「筆先三寸」日記再録 2004年1月~3月


2004年1月1日(木)

 あけましておめでとうございます。
 昨年は、人事異動だのマジ鬱だので更新もさっぱりでしたが、今年は心を入れ替えていろいろがんばってまいりたいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。


2004年1月2日(金)

▼てなわけで、年末から家族そろって私の実家に帰っておりまして、本日帰宅したわけですが、やっぱり自宅はほっとしますな。

▼実家ではおせちをつついて酔っ払う以外に何もすることがないので、本を1冊読みました。
歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』(文藝春秋/1857円)。
 「このミス」1位、「本格ミステリベスト10」1位、「週刊文春」2位という、去年の国産ミステリでは大評判の作品ということで手に取ったのですが、一読後、思わず放り投げてしまいました。「なんじゃそりゃあ」と叫んで。
 いや、あの、小説そのものは面白いですよ。いんちき商法や保険金殺人がらみの軽ハードボイルドとしては。ヤクザの話や人探しのサブストーリーもよくできていて。
 でもなあ、このオチはなあ。読者としては確かに仰天して、あれこれの伏線を確かめるためにページを繰りなおしたりもしたわけですが、こういうオチの場合、読者が「そんなこと考えもしてなかった」というだけではよくないと思うのですよ。依井貴裕の『歳時記』やサイモン・ブレットの『死のようにロマンティック』みたいに、「浦島太郎だと思って読んでたら、桃太郎だったのか!」と、読者が頭の中で組み立てながら読んでたストーリーがぜんぜん違ってたというふうな、物語がまったく違って見える驚きが必要だと思うのですよ。でもこれは、読者は仰天しこそすれ、ストーリーはそのままだからなあ。なんだかなあ。
(以下ネタバレ。未読の人は無視のこと)ストーリーはそのまんまなのに、「主人公がマイク・ハマーだと思ってたらジェイク・スパナーでした」ってだけで、年間ベストの1位、1位、2位って、そんなことでいいのか日本のミステリ界。


2004年1月4日(日)

 ずいぶん休んだものの、明日から仕事かと思うと、もうほんと、げんなりというかぐったりというか。「サザエさん症候群」どころか、こっちはナージャ見てるときからブルー入ってるっちゅうねん。なんとかもう100連休くらいさせてもらえんもんか。
 それはともかく昨日のことである。昼前に夫婦して年賀状を整理していたのだが、サイが、返信用にと印刷しておいたやつを手にとって言った。
「これ、2003年元旦てなってるけど」
 がびーん。
 やってしまいました。上司同僚友人親戚みんな込みで約150通。
 全部、裏面に「2003年元旦」って入ったやつを送ってしまいました。
 ずいぶん前に、こんな雑文まで書いておきながら、ほんとに自分がそんなことをやってしまうとは。しかも、投函までしてしまうとは雑文以上の間抜けである。
 私は今年本厄だというのに、こんなことでいいのでしょうか。新年早々、年賀状で笑いを取りに行ったということで、よしとしなければならないのでしょうか。
 さてここで問題です。今回の私の失敗は、「2003年のスカタン納め」と考えるべきでしょうか、「2004年のスットコドッコイ初め」と考えるべきでしょうか。
 正解の方にはもれなく、「来年の年賀状に“2004年元旦”と書いてしまう呪い」をプレゼント。


2004年1月8日(木)

▼この記事を読んだ瞬間、「ああ、やっとスローガラスが……」と思った人は、筋金入りのSF者。もしくはただの年寄り。[メンガーーのスポンジに電磁波を閉じ込めたというニュース。こういうの。2023年8月26日註]

▼なんか今日の午後から、びっくりするくらいアクセスが増えています。うちの「森のくまさんの謎」が、どこかタイソなとこで紹介されてるみたいだったのでで、どいつじゃーとネットをうろうろしていたら判明してしまいました。
 まず最初がこちら。どなたかの質問にどなたかがリンクつきでレスを返しました。
 ここから、個人ニュースサイト系へと飛び火します。まず、「俺-archives」さん(1/7)、そこから「雪花乱舞」さん(1/7)、それを見て「choiris~ちょいりす~」さん(ちょいニュース・1/7分)、そしてとうとう大御所「カトゆー家断絶」さん(1/8)へ。
 まるでドミノ倒し。まるでわらしべ長者(アクセス数の)。まあ、こんなアクセス数は今日明日だけの話でしょうが、リンクのドミノ倒しで、最後に大物をゲットというのが(個人的には、ていうか他人事のように)面白くて、紹介してみました。よろしければ、このあまりにできすぎた(そして恐ろしくスピーディーな)リンクの流れをごらんください。


