「筆先三寸」日記再録 2003年5月~6月


2003年5月1日(木)

▼保育園でサッカー教室に所属しているともちゃんであるが、昨日お迎えに行った折の帰り際、コーチに声をかけられたとか。
「おう、サッカー面白かったか」
 すると、ともちゃんは間髪を入れずに大きな声で答えたという。
「ぜーんぜん!」

「なんやとー」と、コーチが怒鳴るのももっともである。
 のちほどサイがともちゃんに聞き直すと、
「ううん、めっちゃたのしかった。でもなー、なんでかあんなんゆうてしまうねん」
 とのことである。
 あまのじゃく街道まっしぐらっていうやつですか。

▼ともちゃん&なおちゃんファンに朗報!
 本日、二人がテレビ出演するかもしれません!
 WinMXだのWinnyだの、なにがどこで流れるかわからない時代なので、詳しくは申せませんが、ヒントは「関西ローカル」と「潮干狩り」の2つです。
 偶然見かけた方は喜んでください。ていうか、画面の隅にかするだけという可能性が高いので、もし映ったら我が家だけで喜ぶようにします。


2003年5月11日(日)

▼仕事がわけわかんなくて力が出ない~。
 ここでバタコさんあたりが、「むしまるマン、新しいスキル入りよ!」とかいって、焼きたての脳みそを放り投げてくれないものか。ちょっとだけなら食べられてもいいので。むむー。

▼一人で凹んでいても仕方ないので、とりあえず新しい職場では人間関係づくりだ、と意気込んで、隣の人に「犬夜叉のフィギュアのキーホルダー」をあげました。
 怪訝な顔をされました。人によっては引いた、あるいはひるんだ、と見えなくもなかったかもしれません。
 隣の人は男性なので、やっぱり綾波レイとかのほうが喜ばれたのでしょうか。いや、それよりモリガンとかのほうが……。
 なんか根本的に間違ってますか。

▼そうそう、フィギュアで思い出したが、こないだ久しぶりにガチャガチャ屋めぐりを敢行した。
「妖怪人間ベム」のセットとか、「チキチキマシン猛レース」のセットとか、「ガンバの冒険2」のセットとか、「海洋堂版ハイジ」のセットとか、単品では悟空とピッコロとか、気に入ったのを適当に買ったら1万円近くかかって、これまたなんかすっごく道をあやまっているような気がした。
 私はべつにコレクターでもマニアでもないので、発売日とか、メーカーとか、シリーズとか、コンプリートとか、そんなのはまったく気にしない。たまに店まで出かけて、おっと思うのを買うだけである。すぐ人にあげたりするし。
 でもなあ、1万円だもんなあ。今年四十だしなあ。いくら、酒もめったに飲まない、パチンコも競馬もしない、ゴルフも年に3回程度、本読んでりゃ幸せ、みたいな金のかからないオヤジだとはいえ、数少ない道楽がガチャガチャってのはなあ。
 うむ、それなら今年はワンフェスへ行ってみよう。
 どうも根本的に間違っているような気が。

▼「チキチキマシン猛レース」のガチャガチャを見かけたときは、さすがに驚きかつ熱狂したが(だって、岩石オープンとか、ヒュードロクーペまで入ってるんだよ)、これが出るとなると、これからはきっと、ハンナ・バーベラの夢の世界が広がるにちがいない。
 「スーパースリー」にはじまって、「宇宙怪人ゴースト」とか、「電子鳥人Uバード」とか、「宇宙忍者ゴームズ」とか。そしてもちろん、「幽霊城のドボチョン一家」。
 ああもう、ああもう、そんなガチャガチャが出揃うと考えるだけで、胸が、胸が躍るではないか。

 やっぱり根本的に間違っているという確信が……。


2003年5月13日(火)

