命のバトンを繋ぐ
「Aさん、今日の朝亡くなったみたいだよ」
今日出勤すると先輩看護師からそう告げられました。
「医者は救った命より救えなかった命が頭に残る」
コードブルーの冒頭でそのような事を言っているシーンがありました。
僕ら、看護師もそうだと思うんです。
1週間前の出来事です。
それまでは普段通りに過ごしていた方でした(以下Aさん)。
朝から何となく調子が悪い。
呼吸状態があまり良くない。酸素投与開始。
緊急で検査予定でした。
ADLは概ね自立されている方でしたが、大事をとって検査室まで車椅子で。
私「Aさん、検査に行くので車椅子に移ってもらってもいいですか?」
Aさん「はいよ」
見守りにて車椅子へ移乗。
ベッド周りを整えて、さぁ検査へ行こうか。
…
「Aさん…?」
声をかけても反応が薄い。
というか反応がない。
次第に悪くなる顔色。
自発呼吸の消失。
心肺停止。
やばい…
これはまずい…
急いで処置台にAさんを仰向けにして心臓マッサージ開始。
1人の先輩は医師への緊急コール。
もう1人の先輩はダッシュでAEDを取りに行く。
残された僕の役割は明確。
右手首にはめていた腕時計を床に放り、袖をまくって心臓マッサージ。
強く、早く、絶え間なく。一心不乱に胸骨圧迫。
「緊急時こそ冷静に」
これは看護学生時代や、心肺蘇生法をレクチャーして頂いた新人の頃によく言われていたことです。そうアドバイスをされた時は分かっているんです。
焦らず冷静に…と。
それが出来ませんでした。
まだまだです。
「まだだ!帰ってこい!」
「Aさん!頑張れ!死ぬな!」
自分は患者さんにそう言いながら胸骨圧迫を続けていたそうです。ですが、自分にはその記憶がないのです。後々先輩方から「そう言いながらやってたよ」って言われまして。
少し恥ずかしいような、何というか。
目の前の命を救うのに必死だったと言うか。
先輩方のサポートもあり、10分ほどで心拍再開。
先輩看護師さんの
「Aさん!分かる⁉︎」の問いかけに対し「うん。うん」と頷いているのが僕にも分かりましたが命の瀬戸際に立っていた患者さんが少なくとも自分のおかげで
救うことができたのかなと考えたらそれが嬉しくて、嬉しくて。
「Aさん!Aさん!頑張ったね!おかえり!」
脇目も振らず大声を上げていました。
そのあとAさんは内科の病棟へ転棟。
状態も落ち着いていて安心しました。
帰り際に「またね」と一声かけたところ笑顔で「うん」と頷いていたので、また会いに来ようと思いました。
それから1週間の間「そういえば元気かな?何してるかな?」と思いながら仕事に打ち込んでいました。また会いに行ける日を楽しみに。
そして今日の朝、仕事に来たらそう告げられたのです。
「そっか…ダメだったのか…結局会いに行けなかったな…」と。
詳しく話を聞いたところ、亡くなるまでずっと苦しそうにしていたとのこと。それで色々と考えてしまいました。
自分でもなんとなく分かっていました。
何とか蘇生はできたけど、長くは持たないかもしれないと。
一旦は回復したけど、これからまた苦しい思いをするかもしれないと。
命を救った。
1分1秒でも長く生きられる。
けどそれは、今回のようなしんどい思いをして何とか命を繋いでいる患者さんの辛い時間を延ばすことと同義です。
かといって何もしない訳にはいきません。
目の前の命を救うべく僕らは尽力します。
1日中思い悩んでいましたが
それでも僕らは走り続けます。
それが僕たちの仕事。
看護師という仕事なんです。
何か色々と自分の仕事について改めて感じさせる1週間でした。
よし!切り替えてまた明日から頑張ろう!
拙い記事ですが、読んでいただきありがとうございます。
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