2004年1月12日(月)

▼去年のクリスマスにサンタさんにゲームキューブをいただきまして、いまさらながら、一昨年「ファミ通」のクロレビで奇跡の40点を獲得した「ゼルダの伝説~風のタクト~」をプレイしています。
 いやあもう、評判にたがわず面白いの何の。家族と仕事さえなければ、三日三晩といわず延々サルのようにやってますな、これは。
 昔取った杵柄といいますか、今も取り続けている杵柄といいますか、まだまだ子どもたちよりアクションの腕が立つお父さんですので、ともちゃんなど、進みにくいところに差しかかかると、黙って私にコントローラーを差し出してくれます。「おとうさん、どこでもいけるなあ」と言って。父親の面目躍如といったところです。ていうか、そんな面目でいいのでしょうか。なおちゃんは、3年生のプライドが許さないのか、かたくなに自力でやろうとするのですが、これも結局スカタンなところで落っこちたり、ザコキャラにやられたりして、父親にボロクソに言われてへこんでおります。
 しかし、アップになったリンクのかわいさといったらありません。しばらくものすごい勢いで燃えそうです。

▼ゲームといえば、昨年「Virtua Fighter 10th Anniversary -Memory of Decade-」というバーチャファイター10周年記念本を買いまして、これについてるDVDの熱いこと。
 10年前の第1作から、現在稼動中のEvoまで、カリスマプレイヤーのインタヴューと、歴史的な名シーン、名バトルで構成されているのですが、同じ10年を付き合ってきた身なれば、アドレナリンが沸騰するような中味となっています。
 で、今年に入って1年以上ぶりに、セガールばりの「読み投げウルフ」めざして復帰したのですが、若造に乱入されては瞬殺されています。年寄りは大切にせえっちゅうねん。

▼「動画ファイルナビゲーター」にまでリンクされたわらしべアクセスは、たった2日であっさり復旧しました。つまんねーの。


2004年1月16日(金)

▼毎回、回を重ねるごとにマスコミの扱いが大きくなるような気がする芥川賞・直木賞ですが、昨夜、2003年度下半期の受賞者が決まりました。
 私は、京極作品を除いてどれも読んだことがないのでよくわからないのですが、きっと優れた作品なのだと思います。でもどうせ、「小娘のダブル受賞たぁ、あざといことをするもんだねぇ」などという言説が巷にあふれるのでしょう。はーあ。
 そんなことはともかく、私が何より驚いたのは、両賞ともダブル受賞で、ここしばらく計4冊の本が世間の本屋で平積みになるというのに、文藝春秋社の作品がひとつもなかったことです。こないだまでは、(もちろん誇張ながら)「いい作品でも他社本は落として、その作家には文春で書かせてから賞を取らす」みたいな言われ方をしていたのに。どういう風の吹き回しでしょうか。

▼我が家は、朝から晩まで二六時中テレビをつけていながらろくに見ないという、典型的な昭和の家庭のような生活を送っています。だからいくら評判のドラマでも、連続してきちんとみるのは年に一作あるかないかというところです。
 というところを踏まえて、本日のサイの言葉。
「このごろいろいろドラマ見てんねんけど、やっぱり、『白い巨塔』以外、見る気になれへん」
 今シーズン代表は、財前教授で決まりのようです。ま、たしかに唐沢寿明の健闘は評価に値すると思います。
「昨日もな、『エースを狙え!』見てんけど、なんかもひとつやった。宗方コーチもあかんし、音羽さんも、もっといじわるやなかったらあかんわ。藤堂さんはまあまあかな。尾崎さんはわりとよかったと思う」
 そんな印象はともかく、高校生の登場人物に向かって、40歳がなぜさんづけ。
 これこそまさしく、40±5歳女子の業とでもいうべきでしょうか。

