読書感想『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』(室橋裕和)
今やどこの街にもある格安カレー屋。
なぜほとんどがネパール人経営なのか?
何故画一的なメニューなのか?
そんな身近な謎から、移民達の熱意、出稼ぎ国家の悲哀や暗部を探るノンフィクション。
読みやすく面白かった。軽快な文章と面白いエピソードのおかげでサクサクと読める。
まず前半、いかにしてインネパカレーが広まったのかをインタビューで紐解いていく流れは、身近な文化史といった感じで面白かった。
僕はてっきり「インネパ開業の指導者」みたいな人がいて、だから皆同じメニューなんだと思っていたけど、そうではなくカレー屋のコックが独立する時にレシピをコピーして、その独立先のコックがまたレシピを孫コピーして……ということらしい。そんな奇跡みたいなことが起きていたとは。
後半はカレー移民達がいかに祖国を離れ生活をしているかの話で、移民達の頑張り、強かさ、苦しい現状が学べて勉強になった。
ビザという門扉が開かれている割に、受け入れ体制(子供の教育等)な整っていない日本側の問題点もよく分かりました。
全日本国民にとってもはや他人事ではない。
とはいえ純粋に「世界は繋がっている」感覚は面白いものですね。
カレー屋さんがこれだけ増えたのも、そしておそらく今後減っていくのも、決して偶然ではない。
国際情勢、経済、そして個人的な縁が混じり合って身近な社会を作っている。
あのデカくて甘いナンはそうした歴史の上で成り立っているのだ。そう思いを馳せるのは楽しい。