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小学生の娘がメイクをすることを微笑ましく思えないその理由とは。

#20230405-66

2023年4月5日(水)
 ノコ(娘小4)のため、児童相談所にお願いし、定期的に児童心理司さんとの面談を設けている。
 今日はその日。
 ノコの面談中、私もケースワーカーCWさんに近況報告をする。
年度末の異動で我が家の担当者も変わった。ちょっとだけ心細い。ちょっとだけ――というのは、ノコを診てくれる児童心理司、里親側のCW、里子側のCWと毎年のように誰かしら動くので心の準備はしている。異動ばかりは仕方がない。
 春は出会いと別れの季節。あちらこちらで顔ぶれが変わる。
 面談を終えたノコにそのことを伝えると、表情が揺れた。環境の変化に弱いノコにとって、春は試練の連続だ。

 春休みなので面談は午前中にしてもらった。
 お昼を食べに、ノコと2人児相近くのショッピングモールへ向かう。
 桜の花びらがちらちらと散り、地面に積もっている。
 「桜のだね」
 ノコがスキップしながらいう。手をつないだままなので、私の身体も大きく揺れる。
 「桜吹雪だね」
 「うーん、雨じゃなくて雪みたいかなぁ?」
 私が吹雪といったから、たとえが雨から雪に変わったわけではないようだ。
 「吹雪ね。”吹く” ”雪”って書いて”吹雪”。雪がびゃああああって横なぐりに降りつけることね」
 宙に指で漢字を書いてみせながら説明する。
 「あぁ、だから、ママ、桜吹雪っていったんだね」
 やっとつながった。

 ノコは本を読むわりに語彙が乏しい。すごい速さで読むので、おそらく雰囲気を読んでいるだけかもしれない。もしくは入る言葉の量が多過ぎて、定着するいとまがないのだろうか。
 「ママ、ジュース飲みたい。アレで買って」
 「アレって何?」
 ノコがいいたいものはわかっているが、私はあえてわからない振りをする。ノコはもどかしげにいくつか単語を並べ、しまいには足を踏み鳴らすが、なかなかアレに近付かない。
 「アレだってば! お金入れて、ガタンッて出てくるやつ!」
 ようやくその物体のさまを表すことができた。
 「自動販売機。自販機のことかな」
 「そう! それ!」
 そういっているうちに、ショッピングモールに着いたので自販機ではなく、モール内のスーパーで買う。
 「絶対ではないのだけど、だいたい自販機よりスーパーのほうが安いことが多いんだよ。同じものがどこでも同じ値段とは限らないからね」

 フードコートで昼食を終えて(珍しくノコが完食!)帰ろうとホールを横切る。何やらワゴンがずらりと並び、子ども向けの雑貨を販売していた。可愛らしいシールやビーズ、アクセサリー、ノートなどなど。
 ノコが目を輝かせて「ママ、見たい」と手を引っ張る。
 「いってらっしゃい」
 ワゴンの列にノコを放つ。ノコは並ぶ商品にじっくり顔を近付ける。その背が興奮している。
 「ママママ、これほしい!」
 「お家のお財布にいくらあるの? これはそのお金で買えるの?」
 ノコは力強くうなずく。
 「千円ある。これは980円だから20円のお釣り」
 そこまでいえたので、千円札を貸す。
 ノコが買ったのは子ども向けのお化粧セット。アイシャドウ、リップグロス、カラーネイル、練り香水が入っている。ノコはすぐさま袋を破る。いくら会計を済ませたからとはいえ、まだレジ前だ。
 「まだです。お外に出てから」
 じれて足踏みするノコを連れて、モールの外へ出る。
 「はやくやりたい」
 「お家に帰ってからね」
 「やっちゃダメ?」
 「お家に帰ってからね」
 これがバス、電車、またバスに乗る間、延々とノコと私のあいだで繰り返された。

 そして、家到着。
 ノコの希望を聞きながら、目元にピンクのアイシャドウを伸ばし、唇にリップグロスをのせる。ノコが鏡を左右上下に傾けて自分の顔に見つめる。
 「ねぇ、ステキ? おしゃれ? お姉さんっぽい?」
 私は笑ってうなずく。
 本当はノコがメイクをすることを私は好ましく思っていない。きめが細かくツルツルの素肌がもったいないといいたいが、それだけではない。七五三や発表会、お祭りでもないのにノコがメイクすることに嫌悪感がある。微笑ましく思えないのだ。
 私が子ども時代にメイクをできなかったことへの妬ましさからではない(そもそもメイクに興味がなかった)。近いのは、まだまだ手を焼くことが多いのに、外面だけ大人を装うことへの腹立たしさか。「もっと自分のことを自分でできるようになってからにしろ!」といいたくなる。

 でも、それはあくまでも私個人の価値観。
 ノコのおしゃれ心を閉じ込めてはならない
 肌荒れに気を配り、学校のない日はノコの好きにさせよう。好きにさせたい。
 その気持ちはホントのホント。

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