▼「森のくまさんの謎」によるわらしべアクセスは、リドミによると、1月8日が1326アクセスで226位、1月9日が、1717アクセスで164位で、結局これがピークでした。もうこんなことはこの先もないでしょう。
 ちなみに、「読我新聞」では、1月9日のコメントとして、「本日は、特に大きく上昇した銘柄はありませんでした。」となっておりました。それまではずっと1000位くらいだったのに。ふーんだ。


2004年1月23日(金)

▼毎朝7時には子どもたちをたたき起こす。
「なおちゃーん、起きてやー、ともちゃーん、おはよー」
 てな感じである。
 かなりしつこく叫んだりゆすったりしないとならないのだが、やがて子どもたちはもぞもぞと眠そうにしながら目を覚ます。
 なおちゃんはそのまま階段を下りて、台所のストーブの前にしゃがみこむ。
 問題はともちゃんである。抱っこして居間のコタツまで運んでやらないといけない。
 とくに夜更かししたわけではないのだが、今朝はどちらも普段より眠そうだった。
 ともちゃんは、ちょっとでも時間を稼ごうと、目を閉じたまま「おかあさんがいい」とぬかすので、運搬係はサイと交代することにした。なおちゃんも眠そうだったので、久しぶりに「抱っこしたろか」と声をかけるたのだが、生意気にも目をこすりながら、
「んんー、ええわ」
 と言って、一人で立ち上がって階段を下りていった。
 ついこの間までは、抱っこにせよおんぶにせよ、照れながらでもさせてくれたのに。
 ええわ、て。あっさりと。
 これからはそんなふうに、どんどんお兄ちゃんになっていくのか。
 お父さんはちょっとさびしいぞ。

▼今日の昼休み、お弁当をかきこんで、そのショップまでダッシュした。
 しかし、ない。今日が発売日だというのに、棚にはそのパッケージがひとつもない。
 私は、背中に冷や汗が伝うのを感じた。まさか、今日手に入れられないとは。
 念のため、棚を離れてレジの前まで行ってみた。
 すると、私が購入しようとしていた商品のパッケージを手にしたサラリーマンがずらりと並んでいるではないか。いくら昼休み時間とはいえ、混んでいる上に全員サラリーマンというのも、ちょっとびっくりである。
 こいつらのせいで売り切れたか、と舌打ちしかけると、レジの背後にその白い箱が山積みになっているのが目に入った。ラッキー!
 私は手ぶらでレジに並んで、順番がきたときにその山を指差した。
「それをくれ」
 トレンチコート姿のまま、ちょっと斜に構えて、なるべく渋く言ってみた。黒人のピアニストに“As Time Goes by”をリクエストするボガートのような感じである(私の脳内で)。
 そんでもって、そんでもって、「逆転裁判3」ゲトズザー!
 行き同様、ダッシュで職場へ帰って昼休みも終了間際にギリギリセーフ。やりー。

 しかしである。昼休み山になってたサラリーマン諸氏に告ぐ。
 いい大人が、発売日にゲームボーイソフトを手に入れるのに必死になって、そんなことでいいのかこのご時世に。路上で空の酒瓶を抱いたまま凍死していく年老いたホームレスや、日本の誇りと小泉の見栄をかけてイラクへ赴く自衛官のことを、少しでも考えたことがあるか。
 なにが「待った!」か。なにが「異議あり!」か。
 えーい、鉄拳制裁だ!(自分に。そして鼻血)


2004年2月7日(土)

▼しかしまあ、公務員になって15年、何度も終電なくなるまで仕事することになるとは思わなかった。
 今の職場は、予算や議会の時期にはあたりまえとのこと。あたりまえて。

