「チャイルド・デス・レビュー 救えたはずの小さな命」の連載第1部を終えて
10月4日の月曜日からスローニュースで連載していた「チャイルド・デス・レビュー 救えたはずの小さな命」が金曜日で終わりました。計5回。平日は連日、掲載されたことになります。「力の入った素晴らしい内容でした」等々の感想をいくつもいただきました。ありがとうございました。
フロントラインプレス側でデスク作業をしていた私(高田)は途中、原稿を読みながら落涙しそうになりました。子どもは死んではいけない(もちろん、誰もがそうです)。そう思わずにはいられなかったし、スローニュース側で原稿を編纂してくれた熊田安伸さんも最初、「何度も涙でパソコンの画面が見えなくなった」と話していました。
学校や遊び場、家庭での事故。交通事故。いじめや虐待。そういった、あらゆる出来事から子どもの命を守ろう、そのために子どもが亡くなった事例を徹底検証し、精神論ではない具体的な防止策をつくろう。そのために医療も教育も警察も福祉も行政も、およそ子どもに関係ある機関は全て手を取り合おうじゃないかというのが、チャイルド・デス・レビュー(CDR)です。
何よりも大事な子どもを救うためだ。関係機関もすぐに手を取り合うだろう……とは、なかなか進みません。悲しいかな、それが現実です。「日本では無理だ」という専門家もいます。
そんなことでいいのか? そう思いながら取材班のジャーナリストたちは取材を進めてきました。下の写真は連載2回目に登場する大津市の山下諄くん。大好きなお兄さんに抱きついているシーンです。その諄くんは昨年5月、ダンプカーにはねられ、亡くなりました。
私もCDRとは、わずかながら、細い細いつながりがあります。
「Safe Kids Japan」という団体が2019年3月、東京で「社会で守る子どもの命〜『ネットの声』を分析してみてわかったこと〜」というシンポジウムを開きました。そこに話し手の1人として登壇させてもらったのです。
日曜日の午後でした。70人くらいの方々が集まったように記憶しています。
会場で吉川優子さんにお会いしました。子どもさんを水の事故で失い、その後は悲しみを乗り越えて、ライフジャケット着用の運動を全国で展開しています。子どもさんの名前を付した一般社団法人「吉川慎之介記念基金」をつくっていらっしゃいます。
その他にも大勢の方と面識をいただきました。とくに印象に残っているのは、日本技術士会の研究グループの方々。プールの排水口に子どもが吸い込まれた事故に衝撃を受け、二度と同じような事故が起きないように研究を重ねていました。「設計や施工がちゃんとしていれば、絶対に救えたと思います。もう二度とこんなことがあっちゃいけない。そのために僕らにできることがあるはずなんです」と。物静かではありましたが、真摯な、いかにも現場のプロらしい姿勢に心を打たれました。同時に、私は「ああ、地味で地道で目立たないけれども、こういう人たちこそが日本を支えているんだよな」「こうした人々にこそ、ジャーナリストとしてもっと目を向けなければいけないよな」と思ったものです。
そんな私の経験とはまったく無関係なところで、フロントラインプレスの益田美樹さん、穐吉洋子さん、林和さんらはこの企画を発案し、取材を進めてくれました。第2部は11月に掲載の予定です。第3部もあります。そして、CDRについてもっと多くの人に考えてもらうために、リアルでの催しや映像コンテンツ、音声コンテンツの制作なども構想しています。
引き続き、どうぞよろしくお願いします!
(フロントラインプレス代表・高田昌幸 このページの写真の撮影は:穐吉洋子さん)