読書レポ/『ツナグ』辻村深月さん著
私は基本的に電車に乗っている時は本を読んでいます🚃
心地よく揺られながら、物語に没頭したり、頑張ろうって前向きになれるような文が好きです。
今日の読了本は、
辻村深月さん『ツナグ』。
生きている者が望めば、そして相手がそれを受け入れてくれれば、
一生に一度だけ、死者との面会を叶えてくれる「使者(ツナグ)」という存在がいるらしい。
都市伝説のように噂される「使者(ツナグ)」の連絡先を入手することもとても大変だという。
生きている間に死者と面会するのも一生で一度きりであれば、
死者が生きている者と会えることも一度きり。
また、死者側からは生きている者に会いたいと申し出ることはできず、誰かに会いたい場合はその人からの面会リクエストを待つしかない。
従って、死者は面会を拒否することもできる。大切な一回のチャンスを誰に使うか選択権があるというわけだ。
この設定がまずとても面白く、ストーリーにのめり込むまでに時間はかかりませんでした。
運良く「使者(ツナグ)」にたどり着いた依頼人たちは様々。
突然死したアイドルのファンだった、冴えないOL。
癌の告知をしないまま母を亡くした横柄な中年男性。
ケンカをして気まずくなった親友を交通事故で亡くした女子高生。
婚約をした彼女が失踪して7年も経ってしまった男性。
依頼人目線で死者とのエピソードが展開され、
最後には使者目線の話となって、この不思議な使者という仕事の力や過去について触れられたり、
各話の伏線回収もあったりして非常に読み応えがありました。
一般的に「死んだ人にもう一度会える」と聞くと、
あの時伝えられなかったことをもう一度伝えたいとか、
ケンカ別れだったから仲直りがしたいとか、そういったポジティブな発想になると思います。
ところが、そんな幸せな話だけでは終わらないところが面白い。
もう一度会えたとして、必ずしも双方が幸せになるとは限らないのだ。
特に女子高生のエピソードは本当に読みながら苦しくなってしまった。
10代特有の、嫉妬や羨望、お世辞や陰口…
一度きりの面会のチャンスでハッピーに仲直りするどころか、重たい十字架を背負わされる展開には胸がズキズキと痛みました。
生死がテーマの根本にあるんだから、幸せなことだけで終わらないのはある意味当然とは頭では理解しておりますが、
まだ消化しきれずに胸が痛い感じが残っています。
恥ずかしながら辻村作品は今作が初体験でした。
『傲慢と善良』が映画化され、そのインタビューで辻村さんご本人が「私の作品は白辻村と黒辻村があるので好き嫌いが別れる」といった内容のことを仰っていて、シンプルに白黒両方読んでみたいと思って手にしました。
読みながら、映像がとても思い浮かぶ描写だなあと思っていたら『ツナグ』もやはり映像化されていたので観てみたいなと思いました。
一度だけ死んでしまった人に会えるとしたら、あなたは誰に会いますか?
今はその権利を使わず、いずれ訪れる別れのためにとっておきますか?
それとも、誰にも会いませんか?
生死についてとても考えさせられたお話でした。