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【Q7.完結】【Q7.日本の懸垂式モノレールに1日で全て乗る】4.スカイレール完全乗車

(前回の記事はこちらです)


スカイレール完全乗車

 瀬野駅の駅スタンプを、改札窓口で借りて押す。
 駅周辺は、ごく普通の住宅街といった雰囲気だが、商業施設が、駅の規模に比して極度に少ないように感じる。広島市近郊の山陽本線はそれなりの本数があり、通勤・通学需要に対応した快速列車も走っている。見たところ、この駅もそこそこの利用者が居るのに、何故なのだろうか? 関東や近畿地方にこのぐらいの大きさの駅があったら、もう少しコンビニやスーパーが出店しているのではないか? そこまで極端な車社会のようにも思えないのだが。

 瀬野駅から繋がる連絡通路を渡り、スカイレールのみどり口駅に向かう。スカイレールサービス、正式名称は広島短距離交通瀬野線。

 このクエストを実行している二〇二四年一月五日の時点で、日本国内において稼働している懸垂式モノレールは三路線存在している。千葉都市モノレール、湘南モノレール、そして今から乗る、スカイレールサービスである。(もう一路線、上野動物園を走る上野懸垂線が存在していたが、運休状態が長期間続いた後に、二〇二三年一二月をもって廃止された)。
 改札機は、Suicaには対応していないようだ。券売機に現金を投入し、切符を買う。切符はORコード読み取り式になっている。博物館や美術館のようである。

 みどり口駅の窓口でも、記念スタンプを借りて押す。中年男性の係員が対応してくれる。

 スカイレールは、広島市郊外の住宅地を走る短いモノレールだ。瀬野駅北側の急峻な丘陵地帯を切り開いて造成された新興住宅地を登り、住民を運んでいる。路線自体は短く、全三駅。一両編成。運転士はおらず、自動運転である。ロープウェイのゴンドラのような外観で、その運用方式も軌道鉄道というよりロープウェイに極めて近い。定員も、ロープウェイと同じぐらいだろう。 



 ゴンドラ内には、既に何人かの客が乗っている。オバちゃんの二人組は、スカイレールに乗ること自体が目的の観光客のようであった。二人とも見た感じは、どこにでも居る普通のオバちゃんで、鉄オタにも旅行系ユーチューバーにも全く見えない。
 15時45分、みどり口駅発。発車直後から、いきなり険しい登り坂だ。新交通システムがわざわざ造られた理由がわかる。ものすごい高低差だ。


 力強く登り、視界が拓けていく。登り続けながら、しばらくすると左に大きくカーブする。


 勾配の険しさも、カーブの激しさも、湘南モノレールの比ではない。ロープウェイは高低差には強いが、カーブには対応できない乗り物であるため、この地にはモノレールタイプの新交通システムが必要だったのだろうと推察される。
 乗っていて楽しい。前二者のモノレールと異なり、運転席が無いため、何物にも遮られることなく前面展望を視野に収め、その動きを楽しめる。天井側に軌道がある、懸垂式モノレール独自の構造を、間近で確認できる。加えてカーブがあるので、ロープウェイには無い豪快さがある。
 テーマパークのアトラクションのようであるが、眼下に広がるのはごく普通の戸建て住宅だ。
 唯一の途中駅であるみどり中街駅を経て、15時50分、終点のみどり中央駅に着。
 この時点で、今回のクエスト「日本国内の懸垂式モノレールに全て乗る」を達成した。

 スカイレールみどり中央駅を探索


 みどり中央駅は無人駅だ。観光客は無断で住民を撮影するなという意味の注意書きが掲示されている。駅周辺には、私以外にも観光客らしき人物の姿が見られるが、流石にインバウンドの外国人の姿は見られない。
 自販機で飲み物を買う。駅周辺は完全な住宅地であって、本当に何の商業施設も無い。コンビニもスーパーも何も無い。駅構内に自販機があるだけだ。この、みどり中央駅にも、麓の瀬野駅にも、ここまで全く何も無くて、地元の人々は日常生活に困らないのだろうか? 学校施設もあるようだが、文房具が急に必要になった時になど、保護者はどこで買うのだろう? 三角定規一本を買うためだけに、自家用車を走らせるのだろうか? そんなことを思いながら歩いていると、駅西側に巨大な工事現場がある。何らかの商業施設が出来るのだという。

