筆先三寸/むしまる

前世紀の末ごろより、ネットの片隅で「筆先三寸」という雑文サイトを運営していましたが、ISPのHP公開サービスが終了したため、旧サイトのコンテンツをnoteに移転しました。 新しい文章も増やしていきたいので、よろしくお願いします。 (ちなみにAmazonアフィリエイト参加中です。)

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  • シン・エッセイ・雑文

    「筆先三寸」移転以降の雑文やエッセイをこちらに残していきます。 レビューや書評、真面目なものからくだけたものまで、長短もあまり考えずに書ければと思います。

  • シン・フィクション・創作

    「筆先三寸」移転以降に書いた創作物をまとめました。硬軟長短いろいろ雑多にため込んでいきます。

  • マジエッセイ

    私が書いた少し真面目なエッセイです。楽しんでいただけると幸いです。

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    私が書いた少し真面目な創作物です。楽しんでいただけると幸いです。

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    「筆先三寸」の過去日記です。少しでも面白がっていただけると幸いです。

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「やぎさんゆうびん」の謎

本作は、1999年7月23日に【講座:ペンとともに考える】の第1作として公開したものである。  まずここで、「やぎさんゆうびん」(作詞:まどみちお)なる童謡の歌詞を提示しておく。  1 白やぎさんからお手紙着いた    黒やぎさんたら読まずに食べた    仕方がないのでお手紙書いた    さっきの手紙のご用事なあに  2 黒やぎさんからお手紙着いた    白やぎさんたら読まずに食べた    仕方がないのでお手紙書いた    さっきの手紙のご用事なあに         

    • お父さんはつらいよ

       金曜日の深夜。いつものように残業で帰りの遅くなった宮田秀夫は、ダイニングで夕食をとっていた。すでに風呂もすませたらしい妻の初枝が、パジャマ姿のままコーヒーカップを持って向かい側の椅子に座った。 「遥香がね、いじめられてるみたいなの」  初枝の言葉に、秀夫は箸を持つ手をとめた。 「今日の夕方、思いつめたような顔をしてるから、わけをきいたら、泣きながら話してくれたんだけど、かなりひどいみたい」  秀夫は天井を見上げた。二階の遥香の部屋がある方向だ。 「かわいそうに。そんなにひど

      • 反魂香

         気がつくと、濃霧のように視界を覆っていた煙が、次第に薄らいできた。薄紫の煙の向こうに人影のようなものが現れて、見慣れた女性の形を成していく。 「由紀恵」  私は驚愕しつつ、どこか懐かしい思いを感じながら、妻の名を呼んだ。  リビングのテーブルには、体を丸めて眠る猫の姿をした香炉がひとつ。香炉からは、清々しいような甘いような香りのする煙が一筋、ゆっくりと立ち昇っていた。  香炉を囲むように四本の蝋燭が灯されていた。それだけの明かりで、いつものリビングが薄暗く神秘的な雰囲気に包

        • 一刀斎異聞

           天正十九年、伊藤一刀斎景久は神子上典膳に一刀流の道統を与え、自らは真に武術を極めるため、小野善鬼を連れて大陸へ渡る決心をした。そして、柳生石舟斎の計らいで、朝鮮に出兵する浅野幸長の軍に紛れ込み、二人は海を渡ることに成功する。文禄二年、一刀斎は日明の戦が途絶えたのを機に明に渡り、中国武術の総本山である嵩山少林寺に到着する。達人たちとの交流、挑戦者との果し合いを経て、一刀斎は世界の武術を究める決意を新たにするのであった。 一  下総国小金ヶ原――  朝靄の立ち籠める平原に佇

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        「やぎさんゆうびん」の謎

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          シャーペンの話 その1

           ぼちぼち文房具の話もしていこうということで、シャーペンの話をする。  シャープペンシル。英語ではメカニカル・ペンシル、メカニコーペンソーである。中高生には必須の筆記具であり、最近は各社より高機能をうたう製品がいろいろ出ているので、一部ではブーム視されている。  というところで、今回は初回にふさわしく、パイロットの大人気MP、S20とS30に話を絞る(オレンズやクルトガはまた今度)。  上がS20(ダークブラウン)、下がS30(ディープレッド)である。どちらも木軸で、サイ