 前回の日記を書いたあと、気になってハンナ・バーベラ関係で検索していたら、こんなCDがあることがわかった。
 そんなもん、もちろん速攻で(といっても今日の帰り)買いに行きましたよ。でもってバッチリ手に入れましたよ(しかし、なぜこんなのが店頭にあったのかはちょっと不思議)。
 そして今、自室のコンポで小音量で鳴らしながら(みんな9時に寝ちゃったため)、これを書いているのだが、いやあCDで、「ラリホーラリーラリルレロン」とか、「アランもケイトもついて来いピッキーおくれるな」とか、「敵はホッピー1匹だけさシャバダバシャバダバそれ行くぞ」とか、「ドボチョン伯爵ボヨヨンヨロヨロ出てきたよ」とか、聞くことができるとは、素晴らしい時代になったものである。

 いやあの、前回今回の日記を読まれた方に念のため。転勤と慣れない仕事のストレスであっちの世界へ行きかけてるとか、そんなことは決してないですから。そんな心配はご無用ですから。気がつくと駅のホームで大声でひとり言をつぶやいてるとか、職場では手が震えて書類が書けないとか、上司に「この書類見てください」と無数の渦巻き模様が殴り描かれた紙を差し出すとか、そんなことは決してしてませんから。
 ただあの、こういうのって本人に病識があることはまれだともいいますけど、私に限って大丈夫ですから。仕事があの仕事があの仕事があの仕事があの、とにかく大丈夫ですからとにかく大丈夫ですからとにかく大


2003年5月19日(月)

 高原へ出かけて、夜空を見上げる。
 無数の星が瞬いている。
 あれが北斗七星、あれがカシオペア、すばるはそこに。
 そして今にも流れ出すような天の川。

 星々は自ら輝き、太古の光をわれわれに届ける。
 整然と並んでも見え、古人の生んだ星座の物語を示す。
 私たちは見上げるほどに心を奪わる。

 星と星との間には無限の暗黒が広がることに思い及ばない。
 夜空を覆いつくすとも見える星をいくら集めても、
 暗い夜空の一部のそのまた一部に過ぎないことに気づかない。

 満天の星空でも暗い部分の方がはるかに、はるかに多い。
 あたりまえのことだ。
 しかし太陽に代わるものはどこにもない。

 そのことに気づくのが私の仕事。
 そんな仕事をするのが私の職場。

 なのにみんなは星の輝きに目を奪われ、
 星の数を増やすことに力を傾けざるをえない。
 少しでも星の輝きが増すように汲々としている。。
 それで夜空は
 ほんの少し明るく美しくなるのかもしれないけれど。

 これはアウトリーチやバリアフリーという話ではない。
 文化の話である。


2003年6月1日(日)

▼「俺ニュース」が終了してしまった。
 すでにいろんな人がいろんな場所でいろんなことを言い尽くしているので、私如きがなにを付け加えることもないのだけれど。やはり寂しいものがある。
 更新頻度、紹介の量、スピード、セレクトのセンス、1行コメントのセンス、どれをとっても超一級品だった。イラスト系サイトのチョイスに感じるヲタ風味も絶妙だった。
 個人的にとても頼りにしていたところがあるので、これからは毎日のWebめぐりの時間が減ってしまうことになると思う。

▼いままでがまんにがまんを重ねてきたのだが(なんの?)、本日とうとう“t.A.T.u.”のCDを入手した。
 予想通りというべきか、いかにもなガールズ・ポップでなくてちょっと安心。毒っ気も少々効いていて、非常に好みのような気がする(でもたぶん次は買わない)。
 おまけのPVを見てて思い出したのだが、本邦の「推定少女」ってどうなったんだろう。秋元康プロデュースという胡散臭さはともかく、「Hey! Hey! Hey!」に初めて出たときの衝撃は、t.A.T.u.どころじゃなかったような。
 ついでに思い出したのだが、いわゆる「セーラー服」ってどこへ行ったんだろう。中学生はいざ知らず、「セーラー服の女子高生」って、気がつくとすっかり見かけなくなった気がする。
 私はその筋の人(どの筋?)ではないので惜しくも何ともないが、吾妻ひでおの時代から萌えの定番だったはずなのに、なんか不思議。


