脳と心 第1集 心が生まれた惑星 ~進化~

■第1集 心が生まれた惑星~進化~
地球に最初の生命が生まれて38億年。長い進化の歴史の中で、人間の脳と心はいつどのようにして生まれたのか。
人間の心の芽生えは、6万年前のネアンデルタール人まで遡れるという説がある。シャニダール洞窟の中で発見されたネアンデルタール人の
骨の周囲から、おびただしい量の花粉が発見され、世界の人類学者の熱い関心を集めた。分析の結果、仲間を埋葬して花をたむけた跡だということがわかった。今から6万年もの昔の人類が、既に死の意味を知り、死者を葬る儀式を持ち、博愛の心さえも持っていたのだ。
このネアンデルタール人を主人公に、脳と心の進化の謎に迫っていく。

NHKで,1993年の秋から翌年の春にかけて,「驚異の小宇宙 人体Ⅱ 脳と心」が放送されました。1回60分弱の放送が,全部で6回ありました。驚異の小宇宙シリーズは,「人体Ⅰ」と「人体Ⅲ 遺伝子」というのがあり,それらの2つについては,今でもビデオを販売していますが,「人体Ⅱ 脳と心」だけは「完売絶版となりました」となっていて,入手できません。
私が,個人的に録画し,数年前にDivXに変換して保存してあったものを見直しついでに,ここでご紹介しようと思います。

第1集は,脳を冷凍保存する映像から始まります。いずれ科学技術が進歩して,冷凍した脳を蘇らせてくれる時代になったときに,生き返ることを願う人のためのサービスが,アメリカにはあるのですね。

てんかん患者の脳を切除する前に,脳の表面に電極を付けて,切除しようとする部位を失うとどのような機能を失うことになるのか検査している様子が描写されています。

テキサス農業工科大学のラルフ・ソレッキという人が,北イラクのシャニダール遺跡の洞窟を調査し,ネアンデルタール人について研究しました。遺体と共に,大量の花粉が出土したことが紹介されます。この成果については,最後の方にまた出てきます。

脳の進化について,ホヤの神経管からずっとヒトの脳まで映像で紹介されます。

大脳新皮質が発達したのは,嗅覚や聴覚などの5感を処理するためであったとする説を紹介しています。

チンパンジーが石を道具として使えることを示す映像を,ヒトの子供の映像を交えながら描写しています。ただし,チンパンジーには道具を作ることはできない,という点が強調されます。

大脳新皮質の断面の映像が出てきて,表面の茶色の部分が神経細胞,その内側の白い部分が神経細胞をつなぐ繊維。神経細胞やその接合部であるシナプスなどのCG映像が出てきます。

脳の活動を画像でとらえることができるようになり,ネコが縞模様の動くのを見ているときの脳の活動がカラーで示されます。

脳のコラムという筒状の神経細胞の塊がどんどん増えて,そのために脳の表面のしわができたという,その様子がCGで映し出されます。

脳が発達するきっかけとなった二足歩行。道具を最初に作ったとされるホモハビリス。石器の特徴から右利きの比率が57%とやや高くなっていることがわかる。化石を調べると,現代人の左脳の言語野に該当する部位に,サルにはない新しい溝ができていることが分かる。ちなみに,チンパンジーの右利きは50%。
ホモハビリスの脳は700cc。ホモエレクタスは1000cc。ネアンデルタール人は1500ccと脳の量が増加しています。

CGで新しい脳(知性・抑制)と古い脳(感情・興奮)とのせめぎ合いが表現されます。

チンパンジーの母親が,発情期に入ってもなおミイラ化した子供を背負い続ける映像。身体や本能は発情をして,子供がいない時の状態になっているので,本能以外の高等な精神活動の萌芽が見られると解説されます。私は,脳の機能が一部壊れている可能性もあるのではないかと思いながら見ていました。

シャニダールに戻って,ネアンデルタール人の遺体から彼らの行動や精神活動について検討がなされます。
右腕を失い,左目を失明した狩には適さない個体が,仲間に助けられて生活していた痕跡から,いたわりの気持ちや福祉的なかかわりがなされるようになっていたものと考えられます。
また,先に述べたように,遺体の上半身辺りに大量の花粉があったことからは,死者に花を手向けたこと,つまり,宗教の原始的な形がそこにすでに見られたことが示されていると考えられます。

我々人類の直接の祖先であるクロマニョン人が台頭して,ネアンデルタール人は滅びます。クロマニョン人は,ネアンデルタール人と比較して,前頭葉が大きいという特徴があります。
これによって,ラスコー洞窟に見られる絵画などの芸術を生み出したほか,飛び道具などを発明し,文明化を加速させたものと考えられています。

いいなと思ったら応援しよう!