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今村夏子『むらさきのスカートの女』
感想が浮かびづらい。
雲行きが怪しい雰囲気、不気味さがずーっとちらついている話だった。
(※この文章を私じゃない人も読んでくれているかもしれないけど、物語の要約とかせず、ただただ思ったことを言葉にしていくよ。)
黄色いカーディガンの女(以下黄色)は、むらさきのスカートの女(以下むらさき)をずっと追っている、付き纏っているわけだが、そんな怪しいことをしているにも関わらずあまりにも他者からの反応がなさすぎる。
黄色が色々やらかしているため、読んでいて、「おい黄色!世間体とか考えないのかよ!笑」、「流石にそれはまずいだろ!逃げろ!」となる場面が多々あるが、周囲の反応が描かれていないのだ。
もしかして黄色は他者から見えていない存在なのか? ここへきてファンタジーなんてあるか? と、思いながら読み進めていくと、権藤チーフという名前がしっかりついている人間で、周囲から見えてはいるが相手にされていない人間であることがわかったよ。
物語が黄色視点だからこそ、他者からの見え方が書かれていないのか。
黄色はむらさきに近づくために色々と策を練り、最終的にはご対面できるわけだが、一般的に考えるととんでもない対面の方法だ。気持ち悪すぎる。
対面の後、むらさきはどこに行ったのだろう。
かつて、仕事を始めては辞めての繰り返しだったため、今回もそれほど気に留めていないのであろうか、いや、流石にそれはないか。
黄色はむらさきに近づくために色々している。
むらさきの生活を潤わせるために、職場の備品を盗んでむらさきの手に入るよう仕向けたり、備品をバザーに出して資金にしたり。
黄色はむらさきに近づくために盗みまで平気でする奴だが、そんな奴が用意したものを持ってむらさきは逃げている。
不倫相手から濡れ衣を着せられていると思ったけど、事実でもあるから逃げたのかなとも考えたが、流石にあそこまで追い込まれると何がなんでも逃げるしかないのか。
とにかく伏線回収が難しかったけど、読み進めるのは楽しかった。
解説を読んでみる。
不気味というより「不安定」という表現がしっくりきた。さすが解説だな。
「黄色は、孤独と経済的な余裕のなさや他者から除け者にされることによって、正気を失い、異端であるむらさきに興味を持ち固執する。」
私はこのことが読み取れなかったし、解釈を知ってそういうことかと思えた。
補足
解説には、小説の訳についても書かれていた。
日本語の小説を他の言語に訳すことは、ただ言葉を当てはめるだけじゃなく、日本独自の文化やニュアンスも込めないといけないということを知った。
この本の不安定さは、他の言語でどのように表現されるのだろう。
「小説を訳す」って想像できないほどエネルギーが必要そうなことだな。