あいすけーく
一年ぶりの宮古島。出張ではあるものの、コロナ禍で東京以外の空気を感じていなかった昨今、沖縄の空気は気分を穏やかにしてくれる。
仕事の合間に軽く休憩を取った。
潮風の吹く芝の綺麗な公園の向かいに、とある小さな商店があった。
照明のない店内に入ると、少し雑に配列された商品棚の奥からヨチヨチと小さなお婆さんが顔を出す。
―弁当が欲しい?
―ジュースはそこにあるからね
島特有のゆったりしたテンポで淡々と話かけてくる。
ジュースを買って向かいの公園で飲もうと店を出ようとすると、
―宮古のあいすけーく食べたことあるかい?
とアイスを差し出される。
―おばあちゃん、それいくら?
お婆さんは首を横にふる。お金払わせて、と声をかけても動じないのでありがたく受け取る。
―おばあちゃん、ありがとう。
―また、きてね。
あいすけーくを食べながら振り返ると、そよ風のように手を振るお婆さんの寧静な佇まいが、少しだけ切なかった。
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