2003年6月9日(月)

▼今日の帰りに映画館の前を通りかかったのがよかったのか悪かったのか。
 あのね、なにもそんな大それたことを考えたわけではないのですよ。彼に似てるとかそんな、ね。
 たしかに私は中途半端な長身で、細くて、面長で、額も広かったりするわけですが。
 で、思わず売店で買ってしまいました。
「マトリックス・オフィシャル・サングラス・ネオ版」
 今年前厄のおっさんなのに。嬉々として。
 しかし、「完全注文販売! ネオ・コート ¥40000」の方は辛うじて思いとどまりました。辛うじてかよ。
 しばらくは映画館には近づかないようにします。(あー、でもまだちょっとほしい)

▼週末の夜になると、なおちゃんはこんなことを言う。
「なあ、お母さん、夜のサービスしてくれる?」
 夜のサービスて。
 早い話が、いつもは9時に寝ないといけないのを、10時前ぐらいにまでまけてほしい、ということなのである。
 でも、その言い方って変な誤解を招きそうな気がするぞ。絶対学校で言うんじゃないぞ。
「昨日、お母さんに夜のサービスしてもろてん」とか。
 お母さん学校いけなくなるから。PTAで後ろ指さされるから。


2003年6月13日(金)

▼どうしてこう仕事って、いちどきに押し寄せてくるのだろう。もっとこう、まんべんなく、安定して「やや忙しい」レベルで毎日推移してくれればよいものを。
 この土日は実家へ出かけるので、今日は会社のノートパソコンまで持って帰ってきちゃったよ。うちにはデスクトップしかないし、そんなもの実家に持って行けないので。

▼柴門ふみはもうたくさんだと思っていた。
 もちろん奇想天外社版の『ライミン・フーミン』は持っているし、『p.s.元気です!俊平』はヤンマガで楽しみに読んでいた。その後も、『東京ラブストーリー』は面白く読んだし、『同級生』も、『35歳』も、きちんと単行本を買って読んだ。
 けど、いつの間にか、もういいや、となっていたのだ。
 で、小説の話。
 『鉄道員』と同時に直木賞を取ったと聞いても、どうせそんなフーミン系だろうと敬遠していた篠田節子『女たちのジハード』(集英社)を読んだ。
 (97年上半期の受賞だからもう6年になるのか。いやあ古い本の話で申しわけない。でも、ハードカバーが古本屋で百円だったし。)
 正直に言おう、とても面白かった。
 OLが主人公で、しかも恋愛にかかる話が中心を占める短編集なのだが、よくある恋愛小説のようではまったくない。ネオ・ハードボイルドの骨法に則した文体と技巧を用いながらそうは感じさせずに、読んでいて元気が出てくるような物語集である。ギャグもなければ喜劇ですらないのに、ストーリーのひねりの部分で見せる、作者のユーモアのセンスも特筆に値する。最初は何を気取ってやがんだか、と思っていた書名も、読み進むうちにまさにふさわしく思えてくる。
 うじゃじゃけた恋愛小説に食傷気味の貴女にも、胸のすく物語に飢えている貴兄にも、これはちょっとおすすめである。
 今となっては文庫本で手に入ると思うので、よろしければそちらでどうぞ。

▼夜もふけたころ、なおちゃんが話しかけてきた。
「フルーツバスケット、略して‘フルバス’」
 そんなこと言われても、あそうですか、の世界である。なんだか言葉を略すのに凝っているらしい。
 すると、またなおちゃんが言った。
「運動会で転んで、たんこぶできたのだーれ」
「なんじゃそら」
「略して‘うんこたれ’」
 そんなん原形とどめてないがな。略してって、そんな略し方したらいっこもわかれへんがな。
 そんななおちゃんは、笑っているお父さんを尻目に、
「おやすみなさい、略して‘おやさい’」
 とか言いながら、床をのべてある二階へ上がっていったのだった。

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