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本って安い?高い?

はじめに

青森旅行で太宰治疎開の家を訪れ、「津軽」と「走れメロス」を買った。それぞれ、500円くらいしたと思う。500円という値段が高いか安いかというと人それぞれ意見が異なるが、太宰治については死後70年以上が経過しているので著作権が切れており、青空文庫や各種電子書籍サイトでは無料で読める。とすると、500円は太宰治が書いた内容ではなく、「太宰治ゆかりの地で、紙媒体で書籍を手に入れる」という体験に対して支払われたお金だと考えていいだろう。

本を書くと印税ががっぽり入ると思われがちだが、本1冊の値段のうち、印税が占める割合はとても少なく、紙の本では5~10%ほどど言われている。(ちなみに、電子書籍だと10% ~ 70 % と高めになる)。紙の質感とか編集とか、関係者の色々な努力があって印税外のコストになっていると思うが、やっぱり本を読んで価値を一番感じるところは著者の文章で、著者に10%以下しか支払われないというのは違和感がある。

印税を増やそうと思ったら、本の最終価格を上げるか、本にかかる著者以外のコストを下げるか、という2つの方向性があると考える。

本の価格を上げる

人によって意見が別れると思うが、個人的な意見として本の価格はもっと高くてもいいと思う。吉野家の定食が大体700円くらいで、まあ一般向けの本の値段はお昼ご飯の値段と同じくらいなのだと思う。本の値段とお昼ご飯の値段を比べていいかはわからないが、少なくとも僕は吉野家の定食よりも一冊の本を読んだ方が幸福度が上がると思っている。

また、メルカリなどの二次流通市場が発展してきていることも考慮すべきだ。メルカリで本を買った時、本のコンテンツを作った著者や出版社には一円たりともお金が入っていない(これについては、ちゃんとお金が入る仕組みを構築すべきだと思っている)。本の価格が上がると、本を読む人が減るという意見もあると思うが、新品で紙の本を求める人には高い値段を出してもらって、お金がない人は電子書籍やメルカリで本を買えばいいと思う。

本にかかるコストを下げる

本のコスト構造.001

出版社の取り分が、大きいのである。しかし、これが高いかと言われると微妙なラインで、出版不況と言われる中、集英社などの大手も赤字を出している年がある。出版にかかる費用は、単に編集して、印刷して、といった本の作成に直接にかかってくる費用(色々な記事を見ると、本の価格の約30%らしい)だけでなく、間接的にかかってくる費用がある。特に問題視されているのが返本にかかる費用である。

記事によると、本の40%前後は売れず廃棄されている。売れなかった本を回収して処分する費用も出版社が持っているのだ。もし返本率を減らすことができたら、出版社は利益を増やすことができ、印税率を高めに設定したり、作家の発掘にもっとお金をかけることができるかもしれない。返本率を減らすためには、当たり前だが需要にあった供給をすることが大事だ。消費者との接点である本屋さんは小さい事業者が多いので、業界全体でデータを共有してAIによる在庫最適化に取り組んだり、需要状況に合わせて少しずつ本を作ったり、あるいは本の販売を集中させる(小さな書店だと売れたり売れなかったりする本が、Amazonのような大規模な販売者であればデータ通りに売れやすいし、余計な在庫を持ちすぎなくて済む。)ことが考えられる。

ただし、一律で機械的な判断が必ずしも出版文化の発展に寄与するとは限らないことには注意が必要だ。各々の本屋さんが工夫して選書して店頭に並べてくれているおかげで、僕はいつも新しい本に出会うことができる。地域の小さな本屋さんがあるから、子供や高齢者も本にアクセスできる。小さな書店がなくなり、大きな書店が売れ筋の本しか並べなくなったら、とても寂しい。

まとめ

まとめると、僕の意見としては、本はもっと高くてもいいと思うし、著者はもっと報われるべきだと思う。特に返本に関しては、改善の余地が多分にある。作りすぎた本が裁断されるのを見て、嬉しい人は誰もいない。誰かの取り分を減らしてその分を分配するのではなく、みんながハッピーになるような方法で、出版文化が発展するといいと思う。

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