色彩に頼らず、鮮やか
白と黒がメインの写真をまとめてみた。noteにカラフルな写真が溢れる中、なぜか埋もれず、集めてしまう無彩色の写真。地味だと思わない、むしろ鮮やかさを感じるのは何でだろうと、眺めてみる。
構図の迫力
一枚目。竹の切っ先が迫る。その先に真っすぐ切られた石垣と鳥居。
色が削ぎ落され、緊張感のある構図も相まって、凛とした空気がそこにあるような。鳥居をくぐってこちらに届く水まで清らかに見えて、感覚が研ぎ澄まされていく気分になる。
大きく伸びた影が主役にも見える、大胆に角度をつけた写真。
影を見るか、それとも実体のある景色を見るかで、ストーリーが変わりそうなところが、ルビンの壺みたい。こんなふうに異なる世界が、いつも折り重なっているのかもしれない。
細部の質感
動きのある構図に加え、この水の質感。
滝といえば、砕け散る飛沫のきらめきや激しさをイメージするけど、この写真では違う。きめ細やかで、柔らかそうな水。雲みたいに流れる、滑らかな軌跡。カメラを通すと、こんな水の姿も見られるのか。
ざらざらとした壁に映える、整然と配置されたガスパイプ。
建物の背面に隠されそうな物が、洗練されたインテリアみたいに見えるのは、モノクロの魔法だろうか。無機質さを強調すると同時に、打ち消される生活感。黒く華奢なパイプにかかる植物が、有機的な動きを添えている。
どこかへ導くように連なるマンホール。物がひしめく暗い路地はわくわくする。カメラの視線が低めで、猫になった気分。
素材の艶が見えるかすかな反射で、路地の方にはひんやりとした空気が流れていそう。輪郭がかすむ大通りの光と対照的で、温度差を感じる。
雨の日は物の存在感が強い。個々の匂いが立ちのぼり、それぞれ違う音を立て、艶やかに光を反射して素材の質感が強調される。
この写真でも水滴や、光の滲みで質感が際立つ。ただ、匂いが抜け落ちている。そのギャップが面白い。匂いのない、透明感のある景色。硝子を隔てて街を見るような不思議さ。自分はモノクロ写真で、匂いと味のイメージが湧かないのだと気づいた。
想像できる見えないもの
クリアな車と、姿がぶれた歩く人。静と動の対比に惹かれる。
一瞬が鮮明に映る写真は時間を止めるものと思っていたけど、これは時間の流れが一枚で見えているみたい。実際に視界に人が入って過ぎ去っていく時の感覚に似ている。リズムを感じる横断歩道の白線も好きだ。
灯りが照らす範囲は小さく、暗闇の面積が大きい写真。けれど、ぼんやりと霞む灯りで感じる、空気の潤い。奥行きがわかる灯りと木々のシルエットは遠くまで続き、何も見えない闇も空間として捉えられる。
余白で表現する墨絵の、白黒反転バージョンみたい。
見上げた先、空の高い所で風が鳴っている。そんな感じがする。
タイトルと、木の上方のぼかしで引っ張られてくる、砂埃で景色がかすんだり枝先が細かく揺れる時のイメージ。それが写真と重なって、見えないけど、風がざわざわ吹いているように思える。
終わりに
前に、個人的な青色の感じ方や接し方について考えた。
その時、色って心を動かす強い要素だよなと改めて思った。でも一方で、色だけで惹かれるわけでもないんだよなとも。
白と黒だけで惹かれた写真を整理してまとまってきた、一目で引きつけられ、何度も見たくなる写真の特徴。
ぱっと見で目を引くのは、視線がきれいに誘導されるメリハリのある構図や明暗のコントラスト。何度も見たくなる要素は、素材の質感や場の空気が感じられる細部、アングルやモチーフの組み合わせ方の意外さ、という気がした。特に身近なモチーフの印象が覆されたり、散歩の臨場感や心地よさ、幻想的な世界観を感じるとすごく好きになる。他にもあるだろうけど、とりあえず今回はそんな感じ。
無彩色の風景を採集したマガジンを公開しました。もしよければご覧ください。
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