筆の選び方 筆の軸について
筆の軸にこだわりはありますか?
筆の毛や、穂に関してはよく取り上げるのですが、軸についてはまだ取り上げる機会が有りませんでした。
そこで今回は軸、つまり筆の持つところについてお話ししたいと思います。
筆の軸の重要性
筆の軸は、地味ながら持ちやすさに大きな影響があります。
絵や字のお仕事をされている方は、特に筆記具を持っている時間が長いので、持ちやすさは作業効率やストレスの軽減に大きく影響します。
当店では、よい筆の軸の条件として
軽い
適度な細さである
できれば色がついていない
ことを挙げており、これらの条件を満たす筆の軸の素材として、矢竹を使用しています。
矢竹とは、武家の近くによく植えられていた、名前の通り弓矢の矢を作るのに使われている竹です。
この種類の竹は軽く細く真っ直ぐなため、筆の軸にピッタリの素材です。
なぜ軽い軸がよいのか?
これは単純に、重いものを持つと手が疲れる!ということに由来します。
絵や字を書いていると、1日に何時間も筆を握りっぱなし、ということもよくありますよね。
その時に、筆の軸が重いと、手の周りの筋肉に疲労が起こりやすくなります。
手の筋肉が疲労すると、もちろん絵や字のクオリティに影響があります。
そのため、軸の重さを最小限にして手の疲労を抑えることが重要になってきます。
木や金属軸の筆も多くありますが、やはり竹に比べると重さがあり、手に疲労がかかりやすいので、当店ではほぼ全ての筆の軸に竹を使用しています。
なぜ適度に細い軸がよいのか?
こちらも軽い軸の項目と繋がりますが、やはり細い方が重さが軽減される、というのがあります。
ただ、あまりに細すぎると持ちにくくなってしまうので、適度な細さの筆にするために、細くなりすぎそうな筆は小軸の部分を二重にするなどの工夫をしています。
また、軸の太さを自分の好みにカスタマイズしたいという場合も、細ければテープなどを巻いて調整できますが、太い場合は削るしかありません。
こういったカスタマイズのしやすさを考えても、筆の軸はある程度細い方が便利です。
なぜ色のついていない軸がよいのか?
こちらの項目は、全ての筆、人に当てはまるものではありません。
ただ、筆で色を扱われる方にとって、筆の軸に色がついていないか、極めて柔らかい色であることが大切です。
これは、筆の軸の色が、作品の色選びや彩色の際のノイズになってしまうことがあるからです。
色の見え方は、色同士の対比によるところも多いです。そのため、筆の軸が赤かったり黒かったりと、濃い色であると、微妙な感覚が狂ってしまうことがあります。
普通に趣味で絵を描く、ぐらいの気楽さで色を扱う方には大きな問題ではないのですが、職人さん等、たくさんのものに同じ様に彩色をしなければならない場合等は、特に着彩のない竹そのままの軸を好まれる方が多いです。
重さにしても、軸の色にしても、本当に微々たる差なのですが、筆を日常的に使われる方にとって、こういった小さなストレスを軽減することも大切なことだと思います。
日本の伝統的な筆の軸の長さ
さて、軸は軽いほうがいいから、短めの方が軽くなっていいのかな?と言うと、そういうわけでもありません。
日本の伝統的な筆の軸は、だいたい5〜5.5寸(約15〜16.5cm)になっています。
これは、日本式の筆の持ち方をした時に、筆の重心が真ん中にくるようにデザインされているのです。
筆の重心がしっかりしていると、線もブレにくく描きやすくなるので、伝統的な道具は伝統的な使い方も併せて知っておくとより使いやすくなるのではないでしょうか。
筆の持ち方の記事は、マガジンにまとめてみましたので、ご興味がありましたら覗いてみてください↓
大きな絵には長い軸がオススメ
軸の長さはストローク(一筆で描ける線)の長さに直結します。
紐の長い振り子の方が、紐の短い振り子よりも長い距離を移動できる、と言うと伝わるでしょうか。
長い線は、もちろん体や腕を動かすことによっても描けるのですが、筆を持っている部分を中心にし、軸の長さを活かして線を描くほうが効率がよく、また美しい線になりやすいです。
筆の軸まとめ
筆の軸は、シンプルに見えて、実は筆の使いやすさの大部分を担っていると言えます。
特に手が小さいと、太かったり重い軸の筆を使うと、すぐに疲れてしまうというお悩みがある方もいらっしゃいます。
そんな場合は、是非軸の事も念頭に置いて筆選びを考えてみてくださいね。
竹の軸、手触りもよく軽いのでオススメですよ!
試し書きもできますので、お店にも是非お立ち寄りくださいね。
丸山雄進堂
大阪市中央区島之内2-6-23
06-6211-6226