ミュージカルスパイス
こそあどの森の物語⑤
「ミュージカルスパイス」岡田 淳
なかなか思うようなnoteが書けず、下書きに入ったままでしたが、読み終わった本がたまってきたので、こそあどの森シリーズ第5話をご紹介します。
今回もお話のあらすじと、藤岡ぴぴ的ぐっとポイントを書き連ねますので、こそあどの森シリーズのおもしろさが伝わると嬉しいです。
あらすじまではネタバレしていませんので安心して読んでみてください。
第5話に入る前に前のお話までのあらすじの復習をしたい方はこちらを読んでみてください。
①ふしぎな木の実の料理法
②まよなかの魔女の秘密
③森のなかの海賊船
④ユメミザクラの木の下で
ますはお馴染みの登場人物の紹介から。
今回は出演者たちと書いてありますね。
これもお話に関係していますよ。
2ページにわたって紹介された登場人物、いえ出演者のみなさん。
主人公は一番初めに紹介されている男の子、スキッパーです。
それでは、第5話のあらすじからご紹介します。
今回は、ひとつめの話と、おなじ日におこったもうひとつの話、の2部構成になっています。
まずはひとつめの話から始めます。
★~ひとつめの話~
すてきなミュージカル スパイス
こそあどの森は6月です。
郵便配達のドーモさんがこそあどの森に郵便を持ってきました。
スキッパー宛のお手紙を持ってきたのです。
今回も研究で旅に出ているバーバさんからのお手紙でした。
とにかくスキッパーは手紙の最後に書かれていた標本箱をつくってもらうために、ギーコさんのお家に行くことにしました。
ドーモさんもいっしょです。
ギーコさんは姉のスミレさんといっしょにガラスびんの家に住んでいます。
ガラスびんの家に着くと、スミレさんとギーコさんがいつもとは違った様子ではありませんか。
「あのふたりは…、なにをしているんだ」
(44ページ7行目 スキッパーより)
スキッパーと同じようにそう思ったあなたは、ぜひ続きを読んでみてください。
読んでいるこちらも楽しくなるようなお話ですよ。
★~おなじ日におこったもうひとつの話~
鳥男とホタルギツネ
トワイエさんは、散歩にでかけていて、雨にあいました。
(159ページ1行目より)
雨やどりをするために木の橋の下にもぐりこむと、キツネも同じく雨やどりをしていました。
トワイエさんを見ても逃げないキツネに不思議な気分になり、トワイエさんは今書いている途中の物語『鳥男』の話を一方的にし始めました。
物語の話を聞かされていたキツネは、からだをもぞもぞさせ、口のはしをぴくぴくさせ…
「鳥男はいったい、どうなったんだ!」
(170ページ9行目より)
なんとも不思議な時間を過ごすトワイエさん。
トワイエさんから作家ならではの想像力に溢れた深いお話も聞けちゃいますよ。(読めちゃいますよ。)
もうひとつのお話でありながら、ひとつめのお話と繋がるシーンもあったりと最後まで楽しめる構成になっています。
気になった方はぜひ最後までじっくり読んでみてください。
★藤岡ぴぴ的ぐっとポイント※ネタバレあり
さて、こそあどの森シリーズを読みながら、毎度新しい発見や学びを得ている私でありますが、今回はご紹介したいものが2つありましたので、藤岡ぴぴ的ぐっとポイントとして紹介させていただきます。
今回はネタバレなしにはご紹介できなかったのでネタバレしています。
読みたい方だけ読んでみてください。
一つ目は~おなじ日におこったもうひとつの話~より
「(前略)けれどぼくはこうも思うんです。別のサーカスの別のブランコ乗りの少女は、鳥男が飛べることを、ですね、なっとくできるかもしれない、と。いや、もっというと、ですね、鳥男が飛べても、飛べなくっても、鳥男のことを好きだ、わかりあえる、というひとが、あらわれると思うんです。ブランコ乗りでなくってもいい。んん、花屋さんかも、ええ、しれませんし、その、灯台守かも、しれないです。空を飛べるってほど特別でなくて、ええ、いいんです。鳥男を好きになれる、鳥男とわかりあえるってことが特別なんです。そのことだけで、ええ、ええ、じゅうぶんなんです」
(194ページ3~10行目 トワイエさんより)
こちらはホタルギツネに『鳥男』の話をしてあげているときのトワイエさんの言葉です。
トワイエさんが執筆中の『鳥男』のお話はこうです。
鳥男と呼ばれる主人公は空を飛べる。飛べるということでまわりの人から変な目で見られさびしい思いをするのだが、飛ぶことが好きな彼。そんな彼はサーカスの下働きをしているときに出会ったサーカスの看板スター、ブランコ乗りの少女に恋をする。あるとき少女は失敗をし、高いブランコから落ちてしまったのだが、彼、鳥男に助けられる。これをきっかけに鳥男はサーカスの新しいスターになり、少女と共にサーカスを盛り上げていく。しかし、努力してスターになった少女は、努力なしで飛べ、さらにはスターになった鳥男にだんだんと心を閉ざしていく。少女の心を知った彼は、サーカスを去る。
サーカスを去った鳥男はその後どうなるのか?鳥男はわかりあえる相手に出会えるのか?という話の途中でトワイエさんがこの話をするのです。
深いですよね。
小学生のころは気づかなかったけれど、こそあどの森シリーズでは岡田淳さんの考える「愛」についてもこういった形で語られていたのですね。
とても心に沁みました。
そして、2つ目がこちら
「めったに実がならない。ミュージカルのききめがなくなる。このことが、ひと月の祭りをいよいよすばらしくしているんだよ。」
(205ページ10~11行目 バーバさんより)
これは、あらすじで載せたお手紙に出てきた伝説の植物カタカズラの実からできるスパイス、ミュージカルスパイスについてバーバさんがスキッパーに話してくれたお話です。
このスパイスを食べたり飲んだりした人は、ミュージカルをはじめてしまうという不思議なミュージカルスパイスですが、この不思議な効き目には期限があることをバーバさんはスキッパーに話しました。
それを受けて、「つまらないね」とつぶやいたスキッパーに対して、バーバさんはこのお話をしたのです。
こちらも深いお話ですね。
それをこんなにも短い文とやさしい言葉で表現している岡田淳さんの作品こそあどの森シリーズをますます好きになった私でした。
今回は少し長くなってしまいましたが、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。
こそあどの森シリーズは、やさしい言葉と、コミカルでシュールな挿絵でいっぱいなので、1時間ほどであっという間に読めちゃいますよ。
とってもおすすめです。