【アフリカあるある?】通常業務をしていたら、突然「そうだ、君が研修の講師をやってくれ。研修はいつかって?15分後だよ。」と言われた話。
こんにちは。
JICA海外協力隊として、アフリカのルワンダで活動しているTakumaです。
まずは、僕のnoteを読みに来ていただき、ありがとうございます。
本記事では、思いがけず先生方に向けて研修を行うことになった話を紹介します。ぜひ最後まで読んでいってください(^^)
▶ "ごもっとも" なやつ
それはいつもと変わらない、ゆっくり、じっくり、たっぷり時間をかけて、ダラダラと丁寧に仕事をしていた、晴れた日の昼下がりでした。
僕は、普段から活動の一環として、先生方が教材として使う「教室掲示物」を作っています。その日も、とうもろこし粉が入っていた麻袋とマーカーを使い、掲示物を作っていました。
その時僕が作っていた物は、「Animals and their roles」(図1)という、身近にいる動物と、その動物が人間の生活にどう関わっているのかをまとめた表のようなもの。
これは、以前作った「Domestic animals」(図2)という掲示物に描かれた動物の種類に対応し、一応セットで使えるようになっています。
図2のように、僕が普段作っている掲示物は「絵」であることが多いです。しかし、この時作っていた物(図1)は「絵」ではなく「字のみ」である、ということが今回の話のポイントです。
さて、そんな教材づくりをしていると、突然「IEE Rwanda (Inspire Educate and Empower Rwanda)というNGOから派遣されてきた」と豪語するおじさんがやってきました。
彼は僕が作業を進めている様子を見た瞬間、目をギラつかせながらその掲示物に食い付いてきました。ギンギラギンにです。さりげなくです。
「なんだこのおじさん…」と若干引いていると、彼は突然僕の作業をこれでもかという勢いで絶賛し始めました。
後半はちょっと何言ってるか分からなかったものの、褒め散らかしてくれていることは理解できました。おそらく劇的ビフォーアフターのナレーションみたいなコメントをしていたと思います。
ここで彼が注目したポイントは、僕の書く字が「Print Writing」である、ということだったようです。これは、印刷物に見られるような「活字」、もう少し分かりやすく言うと、日本人なら誰しもが学校で習う、いわゆる「ブロック体」で書くアルファベットのことです。
つまり、僕が書いた物が特別素晴らしかったというわけではなく、おそらく日本人の多くが普通に書いた字であれば、彼は食い付いてきたんだと思います。
そういえば、ルワンダに来て痛感したことの一つが「こっちの人の書く字はビビるほど読みにくい」ということです。「筆記体だから」とかそういう問題ではなく、多分そもそも習ってきた文字の形が違うんだと思います。アルファベットはもちろん、数字の書き方も結構違います。
では、せっかくなので、ここで例題を一つ。
次の図3は、その辺にあった先生のノートを写真に撮ったものです。
何が書いてあるか解読できますか?
どうでしょう?
分かりますか?
ちょっと考えてみてください。
ちなみに、これはなるべく余白が多く、割と解読しやすい部分を撮ったつもりです。実際のノートはもっとごちゃごちゃしています。
では、次に僕が添削し模範解答を付けたもの(図4)を提示しますので、答え合わせをしてみてください(約半年間に及ぶ修行の末に会得した僕の解読能力をもってしても、100%正しく解読できているとは限りません)。
いかがでしたか?
あなたは正しく解読できましたか?
これが学校の先生の書く字です。
黒板に書いてある字も大体こんな感じです。
さて、本題に戻ります。
IEEから派遣されてきた彼は、僕の作っている掲示物に大変興味を示したようで、しばらく僕の動きを観察した後、僕に話しかけたいのかトイレに行きたいのか、何やらモゾモゾし始めました(多分前者)。
そして、僕が一息ついたタイミングで、彼は急に顔を近づけてきて、何かとんでもない秘密を打ち明けるかのように、小声でこんな事を言ってきました。
!?
えええぇぇーーーーー!!
いや、ずっと思ってたやつーーーーー!!!
でも本人達には黙っておいてたやつーーーーー!!!!
文化の違い的なアレだから仕方ないと割り切ってたやつーーーーー!!!!!