「逆転裁判3」ですが、おかげさまで通勤電車では至福の時間を過ごさせていただいております(それで更新も途絶えております)。
 もちろん「2」よりよくできていると思います。ミステリとしてはともかく、プロットもずいぶん複雑になって、法廷以外の場面でも調査や謎解きが楽しい。「2」が中短編集なら、「3」の各話は長編っぽいかな。
 それに、「2」ではわりといらいらした、「これが‘ムジュン’本体の証拠なのに、なんでそっちを先につきつけないといけないんだよ」みたいなところもなくなっています。ムジュンと証拠の対応がきっちりしたという感じでしょうか。ただそれだけのことですが、すごく快適です。
 ただ残念な点もいくつか。
 ・微妙に謎解きが簡単になった。今作は会話やモノローグに出てくるヒントが親切すぎて、次に何をすべきか迷うことがない。ていうか、行き詰まることがなくてちょっとさびしい。
 ・「1」や「2」を踏まえすぎ。謎の背後にかつての事件が! というのは、ファンにはぞくぞくするところですが、「3」からはじめた人にはどうかなあという気がします。もちろんちゃんと説明もあって、「3」が初めてであろうと問題ないのですが。
 ・グラフィックがずっといっしょ。静止画の枚数も増えたし、動画っぽい処理も増えて、力が入ってるのはわかるのですが、法廷シーンやメインキャラの画がまったく変わりなしというのは、せっかくの新作なのになんか釈然としません。
 ・システムが「2」のまま。相変わらず操作系が快適なのはいいのですが、「1」から「2」に移行するときに生まれた「サイコ・ロック」みたいな新しいものは、まったくありません。FFのように、新作のたびにめちゃめちゃ変える必要はないと思うのですが、せっかくの「3」なんだし、なにか新しいシステムを取り入れてもよかったのではないでしょうか。固定ファンでも喜ぶような。2D格闘ではそのへんの工夫に対してすごく貪欲だったカプコンなんだし。

 とにかく、とってもおもしろいッス! もう少しでクリアっぽいッスから、がんばるッス! だから、40だからって、ムチだけはかんべんしてほしいッス。


2004年3月4日(木)

 おとといの夜からともちゃんは、鼻水でずるずるで風邪気味のようだった。薬を飲んで、いつもより早く8時半に寝た。本人も多少はしんどいらしく、「あしたはおそとあそびはやめとく」と言っていた。
 そして昨日の朝、ともちゃんはサイに言った。
「ちゃんとおちょうめんにかいてや。おそとあそびはいきませんって。ともちゃんがせんせいにいうだけやったら、あかんってゆわれるかもしれんから。でもサッカーはしますってかいてや」
 水曜日は保育園で開かれているサッカークラブの日で、ともちゃんは大好きなのである。しかし、サイは言う。
「そんな勝手なことを。それだったら自分で言いなさい」
「おちょうめんにかいてくれな、ともちゃんほいくえんいけへんもん」
 登園拒否をたてに母親を脅すとは、この頑固ものめ。先が思いやられる。この先ぐれぬことを祈るばかりである。


2004年3月7日(日)

▼テレビの『砂の器』は渡辺謙が必要以上に渋いですが、松雪泰子と京野ことみの役は逆だろ。

▼最初は、親子ともども「わけわかれへん」と眉をしかめて見ていた(なら見るなよ)TVアニメ版の『ボボボーボ・ボーボボ』ですが、最近はむやみにおかしく思えてきて、腹が痛くなるほど笑いっぱなしです。なにかが吹っ切れたようです。吹っ切っていいものなのかどうかはわかりませんが。とにかく、主題歌がメチャメチャかっこいいので、それだけでもうOKでしょう。

▼最近、「まぎゃく」という言葉をよく耳にしますが、「正反対」ではなぜいけませんか。とくに書き言葉で、「真逆」と書く馬鹿がいますが、あれは「まさか」としか読めません。これも当て字ですが、「兎に角」と同じぐらい明治大正の小説ではよく出てくるように思います。親の遺言とかで、どうしても「正反対」と書くのがいやなら、「対蹠的」とか「対称的」があるじゃないですか。

▼ひと月ほど前の日記で書いた「逆転裁判3」は、結局その翌週にはめでたくクリアしました。
 しかしまあなんですな、最終話のエピソードなど、複雑でドラマチックなのはよいとしても、ミステリとしてはキズだらけもよいところで、もうなんかむちゃくちゃになっておりました。
 それでもゲームとしてはたいへん面白くて、私はやっぱりお気に入りなのですが、うーん、次からはやっぱりミステリ作家をスーパーバイザーとかに迎えたほうがいいかもです。

