とある短歌について考える
立てるかい
君が背負っているものを
君ごと背負うこともできるよ
木下龍也
グッときた短歌について考えたことを書く。
この短歌はブックカフェの店員さんに選書してもらった本に書いてあった。
選書してもらう過程で、「普段どんな本を読みますか」と聞かれた。
あまり本を読まない私はパッと思いつくものがなく、サブカル漫画代表の某作品(個人的に)が目の前にあったため、「これは読んだし全巻持っています」と伝えた。
店員さんに「あ〜なるほど(笑)」と言われ、サブカル好きと認定されたことをなんとなく察した。
その上でこの短歌が載っている本、木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』を紹介された(多分この本だったと思う)。
文章がタイトルになっているところや、タイトルの字体がグネグネしているところ、表紙の色味がピンクと水色なところにサブカル味を感じてなんか嫌だと思った。
私はもうそんな若くない、サブカル好きな人間じゃないと思ったけれど、とても居心地の良いブックカフェの店員さんが私に、と選んでくれた本なので流し読みはしてみた。
(サブカルってダサいことでもなんでもないけど、なんか嫌な広まり方しているし、それに完全に飲まれている私。全然大人になれない。)
こんなに斜に構えているくせに、冒頭に載せた短歌と出会い、感動してしまった。
大事な短歌なのでもう一度書く。
立てるかい
君が背負っているものを
君ごと背負うこともできるよ
なんてかっこいいの。
君が背負っているものを「半分背負う」とか、「代わりに背負う」とかでなく、「君ごと」「背負うこと」「も」「できるよ」なのだ。
句の一つ一つが頼もしい。
しかも初句は「立てるかい」と手を差し伸べている。並大抵の優しさじゃない。
この短歌が向かう相手は、背負っているものが大きすぎてか重すぎてか知らないが、立てないほどには弱っている。
そんなところまで追い詰められた相手に対して向けられている。
「君ごと背負うこと『も』できるよ」
君ごと背負うこと以外のこともできるからこその、『も』。
相手に選択肢を与えながら、相手の全てを受け入れる寛容さにとても惹かれた。
私は、この短歌を実行したいと結構本気で思っている。
素晴らしい短歌に出会うことができた。
あんなに斜に構えていたのに。
木下龍也さん、出版に関わった方々、ブックカフェの店員さん、サブカルに関わる人々、皆様、すみませんでした。
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