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【Fトーク #4】 スポーツビジネスのあるべき姿について考える「勝敗に関係なくマーケットが成り立つ状態が必要」 ゲスト:佐藤夏生氏

昨年からスタートした「Fトーク」。 Fメンバーがこの人と語り合いたいと思う方にお声がけしてスタートした対談企画です。 過去のトークも順次アップしていきますね。

さて、今回のFトークゲストは、博報堂でエグゼクティブクリエイティブディレクターを務め、現在は様々な分野でクリエイティブワークを手がける、「EVERY DAY IS THE DAY」のクリエイティブディレクター / CEOの佐藤夏生さん。株式会社F(エフ)の白川創一が、佐藤さんとスポーツビジネスのあるべき姿についてクリエイティブ目線で熱く語り合いました。

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―スポーツマーケティングについて感じること

白川:我々(株式会社F)は、新規事業でスポーツの未来を創ろうとしています。佐藤さんは、目の前にあるモノというよりは新しいモノを創ることについて、パッションを持っていますよね。

佐藤:ですね。白川さんとは2006年頃に、スポーツマーケティングにネットやデジタルの力を活用して、「ファンと選手と協会をネット上で繋ぐことができるのではないか」という話をしましたよね。スポーツの熱が集まるポータルを創ろうとしていたと思います。

白川:実現しなかったですけどね。

佐藤:あの時考えていたものは、未だに現れませんね。

白川:そうですよね。スポーツが面白いと思う反面、残酷だと思うのは、今サッカーだけ見ても客席に観客があまり埋まっていなく、盛り上がっていないですからね。

一方で高校サッカーでは客席が満員になって、「あれって何なのかな?」と、いつも思います。最近では、マーケティングの人達が「エンゲージメントがどうのこうの」と言いますが、本質的にまだできていないですからね。

佐藤:スポーツの盛り上がりは、偶然に左右されていますからね。

白川:そう思います。

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―スポーツを文化にするために

佐藤:2019年のラグビーW杯が最終的に盛り上がりましたが、ポジティブに考えると、選手の頑張りとパフォーマンスによる結果だと思います。

白川:ラグビーW杯は、全てが良い方向に進んで素晴らしい結果となりました。そしてこれから大切なのは、「ラグビーというスポーツが、これから文化として成熟していくのか」ということになりますよね。

しかし文化となると、ラグビーの競技団体だけでは完結できないと思います。それゆえ、佐藤さんのような新しいモノを生み出すプロフェッショナルな人達が知恵を振り絞り、ラグビーを文化やライフスタイルとして成り立つような環境にしていくことが必要だと思います。

佐藤:「選手が良いパフォーマンスをする」「ヒーローが生まれる」「ある競技が注目される」ということは、昔も今も変わらなく、スポーツが成り立つのは全部試合の中の話ですよね。しかし、そのスポーツをビジネスモデルとして定着させるために、試合外でできることがもっとあると思います。

最近ではクラブを若い経営者やGMが盛り上げたりしていますが、そういうピッチの外で頑張るビジネスマンがまだまだ多くない。だから、クラブと協会でどれだけブランディングできるかが凄く大切になると思いますね。

白川:興行面では、野球とサッカーが先を進んでいますよね。

佐藤:GMがマーケティングを含むブランディングをして、選手がパフォーマンスを最大限に引き出せる環境を作り、チーム強化の支援とファンを絡めたビジネスモデルを構築することが理想です。

白川:その発想は面白いですよね。チームの将来像を創り、ファンをどうやって増やすのか、というビジネスモデル化させる必要を感じますね。海外ではジャパンマネーがあっての選手獲得もビジネスとなりますが、これにより何かを得られる訳ですから、もっとオープンにやってみても良いと思いますよね。

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―スポーツ=エンタメ


佐藤:アーティストを抱えるマネジメント会社の経営とスポーツビジネスの経営に、近いものを感じています。ヒット曲を生むのは偶然なところもありますが、きちんとマーケティングをやっていますからね。「コンテツ化する」「番組に取り上げてもらう」「選手の移籍」「IP管理」など、エンターテイメントビジネスで行っているのと同じように、スポーツビジネスにもバックヤードの部分にマーケティングや経営を持ち込む必要があると思います。

白川:スポーツ×エンターテイメントという点で、芸能事務所が選手のマネジメントを始めていますよね。どういう可能性を感じていますか?

佐藤:スポーツ=エンタメだと思いますし、スポーツビジネスをエンタメビジネスとして、次のように考えていくことが大切になると思います。

・クラブと芸能事務所が一緒に取り組んで、選手のIPでモノを売れるようにする。
・クラブが個人の選手をアーティストとして捉えて、選手の権利をマネジメントする。
・ブランディングオフィサーがクラブを統括し、マーケティングディレクターが実務を行う。

そして、これらによって得たお金を、チームと選手の強化に役立てていくようになれば良いと思います。

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―ピッチの外に目を向ける


白川:多くの企業のトップの方々とお会いすることがあります。企業に軸や信念がありますが、日本は表面的な部分が多いような気がしますし、これからはブランディングオフィサーがキーワードになりそうですね。

佐藤:今そのポジションにいる人はその競技上がりの人であることが多いので、その人に対して誰も何も言えなくなりますし、ビジネスとして捉えると弱いと思います。だから監督まではピッチの中(ゲーム、トレーニング、選手のパフォーマンス等)について考えて良いと思いますが、GMはピッチの外(チームの人気、マーケット、ファンのあり様等)についてもう少し考えた方が良いと思います。