▼わが家に電波時計(掛け時計)がやってきて、もうずいぶんになる。
 それまで、わが家には正確に時刻を表示している時計はひとつもなかった。時計というものは、すべからく「やや進んでいる」状態たるべしとするサイの意向を反映して、居間の掛け時計は7~8分、台所の掛け時計は約5分、寝室の置時計は10分弱、私の部屋の置時計は3程度と、すべての時計が違う時刻を指していた。私の腕時計ですら常に1分ぐらいは進んでいるのである。
 だから、私たちは常に「正確な時刻」というものを、推定で判断していた。「7時15分」という時刻を示す時計を見ては、その時計によって、「7時8分ぐらい」とか、「7時10分ぐらい」などと判断していたのである。めんどくさいようであるが、慣れてしまえばなにほどのこともない。そんな煩雑さより、とくに平日の朝などは、時計を見た一瞬に感じる、「お、もうこんな時間か」という驚きによってもたらされる、早め早めの行動への動機付けが大きなメリットとなるのである。
 そんなところへ電波時計である。こいつの正確さは異常である。ていうか、それが正常なのだろうが、私の考える時計というのものの範疇を超える正確さなのである。とにかく、秒針が常に正しいというのが気持ち悪い。あらゆるテレビ番組は、うちの時計の秒針が0秒を指した瞬間に始まるし、NHKの時報のときなど、画面上の秒針ときっちりシンクロするのである。
 実は、これに最初とまどった。いつも進んでる時計しか見てこなかったために、時計の指している時刻がとっさに読み取れないのである。
「えと、7時25分か。てことは5分進んでるからまだ7時20分ぐらい。って、ちゃうちゃう。これはこのまま7時25分でええねん。えー、もう25分かいな」
 時計は1秒たりとも進んでないのに、「進んでいるもの」として見てしまうのである。だから、頭の中で行ったり来たりして、見たままの時刻を飲み込むのに余計な時間がかかったりしていた。
 さすがに、何ヶ月もたつともう慣れたけれども。今や時計を見上げるたびに、日本中がこの時刻かと思うとうれしくなるくらいである。

▼というわけで昨日、とうとう電波腕時計を買ってしまった。
 前からほしいとは思っていたのだが、昔はアンテナの張り出した妙にゴツイのばっかりだったので躊躇していたのである。ところが、最近は金属ケースの薄型で、ただのビジネスウォッチにしか見えないやつも多く出てきていて、やっと手を出す気になった。おまけにこいつは電池交換不要のタイプである。その上10気圧防水となると、これはもう、半永久型ウルトラスーパーメンテフリーウォッチとしか言いようがない。ありがたい話である。
 と、こんなのを買ったのには、実はわけがある。
 ここだけの話、ロレックスは狂うのである。自動巻きで日差数秒というのは、さすがに恐ろしい精度であるとは思うのだが、根が無精者である私がしていると、気づいたら数分進んでいたりするのである。息を切らして、あわてて駅のホームに駆け込むと、めざす列車の一本前のやつが停まってたりするのである。
 それに止まるし。連休なんかで二日もしないでいると、まず止まっている。そんなときは、決まって月曜の朝から時報とにらめっこする羽目になる。
 そんでもって重いし。機械式の宿命とはいえ、仕事でキーボードを叩き続けていると、左手首にずっしりと重く感じてきて、肩も凝る。
 貧乏性だから気も使うし。なんといっても今度の時計が十個近く買える値段なので、いくら酔ってても、温泉に入るときもはずせないし、夜道なんかは無駄に警戒してしまう。
 というわけで、私は明日からストレスフリーのおニューの腕時計をはめて会社に行こうと思います。
 でもなんか心の底ではさびしい気がするんだよね。ひょっとすると、なんだかんだと文句を言いながら、そんな手間やストレスも込みで、前の時計を気に入っちゃってたのかもしれない。


2004年3月13日(土)

