めんどくさいことをやらなくちゃいけないときは「ゆっくり動きはじめる」といい
昔から「めんどくさい」という感覚が不思議でならない。
やりたくて始めたことがどうしてめんどくさくなってしまうのか?
薬を水で飲み下すだけのことがどうしてめんどくさいのか?
絶対に楽しいとわかっている遊びの約束も、当日の朝はめんどくさくてしょうがなくなってしまうのはなぜなのか?
まさか20年もこのテーマについて考え続けるハメになるとは思っていなかった。
でも多くの人が関心をもつのは、「なぜめんどくさいのか」よりも
「どうすればめんどくさいことをめんどくさがらずにやれるのか」
ということにあるようだ。だから今回はその方法を端的に紹介したい。いや正確には「めんどくさいことをめんどくさがりつつも、身体を動かす」方法だ。
残念ながら「めんどくさい」を完全に消すことはできない。それでもこのうんざりする感覚を抱えたままショート動画で時間を溶かし作業がまったく進まないよりかは、少しでもめんどくさいことに手をつけられたほうがマシだ、と思える方は引き続きお付き合いいただきたい。
ゆっくり動きはじめる
めんどくさいことをやるときは、とにかくゆっくりと身体を動かしはじめるといい。
たとえば今、あなたは座ってこれを読んでいるとする。部屋の片付けがめんどくさいとする。それならあなたは「椅子から立ち上がる」という動作を、ナマケモノのようにゆっくりと行う。
とにかくまずはやってみて、自分に効果があるかどうかを試してみてほしいのだが、僕のように理屈が欲しいという方はもう少し読み進めてほしい。
ゆっくり動きはじめることがどのように作用するのかを説明するために、まず「めんどくさい」とはどういう状態なのかを解説する必要がある。
「めんどくさい」は、身体よりも頭が活発に動いているときに生じる感覚だ。
謝罪メールを書かなきゃいけないときの「こわさ」とか、まず何から手をつけたらいいかわからないごちゃっとした感じとか、締切が近いが、心理的にはまだ余裕があるときの感じとか、散らかった部屋を眺めて「これは時間がかかるなぁ……」という感じとかが身体に広がっているときの感覚を思い起こしてほしい。
このとき僕らは、限られた意識リソースを、未来に感じるであろう感情を先取りすることに使ってしまっているのだ。
わざわざ、いま感じなくてもいい感情を一生懸命身体に浴びるために、貴重な脳内メモリーを消費している。この間違った使われ方をしている意識を、正しく行動の方に振り分けられれば、不快な想像は次第に収束し、身体が動き出す。
しかし、動き出してしまえばこの不快な未来を実現することになってしまうからことを身体は予想するからこそ、動けないでいるのだ。
そこでこの不快な想像に夢中になっている意識を、何とかだまくらかして行動側に引っ張ってくる必要がある。そのためのライフハックが「ゆっくり動きはじめる」というゲームの開始を宣言することなのだ。
人間の身体は、ある目的をもって動き始めると、頭はその目的のために必要な情報を勝手に集めはじめる。そしてその目的以外のことを考えるのが難しくなってくる。
試しに、その辺に転がっている、何か片付けなきゃいけないものに手を伸ばしてみてほしい。手が届く以上の距離に何もなければゆっくりと立ち上がってみてほしい。その動きを始めた途端、それ以外のことを考えるのが難しくなるはずだ。
「目的を明確にせず動きはじめる」というのがこのライフハックのもうひとつの大切なコツだ。動き始めた直後は、まだ心身が何をすればいいかよくわかってないし、見通しもあまり立っていない。この状態は不安だし、あまり心地のいい状態とはいえない。
でも身体を動かしているうちに情報が集まってきて、いまやるべきこと、次にやるべきことがクリアになってくると、「何をすべきかわからない」という不快感が和らいでいき、リラックスしてくる。筋肉も血流と意識が行き渡り、動くための準備が整っていく。身体を動かすのがラクになっていく。考えもまとまってくる。このプロセスが作業興奮といわれるものの正体でもある。
「やりたくないよぉ」と内心、愚痴りながらゆっくり動く。風呂に入るのがめんどうくさいなら、入るかどうか迷ったまま風呂に湯をはりにいく。浴室に向かうべく、身体をゆっくりと動かす。やっぱりめんどうくさくていま入るのはいやだと感じる、湯をはってから別のことをすればいい。
いまの自分と一秒後の自分はぜんぜん違う。いまめんどくさがっている自分と、ほんの少し動き始めた一秒後の自分は、考え方も感じ方も全然ちがう。
こんなにも考え方や感じ方がコロコロと変わるのだということが理解できると、もうひとつメリットがある。気分は自分で変えられるという手応えが得られるのだ。
ネガティブに思考がよるときは陽の光を浴びるとか散歩すると良い、という話は知識としては知ってると思う。でももっと踏み込んで指摘するなら、散歩に行く、という目的に向かって身体を動かしはじめている時点で、精神にはかなりの効果がある。
コートを羽織るだけでも、帽子をかぶるだけでも効果はある。そのまま部屋をでなくてもいい。そっちに向かって行動しはじめただけで、思考は大きく影響を受け、立て直しへと向かうのだ。
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