映画『ビリーアイリッシュ:世界は少しぼやけている』を観てよかった理由
引き込まれた。これ本当に実録ドキュメンタリーなの?何の物語かと思った。密着にも程がある。今現在は絶頂期にいるビリー・アイリッシュ。秘密のインスタが漏れちゃったような、ただの一人の少女の作品。
僕は2019年のコーチェラフェスにオンラインでかじりついていました。暗闇の中、激しく静かに歌い出した彼女は、それはそれは神々しいステージだった。なのに舞台裏のドタバタがあったなんて知る由もなく。
彼女の音楽が至極シンプルであることと同じで、伝えるための余計な装飾は要らないことを知っている。そしてこのドキュメンタリーでも特段映画になるような派手で特別なことは起きないのだが揺さぶられる。彼女の歌の世界と同じ。日常生活の中にある普遍的なドラマを映画にするのは余計な嘘や装飾を省くだけで成立するのだなと。すこしぼやけて見える世界とは、そういうことを言いたいのだろうか。彼女の等身大ありのままの姿だけで物語ができてしまうことは、音楽業界にとっても強い希望である。
ジャニス・ジョプリンに「ベンツが欲しい」と叙情的に歌われたら「ダッジチャレンジャーを手に入れてやった」と返せるほどに本当は力強いメンタルを備えてそう。強いからこそ病を超えて闇を歌えるというか。あるいはかつて多くのアーティストが苦しんだ闇を家族や友人が支えてもいるのだろうか。これからもビリーはビリーの歌を歌うのだろうと思うだけで幸せに感じられる。彼女自身も幸せな作品じゃないかなと思います。本当のことはわからないけれど。
ビリーがファイストの1-2-3-4歌ってるの微笑ましい。これAppleTV+独占はもったいないよね。劇場で観たかった。音楽アーティスト系ドキュメンタリーの中では最も説明がなく、最もリアリティがありました。
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