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#345 [文学] 20世紀の詩が生んだ最も鮮明なイメージ
第50週 第2日(火)文学「再臨」
1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365を読破しようという企画。
この本の概要についてはこちらを一読ください。
今日は文学「再臨」です。
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本の要約
ますます広がる渦を描きながら、ぐるぐると回る。
鷹には、鷹匠の声は聞こえない。
あらゆるものは崩れてゆく。中心は保持することができない。
完全なる無秩序が世界に放たれ、
血で濁った潮が放たれ、至る所で
無垢の儀式は水没する。
最も善き人々は確信をすべて失い、最も悪き人々は
激しい情欲に満ちている。
確かに、啓示は近い。
確かに、再臨は近い。
再臨! その言葉が出るや否や
世界精神からの広大なイメージが
私の視界をさえぎる。どこか、砂漠の砂に埋もれた場所で
ライオンの体と人間の頭を持ったものが、
太陽のようにうつろで非情な眼差しで、
ゆっくりと腿を動かし、その周りでは
砂漠の怒れる鳥たちの影が回っている。
闇が再び降りる。しかし、今や私は知っている。
2000年の深い眠りが、
激しく動くゆりかごに悩まされて悪夢に変わったことを。
だが、はたして、どのような獰猛な獣が、ついにそのときが来て、
生れ出ようとしてベツレヘムへ向け、身を屈めて進んでいるのか?
ウィリアム・バトラー・イェーツの「再臨」(1920年)は、20世紀の詩が生んだ最も鮮明なイメージを含んでいる。混沌と邪悪というイメージに満ちた「再臨」は、作中に登場する獣は第一次世界大戦後にヨーロッパで起こった共産主義やファシズムという全体主義体制の象徴だと考えられている。
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イェーツの独特な世界観
イェーツといえば、ケルト復興運動(母国アイルランドの文化を保護してイギリスの影響を排除しようという試み)に貢献したことで何より有名らしい。
しかし「再臨」はそのイェーツらしさはなく、もっと神秘的な世界観で形作られていた。彼の考える歴史は、2000年を1サイクルとする上昇と下降の繰り返しだととらえており、このサイクルを「渦」と呼んでいた。イェーツの歴史館では、この世界で前回の上昇渦はイエスの誕生で最高潮に達しており、そのため、それと対応する正反対の下降渦は、20世紀のどこかで底に到達するはずだった。ヨーロッパを襲った第一次世界大戦の恐怖を経験したばかりのイェーツは、1920年当時、キリスト教の渦は世界への影響力を失いつつあり、終末は遠くないかもしれないと思っていた。
戦時中の恐怖は私たちには計り知れないが、世界が終末に向かっているという考えはイェーツだけではなかったはず。ファシズムにさらされていたヨーロッパ諸国はだれもがそう思ったんじゃないかな。
そんな中で、詩という形で世界に現状を訴えかける試みは素晴らしいと思う。