2.マーケティングファネルで考えるMV

 前回に引き続きINDIES SHORT MVの前置きになりますが、今回はマーケティングファネルでMVを考えたいと思います。マーケティングファネルとは「顧客が商品・サービスを認知してから、実際に購入するまでの一連の流れを図で表したもの」です。

マーケティングファネル

 ここでの「顧客」はミュージシャンにとっての「ファン」とし、「商品・サービス」を「楽曲やライブイベント」とし、「購入」を「楽曲購入・イベントチケット購入」とします。

 さて、ここで前回の「そもそも何故MVを作るのか」の話を思い出して下さい。「MVを作る目的」を考えたとき、それはマーケティングファネルにおける「認知」「興味」「比較・検討」のどの段階の施策になるでしょうか。私が思うに、世に溢れる多くのインディーズ・アマチュアのMVはこれら三つの役割を意図せず任されています。そしてほとんどが「比較・検討」(顕在顧客)の部分でしか機能していません。
 集客を考えたときまず注目すべきことは、「今自分がどういう状況か」です。「認知」が足りないなら露出を増やす方法を考えるべきで、「認知」を獲得できているなら「興味」へ移行させる施策を考えるべきで、「興味」も獲得できているなら「比較・検討」へ促す導線を整えるべきで、「比較・検討」段階の顕在顧客を抱えられたなら、「行動」に移すパーセンテージを上げる施策を考えるべきです。

 更に具体的に例えていきます。「認知」が足りないと感じるなら、私ならTwitterで音楽が好きそうなアカウントをフォローするところから始め、リーチが増えやすいTikTokに定期的に動画をアップしライブ配信をします。
 そこでリアクションをくれた人は「興味」を持ってくれた人です。自分が「認知」でアプローチをかけた人数に対し、何%の人が「興味」へ移行したのかを意識します。100人の認知に対し1人の興味だったとして、興味を増やす方法は

①認知を増やす
②%を改善する

の2通りです。自分のスタイルを崩したくない場合は10人の興味を得るために1000人の認知を得る施策を考えましょう。スタイルを変えられるなら、需要を意識したものを供給することを心がければ%は改善します。
 次に、興味を持ってくれた人は逃がさないように各SNSは充実させておきましょう。
・ショート動画のTikTok
・情報発信のTwitter
・ブランディング、ポートフォリオとしてのInstagram
・よりコアなファン化を促すYouTube
・直接情報を渡せる公式LINE
 これらを認知の際に興味を持ってくれた人の目に留まるように準備し、ファン化を促していきます。
 そうして「比較・検討」の段階に至った顕在顧客に最強にかっこいいMVを見せつけて、ライブにきていただきます。

 私はこれまでMVを作ってきて違和感を感じていました。全ての制作に全力でとりかかったことは言うまでもありませんが、基本的にMVは顕在層向けのコンテンツで、「ファンに喜んでもらう」という側面が強かったからです。もちろんそれは大切なことですが、映像制作はとてもお金がかかります。私はこれまでとても安く制作を受けてきましたが、来年独立するとなるとこれまでのような制作は続けられませんし、普通に相場は20~30万円くらいはします(内容によって変わりますが)。
 ある程度活動が軌道に乗っているミュージシャンなら、ブランディングとファンの強化のために高い予算をかけていいMVを作っていくべきでしょう。しかし、まだこれから昇りつめていかないといけないミュージシャン達がそういう予算をかけて顕在顧客向けのコンテンツを作るなら、先に「認知」「興味」を獲得していく潜在顧客向けのコンテンツを増やすべきではないか、そう思うんです。


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