 父子三人で「真・三国無双3」に興じていると、トイレ掃除をしているサイから声がかかった。
「だれー、こんなとこにおしっここぼしたのー」
 なおちゃんは、コントローラーを手にしたままあわてて首を振る。
「ぼくちゃうで、ぼくちゃんとしてるもん」
 ともちゃんはと見ると、素知らぬ顔で、テレビ画面の中で暴れている孫堅を見つめている。
 私はたずねた。
「ともちゃんか? おしっここぼしたん」
 ともちゃんは、テレビを見たまま答える。
「ううん。ともちゃんちがう」
 怪しい。目が泳いでいる。私は追及することにした。なぜなら、ここで追及の手をゆるめると、私が犯人になってしまって、あとでお母さんに叱られるではないか。
「なあ、おしっここぼしたん、ともちゃんやろ」
「ううん。ちがう」
「おこれへんから。ちょっとだけこぼした?」
「ううん。こぼしてへん」
「ほんなら、ちょっとこぼしたような気がする?」
「ううん」
「んーと、じゃあ、こぼしたかもしれん?」
 すこし沈黙。
「………かもしれん」
 やっぱりおまえか!


2004年3月14日(日)

 googleの一人勝ちと思われている検索サイト業界ですが、googleでもやってない画期的な検索システムを思いついたので、ここに書く。ひょっとするとみんな思いついてるかも知れないが、それは知ったことではない。
 アイデアのきっかけは、今や猫も杓子も持っているカメラ付きケータイである。いや、猫は持ってないか。猫がケータイを持っていても、どこへかけると言うのだろう。飼い主が短縮ダイヤルを登録しておいてやれば、あの肉球でもかけることは難しくないと思うが、かけられた方はいい迷惑である。受話器の向こうでニャーニャー言われてもどうしようもない。ひょっとすると猫同士なら意思の疎通も可能なのかも知れないが、携帯電話の使い方を教えるのが大変そうである。それより杓子は持ってないだろう、ケータイ。手ないし。動かないし、しゃべれないし。ためしに私の携帯電話のストラップを杓子の首にひっかけて、ひとまとめにダイニングのテーブルに置いてみたが、半日たっても電話をかける様子はない。だからたぶん世間でも、猫や杓子はケータイを持っていないと思う。ついさっき持っていると書いておいて申しわけないが。となるとこう言い直した方がいいのか。「今や、本当は猫も杓子も持ってはいないが、猫も杓子もという慣用句を用いて表現してもさほど読者に違和感を与えることはないであろうと思われる程度に普及しているカメラ付きケータイである。」
 なんかずいぶん回り道をしたが、話を戻す。私の思いついた検索システムである。
 さて、以下のような事例ははよくあると思う。
 ・ポスターややテレビで見た有名人の名前が浮かばない。
 ・雑誌で見たモデルや芸能人が身につけているアクセサリーやバッグ、洋服の値段や名前が知りたい。
 ・写真の風景がどこなのか知りたい。
 ・映画やドラマの小道具を自分も手に入れたい。
 そこで、この「画像逆引き検索システム」の出番である。カメラで撮った画像を、サイトに上げて、名称や関連サイトを検索するのである。
 顔立ちによる人間の認証システムはすでにあるらしいので、基本的にはそれを援用する。そして、ロボット型の画像収集システムで情報源となる画像を収集して、人物の顔情報や物品や風景の基礎情報を数値化して蓄積するのである。やってやれないことはないと思う。
 検索画面はこんな感じでどうか。もちろん画像はケータイからでもアップできるようにする。

画像検索画面の例

 結構役に立つと思うので、スキルのある人は速攻で開発して特許でも取ってください。とくにgoogleの人。
 そんで、成功すれば儲かると思うので、これを見て作っちゃった人はいくらかください。きっとだよ。


2004年3月28日(日)

▼職場も含めてあちこちでサイトばれしている身なれば、ここでたとえばSODについて書くことがかなわないというのはどうも残念である。

▼本日、サイは、なおちゃんとともちゃんを連れて、お友だちの家族と野外バーベキューに行く予定になっておりました。
 子どもたちも楽しみにしていたのですが、土曜日にともちゃんが突然高熱を発して、結局お流れになってしまいました。なんてこったい。私も久しぶりに、一日一人でのんびりできると思っていたのに。なにしろ数年ぶりの39度台後半ですからどうしようもありません。
 でも、ともちゃんは熱に強いらしくて、半分ぐったりしつつも機嫌も悪くなく、土日はゲーム三昧で過ごしましたとさ。

