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ADHDなのに私はなぜ接客、営業で働けた?(1)

自分のこと

 私は現在40代である。30代後半でADHDと軽度のASDと診断されて精神障害者福祉手帳の3級を取得している。
 「就職氷河期世代」のためフリーターとして過ごした時間も長いがその間、ADHDが苦手とする接客業や営業を主に勤めてきた。

 「運が良かった」と一言で終わらすこともできるかもしれないが私の働き方に何かヒントがあるのかと実体験を交えてお伝えしたい。

ADHDってなんぞや

 発達障害、ADHDという言葉がテレビなどで紹介されることも増えてきたが改めてどういったものかは日本精神神経学会にて確認してほしい。

 ADHD(Attention-Deficit Hyperactivity Disorderの略、日本語訳は「注意欠如・多動症」あるいは「注意欠如・多動性障害」、「注意欠陥・多動性障害」など)は、「忘れ物が多い」、「課題が間にあわない」、「うっかりミスが多い」などの「不注意」症状と、「じっとしていられない」、「落ち着かない」、「待つのが苦手」などの「多動性・衝動性」症状がみられる神経発達症(「発達障害」とほぼ同じ意味で使われる言葉)の一つと考えられています。
引用「日本精神神経学会」よりhttps://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=39

 忘れたり、勘違いしたり、掃除が苦手、遅刻など”良く”言えば「おっちょこちょい」「だらしない」という表現となり、それらが「一つに圧縮された人物」が「不注意優勢タイプ」の私である。

初めてのアルバイト

 初めてアルバイトをしたのは高校一年生で近所の大手コンビニだった。駅の近くで17時から21時までという短時間だったからという程度の理由で選んだだけである。
 当時はADHDという言葉すらなく、周囲からの私への評価は「おっちょこちょいのおバカで変なやつ」だった。
 
 初日の「いらっしゃいませー!」の挨拶の練習から始まり「掃除」「前出し」(前の商品が購入されたら後ろのものを前に出す)「検品」「品出し」と徐々に仕事を覚え、「レジ打ち」というのが一応の目標だった。
 挨拶は良しとして(その後「しゃっせー」「ありあとござー」となるのはお約束だ)、最初の難関は「検品」だった。

恐るべしダークマター

 検品は、ハンディスキャナーという端末を助六弁当のバーコードにあてると「5個」と個数が出てそれが数通りに届いたか確認をする。
 弁当は大きく見た目がはっきりわかるのでさほど苦にはならなかったが、おにぎりは悲惨だった。ケースにズラーッと立てて並べられているためパッと見ても種類が分らない。
 ただの黒と三角形の集合体・ダークマター「おにぎり」は一つ一つラベルを見て数えていく。

 人力で。

 機械があっても最後は人力に頼るのが仕事なのである。
 
 ダークマターをスキャナーで読むと「ツナマヨ20個」と表示されるが私が数えると不思議なことに「21個」と増殖をする。
 もう一度数えると「19個」と減る。小人さんのイタズラかと悩みながらも、本当に「20個」なのかと製造元のおにぎり屋に問い詰めたいと思うが、他の人が数えるとすんなりと「20個あったよー」となる。
 
 理不尽である。

 さらに近隣に大きな公園があるため、お花見シーズンに「ツナマヨ80個」が納品された日には泣く泣く3回数えても数が合わず最後には悪の心が芽生えるのである。

「80個納品OK」ピッ

 本当は許されないことですが実際にやりました。はい。お花見もおにぎり屋も誰も悪くない、数えられない私が悪いのです。
 

検品作業のパターン化

 しばらくして、ある程度慣れたころ他の人の納品作業をなんとなく見比べていたときにあることに気がついた。
  ・大雑把に数えている人
  ・ほとんど数えない人
  ・きっちり正確に数える人

 それは、3パターンに分かれていることだった(当然「きっちり正確に数える人」が正しい検品)
 そして、検品後はさっさと棚に品出しをするのが鉄則だった。
(ある一定のことをパターン化をする癖は私の軽度ASDに由来するものであるがそれはまたいずれ)

 コンビニのおにぎりが1個足りないのは忙しい時間帯の検品ではあまり重視されておらず、後の棚卸や数合わせの計算時に判明した場合に叱責されるだけということである。
 しかも、おにぎり屋さんは有り難いことに大変優秀で数が合わないなんていうことは滅多になかった。このある種の荒技を可能にしてくれたおにぎり屋さんには今も心から感謝を申し上げたい。

 駅近くでピークタイムにレジはフル回転する店舗という側面もあったのだろうが品出しをさっさとやって売れる体制を整えろということだ。
 しかし、根が小心者で所詮ただの小悪党レベルの私の夢は「きっちり正確に数えること」なのだが、誤魔化しが必要なことが多い日々だった。

 そこで私は、検品作業から逃亡を決意した。
 時間帯のスタッフは私を含め三人である。検品、品出しは二人が行い、一人がレジ内にいる。
 私は、納品のトラックが来るころにピークタイムに備えておでんの補充をしたり、常連の面倒なおばあちゃんの買物をつきあったりして敢えて「検品できませーん」という状態に積極的になった。
 そして、二人が検品を始めたころにしめしめと……レジ内に収まるのである。
 検品でダークマターに怯えるならレジでマルチタスクでおでんをお客様に取り分けたり、宅急便の対応などをするほうが私にはまだマシだった。
  少しでもいい方へ私は逃げた。

仕事を舐めてんのか

 本来なら納品物が足りないことを常態化させるような働き方は許されない。
 運がいい、ADHDやASDがあるから、女だから、アルバイトだから……とのご指摘もあるかもしれない。
 でも、どんな業務でも苦手なことをなるべく避けようと考えたり、行動をするのは誰にでもあることではないのかと。書類仕事が嫌だから後輩に任せたり、営業が嫌だから営業車でサボったり。
 忙しいときでもに1時間に1回くらいタバコを吸いに行く人もいる。
 
長時間トイレとか。まぁ、本当はウン○かもしれないけど。

 ADHDと自覚なしのときに私が見つけたのは……
  苦手な作業を少々回避する程度なら状況次第では許される。そのためには周囲をよく見渡し、観察をすること。

 ここでのADHD的仕事のヒントは、みんな苦手なことを結構うまく回避をしているということだ。
 「逃げちゃ駄目だ」という言葉は某アニメだけにして、明日からうまく回避する機会を観察することを、ぜひオススメしたい。

 

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