え、何、そこ指摘して良かったんだ。
そんなん赴任初日から「字、汚っ」って思ってたわ。
でも誰もそこに触れないことで世界はいつもと変わらず平和に回っていたから、それを気にすることの方が邪悪な思想なのかと思ってたわ。
…と内心思いつつも、取り乱した態度を見せることなく冷静を装っていると、彼はこう続けました。
!?
えええぇぇーーーーー!!
超まともーーーーー!!!
今までに会ったルワンダ人の中で一番まともなこと言ってるーーーーー!!!!
なんだ、さすが大層な名前が付いているNGOから来ただけあって、しっかりした人じゃないか。これまで付き合いのあった人たちの印象から、(良くも悪くも)ルワンダ人って適当な人ばっかりなんだって思ってたけど、こんなにしっかりしたこと言う人もいるのか、と少し感心しました。
このおじさんがもたらす好印象がその他をぶち抜いて、僕のルワンダ人に対する印象の平均点が爆上がりしかけた時、彼は続けて耳を疑う発言をしました。
!?
えええぇぇーーーーー!!
全然まともじゃなかったーーーーー!!!
今までに頼まれたことの中で一番クレイジーなこと言ってるーーーーー!!!!
やっぱりルワンダ人だ。
おじさん、あんたやっぱりルワンダ人だ。
ルワンダ人は、やっぱりルワンダ人だ。
▶ 予定してた内容は何だったの!?
いやいや、待ってくれ、と。
確かに先生方の字が汚いのは事実だし、先生の書く字がうまくなれば子どもたちの字もうまくなる、というビジョンも分かる。
だから、この研修は本当に意味のある研修になると思う。
ただ
急すぎん?
え、15分後スタートて。
急すぎん??
講師任命するの
急すぎん???
さすがにキニアルワンダ語で説明するのは難易度∞だから英語で良いよ、とは言われたものの、それでも寝起き直後に海に突き落とされてバタフライで岸までたどり着けって言われているようなもんだからね。
てゆーか
おじさん、あんたこの研修のために来たって言わなかった!?
40分間の研修をするために来たんだよね!?
それ、研修の内容、あらかじめ予定してたんじゃないの?
いいの?
40分間のうち25分間なくなる、て。
もうマイナーチェンジじゃ済まされないレベルで内容変わっちゃうよ?
と、一通り(脳内で)疑問をぶちまけてみたものの、冷静になってみれば、これは「ピンチはチャンス」ってやつなのでは、と。これは何かしら先生方に「変化」のキッカケを与えることができる絶好の機会なのでは、と。
そう前向きに考え、僕は内心「やっべ、どうしよう」とビビリ散らかしながらも、それを微塵も感じさせない、妙にキリッとした表情で15分間を過ごしました。
つまり、研修を行うことを引き受けたのです。
そして、先生方が一つの教室に集まり、さっそく研修が始まりました。
何の打ち合わせもしていないので、どんな感じで話振られるんだろうと思っていたら、開始直後に「今日は字のスペシャリストが来ています。皆さんご存じTakumaです。では、どうぞ〜。」と、いきなり振られました。
いやキラーパス。おそろしく速いキラーパス。オレでなきゃ見逃しちゃうね。ってレベルでした。
▶ 研修で僕が先生方に伝えたこと
結論から言うと、僕は先生方に2つのポイントを伝えました。
です。
うん。
普通〜。
日本の教員研修でわざわざ時間とって発表した内容がこれだったら、多分「は?なめてんのか」とタコ殴りにされます(※あくまで比喩です。実際の職場は、和気あいあいとしているので御安心ください)。
ただ、ルワンダの先生方に向けては、これくらいで丁度良かった気がします。シンプルに、15分で思い付いたのがこの2つだったというのもありますが。
それぞれを少し詳しく説明していきます。
* 見えない4本線
まず1つ目のポイントである「字を書く時は、見えない4本の線をイメージする」とは何かと言うと、こういうやつ(図5)です。
日本ではコレ、習いますよね?でもルワンダでは「字のバランス」みたいなことって、こんなにしっかり習うのかな?少なくとも、僕は自分の勤務する学校でこういう教え方をしているのを見たことがありません。
教科書のどこかにはこういう図も載っていた気はしますが、そもそも子どもたちは教科書を持っていないので、この4本線理論が子どもたちの目に触れるかどうかは、教える先生次第な気がします。
てゆーか、そう考えると日本の文字の教育ってすごく丁寧ですよね。ひらがなをはじめ、文字を練習するためのツール(図6)がちゃんとあるし、