▼今、兄弟がはまっているのは、『真・三国無双3』です。「周泰がー」、「甘寧がー」、「呂布つええー」と、あれこれ言い合いながら、交代で画面の中を暴れ回っております。
 そこで孫策使いの父としては(親父まではまってるのかよ)、基礎知識なりとも身につけさせようと、岩波少年文庫の『三国志』を買ってやったのですが、残念ながらなおちゃんですら少し難しかったようです。
 仕方がないのでお父さんが読んでいるのですが、さすが小川環樹(中国文学のビッグネーム。しかも実兄が貝塚茂樹と湯川秀樹)の訳が底本、凡百の子ども向けリライト本とは一線を画しています。本気でオススメ。

▼ついでに、ここ半月ばかりで読んだ本から。
飯嶋和一『黄金旅風』(小学館/1900円)。北上次郎があちこちで、作者の最高傑作と書いているが、それはともかくやっぱり傑作。江戸初期鎖国前夜の長崎を舞台に、キリシタンの問題や南蛮貿易の複雑な様相が絡んで、でもやっぱり話の骨格は、熱い漢のお上の無道に対する闘い。しびれました。こうなるともう、飯嶋和一には、なんとしても大塩平八郎を書いていただきたい。鴎外のもあるけどダメダメだし。
アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』(白水uブックス/820円)。消息不明の友人を探してインドを旅する若者の物語。不思議な出会いの連続と魂の放浪。湿っているようなクールなような。混乱しているような理性的なような。いかにも現代欧米文学のような、すでに陳腐なような。さらっと読んだわりには、印象深いです。
ジェフ・ニコルスン『美しい足に踏まれて』(扶桑社ミステリー/819円)。フェティシズムの深みがのぞけて興味深かった。私は女性の脚(leg)になら感動する気持ちもわからないではないが、足(foot)にこれだけ萌えるというのはさっぱりわからない。まったくもって、ミステリーは付け足しのようなもので。でも、なぜか『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を思い出してしまった。考えすぎか。
マイクル・Z・リューイン『探偵家族』(ハヤカワ・ミステリ文庫/760円)。アルバート・サムスンのシリーズはほぼすべてポケミスで読んだが、それ以来リューインなんて何年ぶりに読むことやら。たまたま手に取ったのだが、期待を裏切らず、和気あいあいのホームコメディでした。
白石一文『一瞬の光』(角川文庫/743円)。以前、『僕のなかの壊れていない部分』をけなしかけて、これを読んでからにすると書いた覚えがある。で、読んでみたところ、えーと、驚いた。すごくいい作品である。読み終わって、感動したとか泣いたとかじゃなくて、奥歯とか肩口とかに力を込めたまま、どすどすとそこいらを歩き回りたくなった。そんな表現じゃ何も伝わらないと思うけど。
 主人公は三十八歳、これまで女に不自由したことがないという美形で、IQ190の東大法学部卒。しかも超のつく大企業のエリート(出世頭)で、社長にも直接目をかけられている。恋人は社長の姪の、料理の腕も抜群なすっごい美人。そばにいたら絶対カンチョーしてやりたくなるようなキャラである。が、そんな設定でなにが文学じゃと思うのが素人の浅はかさ、最後には、「生きるとは」、「愛するとは」、「戦うとは」みたいなこっぱずかしいテーマにまでよく届いている。設定が設定だけに北沢拓也読んでる気がする瞬間もあるけど、それはむにゃむにゃ。

