時間を掛けることを知らなかったあの頃
あの頃シリーズ第五段
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まさかの幸運を引き当て、巡り会った店鋪K。
「甘み、コク分かりますか?」
2回目の訪問の時にコーヒーが好きだ、と言ったらこう聞かれた。
コクは分かるが甘みに関しては前回の時に微かに感じられた程度で分かるとは到底言えない。
正直にそう伝えた。
1杯出してもらい、それを飲み終えた。
そして言われたことは、飲むのが早いとのことだった。
「もっとゆっくり味わって、冷めていく過程の変化を楽しまないと勿体ないよ」と。
コーヒー1杯でだらだらと粘って長居するのはみっともない行為で、ご法度だと思っていた私にとっては衝撃的だった。
コーヒーを味わうための長居なら存分にしていけと、そう言うことらしい。
それから2杯目をおまかせで頼み、次は時間を掛けてゆっくりゆっくりと変化を追ってみる。
するとどうだろう、苦味から酸味へ、酸味から甘みへと徐々に変化していくことが感じ取れた。
冷める前に飲み切っては勿体ないという意味をそれとなく理解した。
私のペースではせいぜい酸味までしか変化していない状態で飲み終えていたのだ。
たしかにこれでは勿体ない。
1杯のコーヒーを味わい尽くすためには時間を掛ける必要があると知った。
それからはおおむね、カップ1杯のコーヒーを最低でも20分、理想は30分ほど掛けて向き合うようになった。
そうすることで見えてくる変化の差、産地でも変わる、焙煎でも変わる。
もちろん抽出でも。
飲み始めの苦味
増えてくる酸味と穏やかになる苦味
顔を出す甘みと豊かになるコク
その過程のバランスが多種多様で素晴らしい。
そうして時間を掛けて味を追うことを覚えるとコーヒーに対しての面白さ、楽しさはどんどんと広がっていった。
推測した、もう後戻りは出来ないと。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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