ポエ文(ぶみ)その9

音楽に身を委ねている。目を閉じ、振幅をつかむと、歌声は私の身体になり、平行世界が起動した。リズムと和音の綿密な綾にたゆたう。ぶつかるギリギリを行くたびに、ビリビリとスパークする。二つの線のはざまを泳ぐ、触れることはなく、同じ向きで平行すると、やわらかな和声が、個の集まりを超えた雲となった。雲は膨らみ、饗された皿の淵までわずか。空隙は絶え、絶対的な時が流れている。心臓から隔てられたところで私は私の速さを決められた。何も奪われない、希望の国ではなく、残された1つの無垢の空。ひるがえって笑う。何にも許される必要はない。稜線を追い、どこまでも行く。ここには誰もいない。

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