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中国で食材と戯る。(14) 香椿-チャンチン

( 私が中国という国、土地で扱ってきた食材たち )
  ある時は店の為、ある時は自分の食事・好奇心の為。
ある時は、海外からの輸入物、日本からの輸入物、もちろん現地の魚、肉、野菜。
ある時は ”試行と錯誤”、ある時は ”創意と工夫”、そんなこんなで続けてきた、自身の調理と撮影。
仕事であり、趣味であり、日常であった 私のライフワークアーカイブです。

寄稿にあたっての自身のコメント  


” 香椿 (チャンチン) ”                                                       2017.3


 中国名 ” 香椿 xiang chun シャンチュン " 、中国原産の栴檀( センダン )科の落葉高木である。その枝先に春になると緑色に赤味を帯びた、新芽が芽吹く。これが春の山菜的なポジションで市場の野菜と並ぶ。
地方に行けば、当然日本で見るような山菜もあるはずだが、タラの芽や蕨(わらび)などは、輸出向けの加工品に回るのか、ほとんど市場で見かけることがない。
まして、平地の常州市内。

 毎年、春先の市場といえども、菜心(ナバナの様な野菜)くらいにしか目がいかなかった。ところがこの数年、春先の短い期間だけ出回る稀有な野菜を見つける。
タラの芽にそっくりだがなんだか違う、” 香椿(ちゃんちん) "である。
少量だが非常に高かった。ほんの手に乗る少量、100gもないくらいの束で800円ほど、中国野菜としては超高級。それが最初の出会い。

 春節明けてしばらく、まだ寒い頃のその年、最初に出てくる頃のチャンチンが特別イイ。新芽だけあって、その後3月、4月と大味で硬いものに変わっていく。

春の訪れを告げる香椿。

 上の写真は少し育っている、7〜8cmくらいある。5〜6cmくらいのまだ成長していない、緑色に半分赤みが射したような色合いのものが柔らかく香りが高いように思う。
最初に出会った年は、高級だし、売り場に極少量しかなかったが、年々扱う売り場が増え、仕入れも増え、売られている期間も伸び、大味になっていく。。。

最初は、野生の季節もの、レア感があったが2、3年であっという間に庶民の春野菜に。もう、栽培物で大量生産に入ったのだと推測するのだった。


”  チャンチンと卵の炒め物 "

混ぜ合わせたチャンプルー的な炒めも美味しいが、
この回少し違うアレンジで作ってみた。

 赤みのある芽は、サッと茹でると落ち着いた色合いの深緑になる。口に含むとしっぶーい苦味と苦味を噛み締める間に口一杯に広がる独特の香気がある。

 その形状と同様に、タラの芽と同様の楽しみ方ができることを確信した。
切り口を少し削ってサッと茹で、卵と一緒に油で炒める、そして天ぷら。
強い苦味のあるものは、油での調理と相性が良い、その法則性を持って最初の年は料理して食べた。滋味であると同時にクセになる香気。。。

後追いで調べると中国の料理にも、
" 香椿炒鸡蛋 xiang chun chao ji dan シャンチュン チャオ ジーダン " =( チャンチンと卵の炒め物 )なるものが定番に。間違っていない。

 これは、油で炒めてから味噌を加えれば、蕗味噌みたいなのが作れるとも思ったが贅沢かな、と据え置き。


” チャンチンの天ぷら "

一度湯掻いて、水気を切って揚げれば
緑色の仕上がりにも。
アスパラも一緒に。

 間違いない。塩で美味しい " チャンチンの天ぷら "。
春野菜の天ぷらに新メンバーとして加入が決定しました



” チャンチンの揚げ春巻き "

チャンチン、アスパラ、卵、鶏スープ
もちろんこのままでも美味しいが。
冷まして皮で包む。。。
チャンチンの春巻き。

 油と卵との相性は証明済み。
天ぷらで体験する衣を噛んだ後の口に広がる春の香り、
こうなったら全てを込めてやるしかありません、” チャンチンの揚げ春巻き ! "

『 大正解 ! 』
日本でも、売られてはいるようなので、見かけたらぜひお試しを。。。


 ※. ちなみにセンダン科の熱帯種には、ギターのネックやボディに使われる銘木の アフリカンマホガニー や インディアンマホガニーも含まれるのだとか。

                  以上、チャンチンの回 チャンチン!


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