娘の「理想の結婚相手はパパ」!
#20230528-119
2023年5月28日(日)
習い事からの帰り道。
ノコ(娘小4)と自転車で走る。最近、ノコは前を走りたがる。危ないので私が前を走りたいが、学校のルールではもう学区内を1人で自転車に乗れる学年だ。
一緒に走れるときに練習しなくていつできる。
そう自分にいい聞かせて、ハラハラしながらノコの後ろをついて走る。
ノコが大声でのんきに話しかけてくる。
「ママァ、私ねぇ、結婚するならもう1回生まれたパパがいい」
最近はパパとよくいい合いをし、「パパなんて嫌い」と自分の部屋に閉じこもるくせにと笑いたくなる。
それにしても「もう1回生まれた」とはどういう意味だ? 今のパパはいらない? それとも輪廻転生か?
「今のパパじゃないんだ?」
「だって、今のパパはもうママと結婚してるじゃん。パパがもう1回生まれたら、そのパパが私と結婚すればいいじゃん。っていうか、パパみたいな人っていうこと!」
あらま。
喧嘩していてもパパがいいんだ。
「パパみたいってどういう人のこと?」
「えっとね、お酒飲まない人」
確かにむーくん(夫)はお酒を飲まない。でも、ノコはおいしそうにお酒を飲む大人も酔っ払いも見たことがほぼないはずだ。夜、ごくたまに駅前で酔っ払いを目にしたことがあるくらいか。
「それからね、タバコ吸わない人」
私の子ども時代と違い、今は飲食店に入っても大抵分煙か禁煙だし、家族に喫煙者がいなければ、タバコは縁のない存在だ。
「あとは、掃除ができて、ご飯が作れる人がいい」
「パパ、お料理は冷凍餃子を焼くか、チキンラーメンくらいだけど?」
「うん、そこがパパは惜しい。まぁ作れなくても私が作ればいいか」
一応、ともに家事をする感覚はあるようだ。
「それからねぇ、真面目にお仕事をする人」
意外とリアリスト!
「それと自転車に乗る人ね」
これは私たち夫婦がロードレーサー乗りだからだろうか。日頃習い事へ通うのに自転車を使うと散々文句をいうくせにおもしろい。
「あとねあとね、やさしくてぇ、イケメンでないとね」
お酒とタバコをたしなまず、家事ができ、仕事に真摯に取り組み、自転車乗りでやさしくイケメン。
「パパじゃーん!」
私が笑っていうと、前方を走るノコが叫ぶ。
「でしょ!」
イケメンという点は、「おまえたちの目がおかしい」とむーくんは苦笑するだろう。
「じゃあ、ノコさんもそういう人が結婚したいな、と思う人になれるといいね。片思いじゃあ、結婚はできないからね」
そんなに怒りん坊で、ヤダヤダばっかりいっていると難しいぞ、と思うが、それはいわない。
「ママ、パパに結婚してくださいっていわれてよかったね」
「そうだね、最高だね。こんな可愛い子もいるしね」
ノコが勢いよく振り返ったので、ひやりとする。
「前、向いて!」
いつになくご機嫌なノコだが、これも帰宅すれば霧と散る。
なんといっても、先延ばしし続けた宿題が待っているのだ。
すぐにむーくんも仕事から帰ってくる。むーくんは私のように悠長に――いや、心のなかでは葛藤しているのだが!――待たず、「さっさと終わらせなきゃテレビも見られねぇぞ」とノコをせっつく。
理想の結婚相手はあっという間にいってほしくないことをやかましくいう大嫌いな人となり、ノコが「やりたくない」「わかんない」と叫ぶ姿が目に浮かぶ。
機嫌がいいときだけであっても「パパがいい」といっているあいだは、なんやかんやあっても我が家は平和なのだろうか。
車の少ない住宅街の裏道を走る。あちこちの人家の塀の向こうからアジサイがのぞいている。
それらが青、水色、紫、濃いピンクと色付いてきた。
もうすぐ6月。
ノコと暮らして満4年が迫る。