と、おっしゃる。
見ると 以前にもいただいたことがある有名なバームクーヘン屋さんの
【分けありバームクーヘン】だった。
【分けあり】と付いていたんで、最初はちょっと「?」だったけれど【分けあり】なんて、なんのその! 只 ちょっと形が崩れていたりしているだけで、 おいしいの!って、それが すごくおいしいのよ!って、みんなで喜んだ。
だから、お正月料理に飽きていたんで 大歓迎!だったんで さっそく
「そんなら、いただくわ」とちゃっかり一つ頂いた。「も ひとつは△さんに これからもっていくね。けど、何 おかえし したらええやろか?」 彼女はとても義理堅いお人、私なんか「いや~、ラッキ~!」で済むところ そうはいかない。そんな性格を知ってるから「私も 考えとくわ!」というと「うん、お願いね!」と、その時は済んだ。
それから、数日後 息子からの「##ハット」の贈り物
息子からの贈り物とて「誰にも あげへん!」と、欲ばったけれど、翌日 一食たべてみて、こんなに美味しいものか!とびっくりした。
そこで、ハッと気がついた。
バームクーヘンのお返しに「##ハット」はどうかしら?
気付くと <仕事が早いのが このばあちゃんの取柄!>
息子に 電話をしていた。
「しかじか かくかくで その人にあげるえ!」
「そんな、お付き合いしてるんか? ええよォ」
関東で生活している息子にしては ばあちゃんの生活ぶりは きっと驚き桃の木、山椒の木だったようだが、すぐに快諾してくれた。
善は急げで、3軒向こうの友達にも 夜9時だったけれど、電話をしてみた。
「そりゅあ~、助からはるわ!一人暮らしやもんな、けど、ええのん?」
「息子が送ってくれたもんや!って言うたら、気 使わはらへんと思うわ」
「いや~、私も助かるわあ、丁度 明日朝 果物屋さんの初出勤やし」
「そうやな、タイミング ええ時で よかった! ほな、明日朝 3人で持って行けるもんな!」と、話は決まった。
翌朝、深夜からの雨が夜明けの町を 久しぶりにしとどに濡らしていた。
私は 朝から大忙しだった。果物屋さんは いつも8時前に来る。
果物屋さんが来る前に、お返しの品を作っておかなければならない。
この冷凍食品を 何に入れようか…?と迷い 焦っていたが、キッチンの吊り棚に 丁度いいサイズの保冷バッグを残して置いていたのを思い出して急いで吊り棚からそのバッグを取り出した。
わりかし小さめのバッグなので、入るか入らないか…?
それが 問題だった。
しかし、2つのジップの袋に 2種1セットづつセットした品が 保冷剤を挟んでピッタリとおさまったのだ。
私は 満足だった。
コピーした説明書と もしもの留守の時ように 竹下夢二の絵ハガキに短いあいさつ文を書き、それを最後に載せて ファスナーを閉めた。
かくして、果物屋さんとの挨拶と初買いが済んで、いざ、お向かいの家のチャイムを押した。
その方は すぐに出て来てくださった。
新年早々(一週間は過ぎてはいるものの)ビニール袋をぶら下げ前かがみになって雨傘をさした3人のばあさんを目の前にしたら、きっと驚かれるに違いない
しかし、私たちは れっきとした「福ばば」である。と、思っている。
出て来てくださって、お互い軽く新年の挨拶をし
「安いもんでしたのに… おいしかったですか?」と聞かれ、3人口を揃えて「おいしかった、おいしかったよ!」と 返事するかわいいばあさんたち
「そうですか?よかった!いつでも 買ってきますよ。一人暮らしなもんで##ハットは 助かります。このバッグおかえしします」
「それは ええの! 買い物する時便利やし貰ろといて!それで、この食品も息子からの【お福分け】なんで、気にせんといてよ、今後共よろしくね」と いうばあさんたちに
「こんなにしてもらって…」と、その方の笑顔が 又 福男だった。
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