 様々な角度から、スカイレールの車体の撮影を試みる。東側の住宅街の奥に少し入り、路上から撮影する。また、スカイレール軌道の直下は、階段状の公園となっていて、老人が散歩し、子供達が思い思いに遊んでいる。清掃スタッフが園内を掃いて回る。その公園から、車輛を仰ぎ見るような角度で、真下から撮影する。懸垂式モノレールならではの画角だ。
 山上からスカイレールの構造物を見下ろすと、曲がりくねりながら斜面を登るその様子が、大蛇かドラゴンのように見える。遥か下の山麓に、瀬野駅を望む。すごい所に、住宅地を造成したものだなと、改めて思う。

 山陽本線を、広島方面へ向けて貨物列車が駆けていく。長大編成だ。瀬野駅と、一つ東隣の八本松駅との間には急勾配があり、「瀬野八」と称される鉄道運行上の難所として知られている。その瀬野八を、駆け抜けてきた所なのだろう。
 スカイレールのゴンドラと、貨物列車の両方を同時に一枚の写真に納めることは出来ないだろうか? そう思って2ショット写真の撮影に挑戦したが、上手く行かなかった。
 
 帰路もやはり車窓に貼りつく。本当に楽しい乗り物だ。今年の四月には廃止され、代替バスになってしまうという。残念だ。
 千葉都市モノレールでも、湘南モノレールでも、側面展望を主に撮影してきたが、このスカイレールでは、帰路でもやはり正面展望に魅了されてしまう。


 途中駅、みどり中街にて、対向車輛とすれ違いを行う。下車して、駅周辺を一周する。小さな公園がある。
 みどり口駅、つまり瀬野駅に帰ってきたが、すぐに立ち去るのは余りにも名残惜しい。駅周辺にしばらく留まり、発着するゴンドラや駅舎を撮影する。


このクエストの再検討


 今回のクエストは、非常に愉快であった。三路線のモノレールのいずれもが、眺望に優れ、視覚的な楽しみを充分に満たしてくれた。
 千葉と湘南の両モノレールがある関東地方から、スカイレールの広島までの長距離移動には、新幹線を選択した。それが最も無難な選択肢であると考えたからだ。航空機による移動という選択肢も、無いことは無いが、時短に繋がるかどうかは微妙である。各モノレールの始発駅から新幹線駅までの所要時間と、空港までの所要時間を、細かく検討する必要があるだろう。 
 つまりは、以下のような事項だ。
 湘南モノレールの始発駅、大船から新横浜までの時間と、大船から羽田空港ターミナルまでの時間。スカイレールの始発駅である瀬野駅から広島駅までの時間と、瀬野駅から広島空港までの時間。広島空港は、瀬野駅と同様に広島県の東側に所在するが、そのことが飛行機ルートに取っての時間短縮に繋がるだろうか? 千葉都市モノレールと総武本線が接続する都賀駅から、成田空港までアクセスすることも不可能ではないが、遠回りとなり、ロスの方が大きいだろう。
 加えて、飛行機は当然、空港に着いてから搭乗まで時間がかかる。一般に、東京広島間の移動は、航空機より新幹線が優位だと言う。
 今回の日程に関して言えば、更に特殊な条件が追加される。一月二日の航空機事故によって、羽田空港の機能が著しく制限されていたことだ。再確認しておきたい。

クエスト「日本の懸垂式モノレールに一日で全て乗る」の旅程

 新幹線のぞみは、年末から年始の一月四日までの最繁忙期は、全席指定席とされた。その期間を避けて、本日一月五日を決行日として選んだ。羽田空港衝突事故の影響のためか、その混雑は非常に激しく、結果として指定席券を買うこととなった。軟弱な決断ではあるが、止むを得ない。
 いずれのモノレール終着駅においても、終点で一度下車し、正規の交通費を払い改札の外に出た。その後、改めて初乗り運賃を払って入構した。当然である。往路に乗ってきた車輛にそのまま復路も乗って引き返せば、時間短縮は可能だろう。RTA的な旅を目指すならば、それが正着手なのかもしれないが、自分はそうしなかった。乗車規則を遵守したいと考えたためである。(もし即Uターンを行うなら、予め往復切符や一日乗車券を買うべきだろう)。加えて、終着駅に辿り着いたら、一度は改札外に出て駅舎や周囲の様子を眺めたい。時間と金とを費やして来た場所なのだから、すぐに立ち去るのは惜しいと思うからである。
 

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青条
詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。

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