          シャーペンの話 その1

          紅蓮の炎、群青の月 最終話

          14  桃太郎は苛立っていた。髭切と珠は手に入れた。その二つがあれば鏡の所在は自ずと判明すると思っていた。そして鏡を破壊する。頼光や綱の子孫を殺すのはその後でじっくり取りかかればいいはずだった。  しかし、今目の前にある刀と珠は、微動だにせずただそこにあった。 「雉よ。三種の神器は互いに指し示し合うのではなかったのか」  雉牟田は桃太郎の傍らで平伏していた。 「調べました限りでは、そのはずでございます。誠に面目なく」 「貴様の面目などどうでもよい。こいつらに鏡のありかを吐か

          紅蓮の炎、群青の月 最終話

          紅蓮の炎、群青の月 第五話

          12 「でかした」  雉子牟田の報告を聞いて、桃太郎は満足げに微笑んだ。 「苦労しました。土御門や倉橋には伝わっておらず、野に潜んでおるとは」 「鏡もそこにあるのか」 「そこまではなかなか。鏡自体が姿を消したのが桃太郎さまと同時、つい先だってのことですので。しかし、安倍家代々に伝わるという珠がございます。おそらくはそれが手掛かりになるかと」 「行くぞ。鏡の行方はいかようにもなる。安倍が知らずとも、頼光一味が血眼になって探すだろう。目の前でさらうか、奪い取ればよいのだ。それま

          紅蓮の炎、群青の月 第五話

          紅蓮の炎、群青の月 第四話

          9  桃太郎たちは、敦の動きを追って西東京のホテルに投宿していた。雉牟田の定宿でもあり、名の通った高級ホテルだった。 「あとは碓井貞光の末裔か。居場所はわからんのか」  スイートルームのソファに座った桃太郎が忌々しげに呟いた。 「碓井氏は、碓氷峠、あるいは相模の国を拠点としておりましたゆえ、坂田や卜部と同じとすれば、神奈川県周辺かと」  雉牟田が畏まって答える。 「それだけでは見つけようがないではないか」  桃太郎は傍らに控える猿田と狗美を見た。 「これまでのところでは、鬼

          紅蓮の炎、群青の月 第四話

          紅蓮の炎、群青の月 第三話

          6  日曜日の昼下がり、玄関のチャイムが鳴ったので敦が出ると大男が立っていた。轟天丸と見まがう分厚い胸板で鬼の仲間かと思ったが、男はきちんとしたスーツを着て眼鏡をかけていた。 「お父さんはいるかい」  スーツは地味だったが、冷たい目と右の頬に走る大きな傷跡は、男が正業に就く者ではないことを語っていた。 「え、あ、いや、ちょっと待ってください」  敦はリビングのソファで横になってゴルフ番組を見ている父親に声をかけた。 「父さん、ちょっとまたこれが」  敦は自分の頬を人差し指で

          紅蓮の炎、群青の月 第三話

          紅蓮の炎、群青の月 第二話

          3 「四角(しかく)四堺(しかいの)祭(まつり)は滞りなくすんでございます」  陰陽寮を預かる安倍晴明は、右大臣藤原道長のもとへ疫病退散の祭祀の報告に訪れていた。晴明はこの時すでに七十代半ばを迎えており、久しぶりに都を挙げての祭事を任された疲労の色は隠しようもなかった。  四角四堺祭は、前漢の大学者、董仲舒(とうちゅうじょ)の書物にある。疫病や疫神、災いをもたらす魑魅魍魎による都への侵入を防ぎ、病魔や災厄を域外へ退散させるために執り行う祭事である。天子の住居の四隅と都の四方