▼そんなことより、今私の気持ちを占めているのは、本日なおちゃん宛に来た一通の封書である。こんなものが同封されていた。
「デュエル・マスターズ バトルアリーナ スプリングチャレンジバトル2004 大阪大会 レギュラークラス 参加証」(ここで、おっと思わなかった人は、以下読まなくてよろしい。ていうか読んでも意味わかんないよ)
 コロコロコミックで以前告知を見かけたのでエントリーしていたのだ。
 それがなぜ私の心を悩ませるのか。連れて行く手間を考えて気が重いのか。否否、断じて否。
 なおちゃんに、せめて一回戦は勝たせてやりたいのである。そのためには、あとたった一週間で、デッキをガチレベルにまで磨き上げないといけない。手元には、親子兄弟で買いためたカードがほぼ千枚以上あるので、これを土台に勝てるデッキを組むのである。しかし、交換や単品買いで集めたりはしていないので、重要なカードがきちんと揃っていない。
 そんなこんなで、頭を悩ませているのである。
 なおちゃんは基本的に、除去コンベースの黒青デッキで行くという。しかしざっと見たところ、ともちゃん相手の遊びデッキのためチューンが甘い。ドローはアクアンのみで、屑男もない。除去といいつつ、デモハンすら4枚確定のはずが2しかない。バイスやスラッシュもない。イヤリングもほとんどない。
 困った。せいぜいカオス・ワームだけでは黒の名がすたるではないか。9弾のロストチャージャーと生命剥奪はどうか。それよりまず青を少し足しておくか。ついでに緑によるマナブーストもいるだろう。今回赤白が強化されたようにみえるのは私だけか。そもそもあのペトローバとかサウザンド・スピアってありなのか。
 というようなことを考えてて頭が痛いのである。こんな話を読まされるほうも頭が痛いだろうが。
 あと一週間。ちょっと本気でデッキ・レシピを考えてみます。

▼てなことをいいながらも、この一年間というものそれだけにかかりきりで仕事をしてきた、とあるネットワークシステムが今週本格稼動を迎えます。そんなの初めてなもんで、ちょっとドキドキです。 インターネットに公開する瞬間には、やっぱり船の進水式のつもりでサーバにシャンパンの瓶とかぶつけたらいいのでしょうか。


2004年3月30日(火)

▼ でじこ見て 素で笑いをり 四十の春     虫丸

 ていうか、めっちゃ字余りの上に内容的にちょっと鬱にょ。

▼今日と明日は、学校でのいわゆる留守家庭児童会もお休みということで、「なおちゃん試練のおるすばん二番勝負」の予定でした。
 ところが、お義母さんが救援に来てくれるということで、急遽ともちゃんも保育園をお休みすることになりました。なおちゃんもこれでひと安心です。
 それでもやっぱり、相手はおばあちゃんです。ダイナミックな娯楽など望むべくもありません。子どもたちにとって、家の中で(天気も悪かったし)日がな一日まったりすごすというのは、やはり退屈だったようです。
 それで、帰宅したサイにともちゃんはこう言ったそうです。
「ともちゃん、やっぱりあしたほいくえん行く。デカレンジャーのすいとう持って行きたいし」
 かなり退屈したようです。しかも、日曜日に買ってもらった新しい水筒を、お友だちに自慢したくてたまらないようです。
 さあ、困ったのはなおちゃんです。
「ともちゃん、お休みしてーやー。さみしいやん、なあー」
 必死の懇願体制です。でもともちゃんは、
「えー、だってたいくつやもん。すいとう持って行きたいし、ほいくえん行く」
 と、にべもありません。
 でも、結局のところ、「なあー、さみしいやん、なあー」とすがるなおちゃんに折れたようです。
「わかったわ。お休みするわ」
 サイによると、ともちゃんはかなり憮然としてそう言ったそうです。大喜びするなおちゃん。
 どっちがお兄ちゃんか。

▼デュエルマスターズの話。(専門サイトみたいな話ですまん)
 昨日も帰宅は遅かったのだが、途中TCGの専門店で単品カードをいくらか仕入れて、なおちゃん用に黒青緑で大会向けのデッキ組んでみた。
 格好はいいがいまいち使い勝手の悪いなおちゃんの好きなカードを入れないといけないので中途半端の観は否めないが、うまく回ればそこそこ強いデッキになったかと思う。
 けどよく考えると、今回はロストチャージャーやスピアの撃ち合いが基本になりそうな気がする。当然デモハンやスラッシュも多いだろう。となると、リーバースチャージャーや再誕の森、水のあれこれなど、墓地から回収するカードの重要性が高まるのではないか。
 うーん、今のままではそんなスロット空いてないぞ。

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