「ロミオとジュリエット」あらすじ解説【シェイクスピア】
シェイプクスピアの解析はこれで5作目です。なんだか飽きてきました。構成がワンパターンです。作業ばかりで発見の喜びがありません。こんな人生もう嫌、いっそひと思いにと短剣を首に当てようとすると、ロレンス修道僧に止められました。「おまえはそれでも男か。どうして自分の生まれを呪い、天と地を呪う? 生まれも天も地もおまえのなかで一つになっているのだ」。こんなにいいセリフがあるのに飽きるなんて、自分がもっとしっかりしなければ。ここで私がしっかりするとモンタギュー・キャピュレット両家の諍いが解決できるそうです。そんなわけで反省はしましたが、でもやっぱりシェイクスピアにしては完成度が少し低い気がします。
あらすじ
同じ町に住むモンタギュー・キャピュレット両家は仲が悪く、町を治める大公様も困っています。モンタギューの息子ロミオは、失恋でクサクサしていたので危険を犯して敵のキャピュレット家のパーティーに潜入、悪いことにそこで若い女性に一目惚れ、さらに悪いことにその娘は敵のキャピュレットの娘ジュリエットで、さらにさらに悪いことにジュリエットもロミオに一目惚れ、
最も悪いことには敵のキャピュレット家のティボルトに潜入を見つかって殺意を持たれます。
電撃的に恋に落ちたロミオとジュリエットは、ロレンス修道僧頼んで親に内緒で電撃的に結婚しちゃいます。
ロレンス修道僧も、この結婚で両家の争いを止めさせれると考えて協力したのです。しかしロミオは町中で殺意十分のティボルトに遭遇、すったもんだの末殺してしまいます。
当然死刑が妥当ですが、大公は寛大にも追放処分に留めます。もうジュリエットに会えない、絶望したロミオは短剣で自殺しようとしますが、ロレンスが止めます。「おまえはそれでも男か。どうして自分の生まれを呪い、天と地を呪う? 生まれも天も地も、おまえのなかで一つになっているのだ」。説得されてロミオはマントヴァに亡命です。
一方ジュリエットは親の意向で別の男と婚約させられそうになります。ロレンス修道僧は一計を案じて42時間仮死状態になる薬をジュリエットに与えます。一旦死んだふりで、後で納骨堂からロミオに連れ出してもらえばよい。その後駆け落ちすれば新婚生活が待っています。ジュリエットは薬を飲んで納骨堂で仮死状態です。
ここまではまずまずの展開ですが、ロミオが亡命したマントヴァが伝染病でロックダウン、郵便が不通でロレンス修道僧はジュリエット仮死作戦を伝達できません。一方で風の噂でジュリエット死去の情報は入ってきました。法を犯して納骨堂に潜入したロミオ、仮死状態のジュリエットを見て死んだと勘違いして絶望して毒薬飲んで死にます。早まりました。
ロミオ絶命の後で、タイミング悪くジュリエットが仮死状態から蘇生。ロミオの死体を見て絶望して短剣で自殺します。命の連鎖倒産です。
やがて二人のなきがらは発見され、モンタギュー・キャピュレット両家もさすがに手を取り合って反省、仲直りします。
(あらすじ・終)
完成度低め、でも人気
いつもながらの当てにならない幕場割りがされています。河合祥一郎氏なんか、翻訳で幕も場も記載していないくらいです。当てにならないのですから間違った態度ではありません。しかしそれでは構成が見えてこない。強引にまとめてみました。
だいたい作者本人の意図としては5幕構成で問題ないと思います。旧第三幕第一場が中心になります。ティボルトをロメオが殺すシーンです。この表では中心部分確定ぐらいしか情報がない、しかも色を変えてみると、
どうも黄色部分の対称性がよろしくない。場所の規則性がありませんし、内容もあまり対にもなっていない。結論としては構成としての完成度が低いのです。対句とか構成でドラマを組み立てるのではなく、キャラの振る舞いでドラマが自然に流れてゆく作品なので、構成きっちり感がありません。
と言って「夏の夜の夢」のような凝った入れ子構造もありません。単純な、一本調子のドラマです。
でも人気はあるんですね。「ハムレット」につぐ人気作らしいです、わかりやすいですから。こういうところが構成読み解きの弱点でして、構成が悪いからといって悪いドラマではない、しかし構成読み解きはその魅力を明らかにできない、なぜなら構成が悪いのですから。構成解析は言葉の重層性を乗り越えられますので、複雑で難解な作品の解読には強力なツールになるのですけど、単純で平易なドラマには無力だったりします。
対句
そうは言っても対句はあります。青の部分が本作最重要対句です。ここさえ把握しておけば、あとは読むだけで十分な理解になります。
A-1:乳母が昔話。ジュリエットが子供の頃地震があった。うつ伏せに倒れた。乳母の亭主が「年頃になったら仰向けに転びなさい」と言う。ジュリエットは泣き止んで「うん」と言う。
A-2:マントヴァが伝染病でロミオに情報伝達できず。最初納骨堂で仰向けに仮死状態だったジュリエット、死んだロミオを見て自殺、自刃だからうつ伏せの状態で死去と考えられる。
天災が対になっているのと、うつ伏せ→仰向けが仰向け→うつ伏と対です。ちゃんと考えています。ただこの程度ですと作家なら誰でも考えられることでして、文豪の作品としては物足りないですが。
天災とは天地の現象ですから、「天地と一つになっているのは、ロメオだけでなくジュリエットもだ。ふたりとも、あるいはカップルとして天地と一体化しているのだ」というのが作品の主題になります。恋愛こそ天地の表現である、若者の恋愛は天地の意志なのである。「若きウェルテルの悩み」「グレート・ギャッツビー」もこの路線の世界観ですね。西洋の伝統なのでしょうか。
以上、構成読み解き家としてはかなり不完全燃焼ですが、読むだけだったら非常に面白い作品です。感情移入しやすい。複雑でない分スピード感を持って読める。登場人物も少なく覚えやすい。ロミオのせっかちさを批判的に読んでいると、いつの間にか自分が「ロミオより賢いが、彼と同じくらいモテる」人物になりきれます。
映画
映画で見るならデカプリオ版もよいですが、1968年版がよりおすすめです。
音楽はニーノ・ロータ。ゴッドファーザーの音楽で有名な人ですが、こちらも代表作です。名旋律を聞かせます。
撮影は超一流とは言えませんが、十分上手いですね。
衣装、美術もすばらしいです。
イタリアで撮影していますが、建物はやはり最高ですね。
少し写真並べておきます。
なんやかんや言って、
「夏の夜の夢」や
「ヴェニスの商人」よりも良い映画になっています。
成功の原因は原作の完成度の低さなんでしょうが、それが良いことなのかわるいことなのか、私にも判然としません。