          紅蓮の炎、群青の月 第二話

          紅蓮の炎、群青の月 第一話

          あらすじ  ある日、高校生の渡辺敦の前に、轟天丸と姫夜叉と名乗る二匹の鬼が現れた。敦を守るために鬼の里から来たという。  平安時代中期、鬼は京の都で人間と共存していた。しかし藤原道長は、陰陽師安倍晴明を通じて、桃太郎という悪鬼に鬼退治を命じた。  京の都は地獄絵図となった。見かねた源頼光と四天王が、蘆屋道満の力を借りて、不死身の桃太郎を千年の封印に閉じ込めた。  赤鬼と青鬼は敦に向かい、千年の封印が解けて桃太郎が蘇り、渡辺綱の子孫である敦に復讐しに来ると話した。  敦は鬼とと

          紅蓮の炎、群青の月 第一話

          しろなすび

          あらすじ  文房具商社の課長である沢田は最近妻を亡くしたが、それ以来、身の回りに真っ白な茄子のような生き物が現れるようになる。その生き物は神と名乗り、どこにでも現れて沢田に話しかけてきた。  ある日、沢田のもとへ佐々木という課長補佐が転勤してくる。傲岸不遜で上司を上司とも思わない佐々木は、沢田を軽んじて会社の仕事を引っ掻き回すが、暴力事件に巻き込まれて残酷な死を遂げる。白茄子は自分が殺してやったという。  他にも不思議なことが起きるが、ある夜、白茄子のヒントで妻とのやり取りを

          現代短歌の楽しみ(歌集を紹介するよ)

           「現代短歌」とはいうものの、現代の人にあまりなじみのあるものではない。  おおかたの人は、せいぜい「あーね。五七五七七のあれね」と言うくらいのもので、それらしい一首を覚えているわけでもない。そもそも私がそうだ。三十一文字を口に出せるといっても、百人一首をいくつか覚えていればいいい方だろう。そしてそれは「和歌」であって、現代短歌ではない。  とはいえ、俵万智の『サラダ記念日』を思い出すことができれば、現代短歌はぐっと身近になるだろう。  この味がいいねと君が言ったから七月

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          現代短歌の楽しみ(歌集を紹介するよ)

          「うさぎとかめ」の謎

          【講座 ペンとともに考える 4】 1.はじめに まず例によって、大元となる歌詞を提示する。  まず誰もが気づくであろう最大の疑問は、二連目にある。 「亀はどうしてうさぎに競走を挑んだのか」という疑問である。  「歩くのが遅い」と言われて不愉快だったのはわかるが、なにしろ亀である。なにをどうしたところで、競走でうさぎにかなうわけがない。  ここはこう言い返すべきではなかったか。 「なにこら、お前なんか背中ふわふわやないかボケ。アブに刺されても泣くくせに、なめたことぬかすなア

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          「うさぎとかめ」の謎

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          ある夜の出来事

           深夜一時。グレートタワーと呼ばれるマンションの一室。  由貴は肩で息をしながら、山岡の死体を見下ろしていた。この日のために用意した細いナイロンザイルは山岡の首に巻きついたままだ。目を見開いたままの山岡の顔は、赤紫色にうっ血し、醜く膨れ上がっていた。  水沢由貴と山岡信夫が出会ったのは、もちろん仕事の現場だった。  由貴が課長のお供で、山岡のコンサルタント会社に出向いたときに見初められたのだ。  その晩の接待で早速口説かれたが、それは宴席の座興のようなもので、その日はそれきり

          「筆先三寸」日記再録 2010年1月~3月+α

          旧サイトの日記はこれで最後になります。 2010年1月5日(火)  新年最初の更新ということで、みなさま本年もどうぞよろしくお願いいたします(うーん、こないだ不幸があったばっかなもんで、さすがにおめでとうは言いにくいなあ。職場でも言われる分には気になんないんだけど)。  HPのJornada720こそ知りませんが、テキスト打ちのためだけに、モバイルギアIIやシグマリオンIIIというモバイル端末の名機を使ってきた身なれば、ポメラはやはり気になるマシンだったわけです。  し

          「筆先三寸」日記再録 2010年1月~3月+α