【Q12.山形新幹線E8系に乗りたい】1.溜池山王から山形まで
健康診断から小旅行(毎年恒例)
例年、五月末から六月のどこかの金曜日の午前中に、職場指定の施設で健康診断を受診する。その午後には午後休を取得して小旅行に出かける。今年の旅先に選んだのは山形県だ。この三月にデビューした山形新幹線「つばさ」の新車両、E8系に乗りたかったからである。
可能ならば、往路か復路のいずれか一方でE8系に乗り、もう片方では旧来の車輛に乗って乗り比べをしたい。旧型車両は大体の場合、現在最も多いE3系となるだろう。
健診の内容は例年ほとんど変わらないが、今年からバリウムを飲まないコースが新設されたので、それにした。
健診終了後には、施設付属の飲食店でタダ飯が喰える。去年は寿司であったが、今年は松花堂弁当であった。四角く区切られた弁当箱の小さなマスに、様々な品目のおかずが少量ずつ入れられている。健診を終えた気の緩みもあり、白米をお代わりしてしまう。
11時12分、健診センター発。健診の予約時間が遅かったため、去年より出発時間は遅くなっている。ここで忘れ物に気付く。常に携帯している、A7サイズのメモ帳が無い。これが無いと、何とも落ち着かない。どこかで買おう。
溜池山王駅構内のコンビニで、水色の表紙のモノを発見するが、一冊二百円と、何とも高い。他のどのサイズのノートよりも高い。通常ならば、百均で二冊百円ぐらいの値段なので、買うのを見送る。
11時21分、溜池山王発。銀座線で新橋へ。新橋にて、東京都区内から、山形県の新庄駅まで、乗車券のみを買う。山形新幹線つばさは全車指定席で、どの号に乗るのかは、この時点で決めていなかったからだ。東京駅についてから、特急券を改めて買えば良いだろう。
11時34分、新橋発。山手線で東京へ。新幹線改札口に行く途中、構内のニューデイズを覗いてメモ帳を探すが、やはり二百円する。
新幹線改札の付近には、自動券売機があるはずだ。そこで特急券を買うつもりでいた。東海道新幹線の切符を売るJR東海の券売機はあるのだが、山形新幹線の切符を売るJR東日本の券売機は、何故か見当たらない。結局、特急券を買うために、有人窓口に並ぶこととなった。列の人々の話し声からは、やはり東北弁が聴こえてくる。
自分の番になる。「つばさ」のどの号に乗るか、決めなければならない。この時点で11時48分。12時丁度発の、やまびこ・つばさ137号に間に合わないこともないが、飲食物を買い込む時間を考えると、やや慌ただしい。「やまびこ」には車内販売は無く、また以前に乗った秋田新幹線「こまち」にも無かった。今回乗る「つばさ」にも、車内販売があるかどうかは分からない。飲食物、特にアルコールと肴は、事前に用意しておきたい所だ。一本後の、やまびこ・つばさ139号にする。13時00分東京発だ。
窓際席を希望する旨を係員に伝える。右と左、どちらが良いかと聞かれたので、どちらの景色が良いかと聞き返すと、左が良いと言う。その言に従う。
時間が出来たので、改札内の店舗をブラブラと見て回る。ニューデイズで酒とツマミを買う。ジムビームだ。メモ帳も結局、涙を呑んで二百円のモノを買った。
山形新幹線E3系にて山形まで
指定席なので、ホームの列に並ぶ必要は特にない。入線してきたつばさ139号の車体をのんびりと撮影する。E3系だ。
乗車し、着席する。その座席の様子を撮影する。後ほど、E8系の座席と、比較したい。
フットレストがあるので、靴を脱いで足を乗せる。これは、ポイントが高い。壁には充電用コンセント。読書灯。前方座席の背面に、折り畳み式テーブル。
13時15分、荒川を越える。車内は蒸し暑い。六月の午後の西日が当たる角度だ。13時18分、武蔵野線の高架を越える。13時25分大宮発。大宮以北の区間では、併走する埼玉新都市交通ニューシャトルの軌道と駅を眺める。ニューシャトルの車輛自体は、一度しか見つけられなかった。
13時33分、利根川を渡る。東北新幹線は、ここから少しの間、茨城県を走行するが、茨城県内に駅を持たない。
この辺りで、車内販売がやって来る。聞くと、やまびこ側には車内販売は無いが、つばさ側にはあるのだと言う。酒とツマミを追加で購入する。ツマミは、東北新幹線でいつも買う、ホヤの小箱だ。
14時17分郡山。郡山に入線する際に見える、ヨドバシカメラの看板が懐かしい。昨年七月に旅行した際に、この店でマイクロSDカードを購入したことを思い出す。
14時31分福島着。福島駅では、山形新幹線つばさと、東北新幹線やまびことの切り離し作業が行われる。車内から見ることは出来ない。
福島駅の北側では、現時点では、上りの山形新幹線と接続するために、東北新幹線のレールが平面交差している。その現状を解消するために、新しいアプローチ線の工事が現在行われている。二〇二六年の供用開始を予定しているという。
14時37分福島発。東北新幹線の高架線が遠ざかっていく。つばさは奥羽本線に入る。
しばらく盆地を走った後、山間部に入る。車窓近くに接近する山林。トンネルとスノーシェードが交互に現れ視界を遮る。
関根駅を通過した辺りから、田園風景が車窓に拓ける。米沢盆地に入ったようだ。進むに従い西側の山地は遠ざかり、水田が広がる盆地の奥行が深くなる。六月の午後の西日が、六月の午後の水田に反射して散乱する。
米沢では、対向車との入れ違いを待って発車する。米沢と山形の間には停車駅が多い。中央線を走る、特急あずさの小淵沢以遠のような感じだ。遠景に山脈を配しつつ盆地を進むという点でも、中央線の山梨や長野走行区間に似ているなと感じた。
高畠駅で、上りの山形新幹線、E8車輛とすれ違う。右側だ。赤湯駅でもすれ違うが、今度は何故か左側である。何故?
15時50分、終点山形駅着。男性駅員の駅アナウンスは、明らかな山形弁で、大感動だ! 素晴らしい! 旅をしているという実感が、込み上げてくる。