白川:そうですよね。似た様な事例でいうと、チーフマーケティングオフィサーやマーケティングディレクターの方とお会いすると、ビジネスマインドや数字に対しての執着が薄いと思える人がいますからね。会社の経営が悪い時に、どこに原因があるのかを説明できることが必要だと思います。正しい予算の使い方の根拠や何を目指していくのか、ぶれていない人が少ない様に感じます。

佐藤:リーグ戦で優勝するチームは、ワンチームとなりますよね。強いチームに人気があるのは当たり前で、ビジネスでは弱くても人気があることが重要になります。勝つこととパフォーマンスが良いことだけで盛り上がるチームは、結局、一部だけとなりますからね。優勝チームが飛び抜けて幸せを手にすることは間違いないと思いますが、弱くてもファンがいて選手が幸せに感じる状態にしなければならないと思います。勝敗に関係なくマーケットが成り立つ状態が必要です。

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―スポーツの人口を増やすために


白川:スポーツが成長産業だと言われても、そのスポーツをやる環境と人口が増える必要がありますからね。サッカーと野球をやる子供達ばかりが増えることがゴールではないので、スキー、バドミントン、フィットネスなど何でも良いと思っています。日本では、商業的に観るスポーツとやるスポーツがあまりにもかけ離れていますからね。

佐藤:スポーツが気合い・根性の世界ではなく、もっとマーケットが開かれて、色々なスポーツをやったり楽しんだり、もっと自由で良いと思いますよね。パフォーマンスだけでなく、スポーツに向き合う姿勢で評価するマーケットになって、高齢になっても本気で楽しめる環境になると良いですよね。

白川:スポーツを観るのはもちろん楽しいです。しかし、スポーツをやることも楽しくて、そのための環境が整備されていないと、本質的に市場は大きくならないと思います。

佐藤:スコアに関係なく楽しめるスポーツは、世界規模の競技になっています。ランニング、ゴルフ、テニス、スキー等、マーケットになっているものは、皆が楽しめますからね。

白川:どの競技を、もう少し盛り上げられると思いますか?

佐藤:マイナー競技に可能性を感じます。今からサッカーの人口を2倍にするのは無理ですからね。

白川:大学で講義をした時に、アンケートで約90%の学生が「マイナー競技に民間企業や政府が力を入れるべき」というような回答がありました。商業スポーツとして成り立つサッカーと野球以外のスポーツに力を入れるべきだと、改めて気付かされましたね。

白川:佐藤さん、現在、渋谷区で面白い取り組みをされていますよね。

佐藤:一般社団法人渋谷未来デザインでフューチャーデザイナーを務め、渋谷区の街、住民、社会、未来がより豊かになることを考えながら取り組んでいます。そのために税収だけではまかなえない部分があるので、民間企業の力を借りて街をブランディングしようとしています。

例えば、次のような文化形成的な事業となりますね。
・渋谷区で5Gの実験をする。
・スクランブル交差点をニューヨークのタイムズスクエアのようにする。
・センター街のハロウィンを札幌の雪祭りのようにする。

白川:行政と民間が密接に連携し、マーケティング的な発想で取り組むことによって新しい文化が生まれ、商業的な発展にも結びつくと感じています。そしてこれを、スポーツに当てはめることもできると思います。

―日本人らしさをスポーツビジネスに活かす

白川:どのビジネスにも偶然を狙った戦略等があるのですが、目指すべき所や、こうありたいという像を持ってないと、なかなか難しいですよね。

佐藤:それらを持っていた方が偶然が訪れやすいですし、偶然を手に入れやすいですよね。普段から準備ができていると、チャンスが訪れた瞬間に、チャンスをチャンスとして認識してゲットできる確率が上がりますよね。

白川:もう少し日本人なりの働き方を、工夫できるのではないかと思います。

佐藤:球技のサッカーや水球を観て、日本人らしさを学ばせてもらう機会が多いですね。そういう意味で、日本のビジネスの有り様の緻密さ等が上手く進めば、スポーツ界においても新しい経営方法が生まれ、事業の成長があるような気がします。

白川:スポーツは、これから切っても切れない重要なライフスタイルに位置付けされていくと思いますので、クリエイティブ目線で新しいライフスタイルを生み出す取り組みを一緒に実現できればいいですね。
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【ゲスト紹介】

佐藤夏生氏 1973年生。
EVERY DAY IS THE DAY クリエイティブディレクター / 共同代表博報堂エグゼクティブクリエイティブディレクター、HAKUHODO THE DAY代表を経て、2017年、ブランドの課題解決ではなく、可能性創造をリードするブランドエンジニアリングスタジオ EVERY DAY IS THE DAYを立ち上げる。 過去には、adidas、NIKE、Mercedes-Benzのクリエイティブディレクターを歴任。近年は、TOYOTAやBRIDGSTONEの技術開発、docomo「For ONEs」事業戦略、霧島酒造ビール事業戦略、渋谷区の都市デザイン等、クリエイティブ領域を拡張している。GOOD DESIGN賞をはじめ、ACCマーケティングエフェクティブネスグランプリ等受賞多数。2018年から、渋谷未来デザインのフューチャーデザイナーと横浜市立大学先端医科学研究センターのエグゼクティブアドバイザーも務めている。

Fトークは、Fのオフィシャルサイトでもご覧になれます。

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