① お手本を見る
② うすい字をなぞって書く
③ 自分の力で書く
って、しっかり体系立てて習得できるようになっています。そして、そもそも文字のバランスを取りやすいように、補助枠と補助線が付いている。改めて考えると、すごく手厚い構造になっているんだなと思います。
ルワンダでも、ここまでしっかりやったら、子どもたちの字も劇的に変わりそうですよね。劇的ビフォーアフターですよね。何ということでしょうね。
でも、実際はそこまでやれないっていうのが現状なんだと思います。日本ではプリントって毎日のようにガンガン配ることができるけど、こっちではそうもいかないんですよね。学校に、そもそもそんなに紙がないから、一人に一枚なんてなかなか渡せないのが現状です。
ただ、ふと今この記事を書いていて思いましたが、たとえ難しくても何かしら効果が見込めるなら、やってみる価値はあるかもしれません。自腹で紙を買って、自腹で印刷したものを配れば、同僚の先生たちも別に文句は言わないだろうし。やってみて「それ、ええやん」って賛同してくれる先生が一人でもいれば、何かが変わるかもしれないし。これは前向きに検討ですね。
…あ、まずいまずい、ちょっと真面目な話になってしまいました(まずい?)。
※ 3月10日追記
「前向きに検討」なんて書いて公開しちゃったもんだから、実際にアルファベット練習プリントを作って、試しに子どもたちにやってもらいました!
その時の詳細については、別記事にまとめたので、よかったらそちらも読んでみてください(^^)v
* 文字間隔
次に2つ目のポイントである「言葉と言葉の間には、意識的にスペースを入れる」というのは、まぁそのままの意味です。
僕の学校の先生方の多くは、黒板に字を書くときに文字間隔を詰めっつめにします。なんであんなに詰めるんですかねー。たくさん詰めた方がお得だと思ってるんですかね。人参詰め放題的なお得感を抱いてるんですかね。
ちょっと何言ってるか分からないかもしれませんが、文字間隔を詰めるというのは、例えば「I think so.」と書きたいとき、「Ithinkso.」と書くんです。え、なんですかコレは?一つの新しい単語ですか?「イシンクソ」ですか?…と、こうなるわけです。
つまり、単語と単語の切れ目が分からないんです。子どもたちはただでさえ英語をあまり理解していないのに、全ての単語が繋がって見えることによって、文章全体の意味がより分からなくなるんです。おそらく、黒板の字をノートに写していても、自分で何を書いているのか意味を理解していない子は少なくないと思います。
きっと、僕たちも先生が象形文字で黒板に字を書き始めたら、それをなんとか書き写すことはできても、意味は分からないですよね。もはや文章を書いているというより、図を模写している感じです。
まぁそれはちょっと極端かもしれませんが、とにかく先生の字をそのまま書き写す子どもたち側の視点になって考えたら、単語と単語の間のスペースは意識して入れた方が見やすくなるよね、という話をしました。
実際に「I think so.」を使って、図7のように黒板に書いて説明しました。
以上、なんとか15分で絞り出したアイディアですが、しっかり先生方に伝えることができました。あとは、先生方がこれを少しでも意識して実践してくれるかどうかです。
急に研修の講師を振られた時はびっくりしましたが、結果的にやって良かったと思います。おじさんに感謝。
ちなみに、僕のターンが終わった後のおじさんのターンでは、少し話をした後に、先生方みんなで「フルーツバスケット」的なゲームをして終わりました。これ…もしかして、もともと40分間フルーツバスケットやる予定だったのかな…そう思うと、何というか、ゾッとします。
「予定は未定」なんて言いますが、ルワンダで生活していると「ほんとそれ」って思うことがよく起こります。毎日楽しいです。
皆さんも、今は予定になくても、もしかしたら突然「そうだ、ルワンダ行こ。」って思い立つかもしれません。その時は、予定を「未定」から「決定」に変えて、ぜひこの空気を直に感じに来てください!
貴重なお時間を使ってここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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