④ 「幸せそう」な専業主婦を妬みバカにした愚かな笛美。
前回、20代で婚活を始め、世間に認められる女の人生を歩もうと格闘するも、疲弊しきった笛美。
●仕事をするほど女の価値が下がる
婚活でも自信を失いましたが、
一番しんどかったのが、
私のような仕事人間は
「女性としての価値が低い」と
社内外の男性に
繰り返し言われたことです。
私は自信もなかったので、
それは真実なのだろうと思いました。
大きな成果を上げて祝福された日も、
私の胸の中はヒリヒリとしていました。
「どうしよう、こんなに成功したら、
生意気な怖いモテない産業廃棄物に
なってしまう!」
私のことを「名誉男性」というのでしょうか。
でもそこに名誉なんてなかった。
あの時の私の心情には、
「欠落」「欠陥品」「不良品」という言葉が、
いちばん当てはまっていました。
逃げることは、
これまでの努力を捨てることでした。
自尊心が地に落ちた人間は、
どこにも行けないのです。
助けてと言うこともできませんでした。
●女の幸せを手にした人たちへの嫌悪感
お昼の時間。
寝不足で朦朧としながらコンビニに出ると、
ベビーカーを押す同年代の女性がいました。
ヒラヒラの服を着て、
髪を巻いて、
きちんとお化粧をして、
娘そっくりの素敵なお母さんと
楽しそうにお買いものをして・・・。
彼女たちと私には、
愛玩犬と馬車馬のような
差があるようでした。
「大丈夫だよ、需要が違うんだから」
というルミネの広告が頭をよぎりました。
私はひとりぼっちで働いているのに。
一生この戦いから降りられないのに。
社会的に認められる道を選んだ、
幸せな専業主婦。
男の人に寄生しないと
生きていけないバカな女・・。
会社の男性陣の奥様にも、
複雑な感情を抱きました。
私が働いているあいだ、
男性社員の専業主婦の奥様は、
家でのんびりしてるのかな。
お昼寝してワイドショーでも
見ているのかな?
立派な旦那さんがいて
社会的にも認められているのだろう。
男性社員とその奥さまは
家族をもてて子孫を残せる。
でも私は残せない。
それは私という人間が、
淘汰されるべき劣った人間
だからなんだ。
いま振り返ると、
まるで非モテといわれる男性のような
発想をしていました。
完全におかしかったです。
私も。私を取り巻く社会も。
●女性を嫌悪したのは、男性社会の方がリアルな存在だったから。
私のメイン世界を構成する男性は、
その世界の外にいる女性よりも、
ずっとリアルでした。
仕事をくれ、評価してくれる彼らの世界をおかしいと思うことは、
自分の属する世界を否定するようなことでした。
男社会の外にいる女性たちとの接点も、あまりにも無さすぎました。
たまに接する「外の女性たち」の情報といえば、
彼女の惚気話、OB訪問にくる女子大生、奥さんの愚痴、ヤった、ヤりたい女の話でした。
いま思えば男性のフィルターを通した女性しか見えていなかったのです。
専業主婦の女性のことを、
私は男に仕える自分の力では
生きていけない女性だと思っていました。
でも私もまた会社で、
男に仕える、自分の力で生きていくことも
やっとの女性でした。
本当は女性が自分のしたい生き方を
実現できない社会の方が問題なのに。
私は男社会で別の役割を演じる女性に、
恨みの矛先を向けていました。
それが男性社会の思うツボ
であることも知りませんでした。
黒歴史⑤ 今更ながら、女性広告屋から見た#metooのことを話します。