「シビル・ウォー アメリカ最後の日」あらすじ解説
ネタバレ有ります。
あらすじ
内乱中のアメリカで、ニューヨークからワシントンに向かうジャーナリスト4人組。
途中で知人を殺されますし、
4人組も一人殺され3人になってしまいます。
ワシントンでホワイトハウスに突入、
追い詰められた大統領自ら発砲、さらに一人死にます。
怒ったインタビューアーは大統領に最期の質問。
大統領の答えは
「私を殺させるな」でした。
インタビュアーはそれ以上聞かず、
大統領を射殺、最後は記念撮影です。
構成
灰色の部分でパーティーは集合、その後対称構造の旅です。構成としては綺麗に出来ています。
旅の始まりとワシントンに行ってからが対になっています。
中心部分が問題でして、ストーリーの組み立てが少々悪いのですが、
最終的にまともに会話できない赤メガネ殺人マシーンが登場します。D2部分です。
そしてはるばる1400キロ旅行してホワイトハウスに辿り着いたジャーナリストも、大統領にインタビューするのはただ一言です。
こが本作の結論でして、「まともな会話がなくなったら社会は終わり」です。作中平穏を保っているタイムトリップの街の服屋の店員は、
本を読んでいます。このゾーンにはまだ「言葉」があるのです。この店員と赤メガネが対になっています。
映画としての出来
映像は綺麗です。鑑賞して楽しいです。
一方で市街戦はどう撮影していいかわからない感じです。演技は普通。音楽選択はハズしていると思います。見て損した、とは思いませんが得したとも思わない、絶妙の中途半端映画です
アメリカの今後
じゃあアメリカは左右の間でもっと会話をしてゆけばいいのか。確かに少しは良くなるでしょうね。テレビ局が真っ二つに分かれているのは問題ではあります。国会とは別に右派左派が週1回討論をする番組を作るべきですね。少しはマシになるでしょう。
でも根源には宗教の問題が横たわっています。アメリカのリベラルは神が死んだと思っている人々です。保守はそれでもキリスト教を護持している人々です。両者は宗教観が違いすぎて、会話をしても宗教論争になるから会話自体が難しいのです。政策論争はいくらでも議論できますが、宗教の議論はろくなことになりません。
逆に言えば今起こっている事の本質は、アメリカの覇権の終了でもなく、西洋の人類支配の終焉でもなく、経典宗教の賞味期限切れだと思います。経典宗教の目的は、救済ではなく文字という文化の拡散でした。近年のネットの発達、スマホの普及により経典宗教の存在意義がほぼなくなった。でも西洋はキリスト教社会ですし、アメリカなんかキリスト教の特定宗派が建国した国です。それら社会や国家の根底部分がごっそり底抜けしてしまった。
事情は実は日本も同じですが、日本の方がタイミングが早かった。富永仲基の「出定後語」が1745年、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」が1885年、140年の差があります。140年分進んでいる、とは言いませんが、140年分の経験の蓄積で、日本は市民社会が壊れにくくなっている。アメリカさんは大変ですね。